愛知県総合教育センター研究紀要 第94集

 教科以外の教育活動の在り方と評価に関する研究
       −総合的な学習の時間や特別活動の評価はどうあるべきか−(中間報告)

はじめに
 今日,「学力低下」への危惧などから学校行事等の特別活動の時間数が必要以上に削減されたり,総合的な学習の時間が教科の学習の時間に転用されたりする実態が報告されている。またこれらの教育活動を具体的な目標や内容を明確にしないまま活動を実施し必要な力が児童生徒に身に付いたかどうかの検証・評価が十分行われていない実態も指摘されている。児童生徒一人一人に「確かな学力」や「豊かな人間性」をはぐくむとともに特色ある学校づくりに欠かせないこれら教育活動の指導の在り方や評価の仕方を見直し改善していかなければならない。

1 研究の目的
 本研究では,「生きる力」の育成や特色ある学校づくりを進めるに当たって重要な領域である総合的な学習の時間や特別活動等の教科以外の教育活動について,その指導の在り方及び望ましい評価について研究を行う。また,それらの教育活動に対する自己点検・自己評価,外部評価の在り方についての研究も行う。

2 研究の方法と内容
 所員による理論的研究を進めるとともに,研究協力校に対して以下の2点を考慮した実践を依頼し,その結果を分析することで取組の有効性を検証する。
 (1)「目標に準拠した指導と評価」の考え方の有効性
  「目標に準拠した指導と評価」の手法を取り入れることにより,児童生徒一人一人に対する指導の充実が可能となるのではないか。また,学校の指導計画の適切性を評価できるのではないか。あわせて,この考え方に基づく教育活動が指導と評価のサイクルPLAN→DO→CHECK→ACTIONとして機能するのではないか。
 (2) 保護者等による評価を導入することの有効性
  学校が児童生徒の学習状況を保護者や地域社会に公開し,情報提供することを通じて,教育活動が評価され,それに応じて指導の改善が進むのではないか。

3 研究協力校による具体的実践内容
 【実践1】 「評価シート」を活用した総合的な学習の時間の指導と評価

 【実践2】 総合的な学習の時間のカリキュラムの編成と体系的な評価

 【実践3】 構成的グループ・エンカウンターを取り入れた学級活動と評価

 【実践4】 教師,生徒,保護者へのアンケートを活用した学校行事の評価と指導

 【実践5】 高等学校における総合的な学習の時間の在り方と評価

 【実践6】 特別活動における観点別評価とポートフォリオの開発

 【実践7】 聾学校の特色を生かした総合的な学習の時間の実践と評価

 【実践8】 養護学校における総合的な学習の時間の指導と望ましい評価 

4 研究の成果
 (1) 目標・ねらいを明確にした指導を行い,区切りの段階でその目標・ねらいに準拠した評価活動を実施したことで,指導が改善された。
 (2) 指導の過程における適切できめ細かな評価が効果的であること,また,児童生徒の自己評価は教師自身の指導の在り方を評価する上での重要な資料となることが確認された。
 (3) 保護者や地域の人々からの評価を受けることは,指導を改善していく上で重要であることが確認された。

おわりに
 現在,各学校では教育活動の自己点検・自己評価(学校評価)の進め方が課題となっている。本研究においても,総合的な学習の時間や特別活動の指導を「学校組織として」どのような形で自己点検・自己評価していくのかといった視点での研究を一層進めていきたい。