愛知県総合教育センター研究紀要 第92集

 県立学校総合的な学習の時間に関する研究

はじめに
 総合的な学習の時間については,これからの教育の在り方として「ゆとりの中で[生きる力]をはぐくむ」との方向性を示した平成8年7月の中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(第一次答申)において,創設が提言された。この答申では,「[生きる力]が全人的な力であるということを踏まえると,横断的・総合的な指導を一層推進し得るような新たな手だてを講じて,豊かに学習活動を展開していくことが極めて有効であると考えられる」とされ,「一定のまとまった時間(総合的な学習の時間)を設けて横断的・総合的な指導を行うこと」が提言された。当センターにおいても,総合的な学習の時間の研究を平成11年度より開始し,今年度まとめの年を迎える。

1 研究の目的
 新教育課程において新設される総合的な学習の時間の円滑な導入に向け,指導方法及び運営上の諸問題について研究を行い,各学校の実践活動の支援を行う。

2 研究の方法
 総合的な学習の時間の事例及び研究資料を収集し,これらに基づき指導方法・運営方法について整理・分析を行う。さらに,研究協力校と連携し,総合的な学習の時間の実施に向けた学校・学年経営の在り方を明らかにする。

3 研究の内容
 (1) 総合的な学習の時間の指導方法・運営方法についての整理・分析を行う。
 (2) 総合的な学習の時間の実施に向けた学校・学年経営の在り方,諸条件の整備のための具体的手順を明らかにする。
 (3) 総合的な学習の時間の実践上の課題について,具体的な解決方法や支援の在り方について研究する。
 (4) 研究の成果をまとめ,資料集を作成する。
4 実践事例
 (1) 愛知県立半田東高等学校の取組
  ア 近隣大学のコンピュータ施設の利用や県内大学教授による模擬講義等の高大連携を進め,地元企業主による講演会・職場訪問等の地域連携を生かした学習活動を行う。
  イ 第1学年では自己の適性と進路について目を向け,職業調べや学部・学科調べを実施し,調査・研究方法を学ぶ。第2学年では選択講座制を取り入れ,自己の進路にかかわりの深い講座を受講し進路意識を高める。第3学年では第2学年での学習を深めて研究項目を自ら定め,個人研究を行う。
  ウ 学習活動形式は班学習から個人研究へ,発表形式もグループ発表から小論文による個人発表へと,3か年のプログラムを系統的に組み立て,学習内容を深化・発展させる。
 (2) 愛知県立豊田東高等学校の取組
 各学年テーマのもとでの学びにより,一人の人間としての自己理解から複雑な人間関係からなる国際社会や地球環境の考察などに発展させることのできる包括的なテーマとして,3年間の全体テーマを「ひと」と設定し,学年テーマは,第1学年「世界」,第2学年「いのち」,第3学年「わたし」と設定する。
 (3) 愛知県立名古屋盲学校の取組
  ア 小学部,中学部,高等部普通科では基礎学力の充実を図りながら,障害を改善克服し,社会的自立に向けて人間性豊かな生徒を育成する。
  イ 高等部の本科保健理療科,専攻科理療科,専攻科保健理療科では,理療の基礎的な知識と技術の習得をはじめ,施術者としての能力と態度を育成する。
おわりに
 「高校生のための『総合的な学習の時間』への提案」という冊子(各県立学校へ近日中に配布予定)に研究成果をまとめるとともに,様々な学び方のスキルも提案する。生徒が総合的な学習の時間を通して,自ら課題を見付け,自ら学び自ら考え,問題を解決する力を身に付け,主体的,創造的な態度を育み,自己の在り方生き方について考えることができるようになることを願う。