愛知県総合教育センター研究紀要 第97


実験・観察融合型デジタル教材活用共同研究

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 独立行政法人科学技術振興機構(JST)が開発した「理科ねっとわーく」などのデジタル教材を活用した実証授業を小・中・高等学校で実施し,その効果的,効率的な活用の在り方を研究した。その結果,デジタル教材は,学習に対する児童生徒の興味・関心を高め,内容の理解を深めることができた。デジタル教材の活用に当たっては,授業での活用の目的と意図を明確にし,展開のどの場面でどの程度用いることが最善かを熟考することが大切である。このため,個々の教員による多くの実践研究を積み重ねることが必要となる。

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デジタル教材  デジタルコンテンツ  観察・実験  小学校理科

中学校理科  高等学校理科  実証授業  理科ねっとわーく


研究会委員

小学校部会





中学校部会





高等学校部会









連携先

  
       

一宮市立西成小学校教諭
東郷町立諸輪小学校教諭
半田市立雁宿小学校教諭
安城市立丈山小学校教諭
豊田市立東山小学校教諭
名古屋市立桃山小学校教諭
扶桑町立扶桑北中学校教諭
大治町立大治中学校教諭
常滑市立南陵中学校教諭
岡崎市立竜海中学校教諭
蒲郡市立蒲郡中学校教諭
名古屋市立はとり中学校教諭
県立天白高等学校教諭
県立津島北高等学校教諭
県立豊田西高等学校教諭
愛知教育大学附属高等学校教諭
東海学園高等学校教諭
総合教育センター経営研究室長
総合教育センター研究指導主事
総合教育センター研究指導主事
総合教育センター研究指導主事
総合教育センター研究指導主事
愛知教育大学教授

加藤 英恵
江口  拓
間瀬 彰宏
岩本 聡子
鈴木 宏記
早川 瑠美
松浦 明伸
杉村 定則
吉峯 宏明
寺澤 益実
小田 泰史
立松  玲
古川 敦朗
柳生 真澄
米津 利仁
足立  敏
小林 夕也
横田 佳昭
稲吉 宣夫
村越 英昭
正木 克典
櫛田 敏宏(主務者)
吉田  淳
はじめに

 児童生徒は,身の回りの体験や経験を土台に,想像力や推理力を駆使し,自然の事物・現象をモデル化したり,イメージ化を図ったりしながら科学的な知識や概念を獲得していく。しかし,近年の生活体験の不足により,想像力や推理力が低下し,このモデル化やイメージ化がうまくいっていないという問題がある。そこで,デジタル教材を授業に用いることにより,児童生徒の想像力や推理力が補われ,モデル化やイメージ化が円滑に進められるのではないかと考えた。
  具体的には,独立行政法人科学技術振興機構(以下「JST」という)が開発した「理科ねっとわーく」(表1)のデジタル教材などを活用した学習指導を実施し,その効果的,効率的な活用の在り方を研究したので報告する。
表1「理科ねっとわーく」の特徴

JST「理科ねっとわーく」の特徴
小・中・高等学校の現場の教員からの要望・意見などを取り入れ,次の4点に留意したデジタル教材を開発して提供している。
・普通教室や理科室などにおける一斉授業を想定して制作されている。
・授業の進め方を例示したティーチャーズガイドやワークシートが常備されている。
・現在,4万点以上の豊富な素材を含む102タイトルを提供し,これらは自由に編集加工でき授業での幅広い活用が可能になっている。
・科学への関心を高めるため,身近な科学から最先端の研究成果やノーベル賞受賞研究などの素材も取り入れられている。

研究の目的

 理科における児童生徒の興味・関心や知的探究心等を育成するために,デジタル教材と,観察・実験等の体験的活動とを融合した効果的かつ効率的な学習指導の在り方を明らかにする。
 また,小・中・高等学校の各校種における児童生徒の実態や学習内容に適したデジタル教材の在り方について研究し,「理科ねっとわーく」が配信するデジタル教材の完成度を高めるための基礎的資料を提供する。

研究の方法

  (1) 研究組織
 教育研究調査事業「教科指導の充実に関する研究(理科C)」において,校種ごとに部会を設け,小・中・高等学校(研究協力委員小学校部会6名,中学校部会6名,高等学校部会5名)の相互の連携を図りながら研究を推進する。また,愛知教育大学と綿密に連携して会の運営及び研究推進に当たる。
  (2) 研究方法
 研究会を年間5回程度実施し,ねらいの設定及び達成に向けた意見・情報交換等を行った。研究協力委員の所属校でデジタル教材を活用した実証授業を前期(5,6,7月)と後期(101112)に各1回ずつ行った。実証授業には,センター所員,大学教授等が立ち会い,デジタル教材活用の在り方の分析・検証等を授業者と共に行った。また,実証授業ではビデオ撮影や事前・事後アンケート等行い,研究会における検討資料とした。
 第5回の研究会において,各部会でデジタル教材の必要性,効果及び作成者(JST)への要望などをまとめた。

研究の内容

 (1) デジタル教材利用の基本姿勢
 デジタル教材を活用していく中での問題点の一つに「理念・理論不在の中での活用」がある。児童生徒にとってデジタル教材は,物珍しさや視覚効果の派手さゆえ,表面的な面白さに引き付けられ,分かったつもりになりやすいという傾向がある。また教師側も,デジタル教材を使わなければならないと思うあまり,手段が目的に転化したり,安易な教材選択により,深い教材研究の放棄になったりすることもある。いずれも,学習指導においてデジタル教材をどう使っていくのかという基本姿勢が欠落することから生じる問題点である。

  授業を構想する際の効果的なデジタル教材活用をするために必要なことをまとめると図1のようになる。教師はデジタル教材自体を,分かりやすく質の高いものにしていく努力も必要であるが,活用に際してはっきりとした意図をもち,効果的に提示しようとする工夫が求められる。さらに,コンテンツの作成者と授業実施者が密接に連携し,問題点を改善点へと変えていく努力が不可欠である。

図1 効果的なデジタル教材活用をするには
  研究会においても,デジタル教材の活用法を考えていくことで授業改善を目指す,という姿勢を保持し,デジタル教材の使用意図を明確にした上で,研究協力委員には学習指導案を作成することとした。
 (2) 実証授業の計画
 実証授業(資料1参照)に先立って,平成19年5月8日と5月13日に,東海学園高等学校 小林夕也教諭による,デジタル教材を用いたモデル授業が実施された。実証授業は,小学校部会12回,中学校部会12回,高等学校部会が8回,合計32回が実施された。なお,小学校部会1回,中学校部会2回,高等学校部会1回の合計4回の実証授業を公開授業とし,その地区の多くの教員の参加を得て,研究協議を実施した。
 なお,実証授業では,デジタル教材の内容,活用法により下記のように分類した(資料1参照)。

 T 内容による分類
 @ 学校では、実験・観察できない教材 A 実験・観察で確認しにくい教材 B 実験・観察の方法を示す教材
 U 活用法(展開位置)による分類
 @ 授業の導入時に活用 A 授業の展開中に活用 B 授業のまとめとして活用

 (3) 事前・事後アンケートの実施及び結果
 生徒による授業評価として,事前・事後アンケートを行った(資料2:前期後期参照)。その特徴的な質問内容を取り上げ考察したい。
  ア 事前アンケートから
 母集団に対して,理科に対する好悪について調査した(グラフ1)。

グラフ1 問 「理科は好きですか」
         前 期                後 期

 高等学校は,「理科が好きですか」ではなく,「化学Uが好きですか」のように,受けている授業科目として聞いた。また,高等学校の4校中,3校は理科を選択している生徒が対象である。前・後期とも,「好き」という回答は,小学校が高く,中学,高等学校に進むに連れて低下している。昨今の各種調査と比較すれば,今回対象となった母集団の理科好き度は格段に高い。
 次にデジタル教材に関する期待度について調査した(グラフ2)。

 グラフ2 問 「次の単元では,デジタル教材(コンピュータの映像)を授業の一部に使います。デジタル教材を用いた授業は,楽しみですか」
         前 期                後 期

 全校種とも9割以上の児童生徒が期待していることが分かる。後期は,前期に比べ,デジタル教材を活用した授業を多く受けた後でのアンケートであったので,期待度の変化が見られるのではないかという予想もあったが,合計で0.5ポイントの上昇しかなく,各校種においてもあまり大きな変化はなかった。
 これらの事前アンケートから分かることは,今回の実践の対象となる児童生徒は,理科の学習に対して,興味・関心が高く,デジタル教材に対する期待度も高いことが分かった。
  イ 事後アンケートから
 今回の授業実践において,デジタル教材を活用したことについて以下の質問をした(グラフ3から5)。

 グラフ3 問 「デジタル教材を使うことによって,興味や関心は高まりましたか」
         前 期                後 期

 グラフ4 問 「デジタル教材を使うことによって,授業の内容が分かるようになりましたか」
         前 期                後 期

 グラフ5 問 「今後もデジタル教材を用いた授業を行ってほしいですか」
         前 期                    後 期

 前・後期において各校種の興味・関心の高まり,授業の理解度についての肯定的な回答は,増加傾向にあるが,今後のデジタル教材活用への期待についての回答は,ほぼ前期と同様な傾向となった。どの問いも小学校の肯定的な回答が高く,続いて中学校,高等学校の順であった。
 後期の合計で,興味・関心の高まりに関して89%の児童生徒が,授業の理解度に関して94%の児童生徒が肯定的な回答をしたことから,デジタル教材を活用することにより,授業への興味・関心を高めるとともに,理解度を高めることができたと考えられる。同様に,今後のデジタル教材活用への期待に関して前期より1ポイント減少しているものの肯定的な回答が91%と高水準を維持し,今後もデジタル教材を授業で活用してほしいという願いをもつ児童生徒がほとんどであることが分かる。これらの結果は,独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)が平成19年3月に出した「ICT活用と学力向上に関する実証授業」1)の結果とも一致する。
 発達段階によりアンケート回答への姿勢などの違いがあるかもしれないが,高等学校はいずれの設問に関しても低いが,いずれも8割以上の肯定的な回答であった。今後,高等学校におけるデジタル教材活用の手法など更に検討する必要があると考えられる。
 (4) 研究協議会のまとめ
  ア 小学校部会のまとめ
   () 小学校現場でデジタル教材の必要性と効果
 小学校において,実際の実験・観察を通して現象の理解を行うことが重要であるとの意見が多かった。具体的には,月の満ち欠けや地層の形作られる様子などは,小学校レベルであっても教室内の簡単な観察だけでは実現が困難な学習内容が多く存在する。このような時は,デジタル教材を活用することは,授業を活性化させるうえで有効であることが確認された。
 また,現在の児童にとっては,普段の生活の中で映像情報に触れる機会が多く存在し,映像を受け入れ,それを補って理解を進めてゆくことは特に違和感がないという意見が大勢をしめた。デジタル教材を特別なものと考えるのではなく,普段の授業の場でのツールとして当たり前に存在させることが望まれているという意見が多かった。
 反面こういった映像情報を与えることでじっくり仲間といっしょになって考えよう,法則を見付けようとする姿勢より短絡的に解答を求めようとする児童もいた。また,ICTそのものへの興味や操作方法といった本来の学習内容以外のところに意識がいってしまう児童もいることなどが問題点として挙げられた。
 しかし,こうした問題もデジタル化された教材の活用が常時化されることで解消されると考える。実験・観察とデジタル教材を融合することで児童にとっては,学習内容のモデル化に役立ち,ひいては理科に対する興味の増加とともに理解度を向上させる効果もみられた。特に,習熟度が低い児童にとっては,デジタル化された教材の提供により,実験・観察や結果の考察に関する取組が改善された様子も観察でき,学力の底上げに効果が感じられた。
   試行的に使用してみたところ,授業に対する興味や関心を高める効果がみられた。また,継続的にデジタル教材を活用することで,学習した内容をまとめたり,見通しを立てたりする場面で学習の助けになることが実証された。
 デジタル教材を活用した時,指導する教師側から見た効果及び活用上の留意点は以下の通りである。
・学習に対する興味・関心を高める。
・学習内容のポイントを絞ることができる(動画中にポイントが複数ある場合,特に顕著であった)。
・現象の観察から気付きに至る過程がスムーズに展開できる。
・板書やワークシートとデジタル教材を併用することでモデル化やイメージ化が容易になり,知識がより定着する。
   () デジタル教材に対して今後に望まれること
  小学生という発達段階や学習内容から考えた時,デジタル教材が複雑で幾つもの学習内容が混在しているようなものや,これとは逆に,現象を極度に整理したコンピュータグラフィックなどは児童にとって理解が難しく,生徒の気付きを消去させてしまうため,授業での活用に困難な場面がみられた。
 また,指導する側の教師が全教科を担任するという小学生の特性を踏まえると,単純で分かりやすく,操作感に統一性があるデジタル教材が,学習に集中でき,その効果も期待できると考える。
 特に望まれる点は以下のとおりである。
・各デジタル教材の学習内容を明確にする。内容を複数入れる際は,順序に十分配慮する。
・シミュレーションと実際の動画を重ねたデジタル教材の充実が求められる。
・低学年には,身近で単純なデジタル教材として使えるものがよい。
・実験や観察を行う上での安全指導に重点を置いたものがあってもよい。
 今後デジタル教材として充実してほしい具体的な例は以下のとおりである。
・気象や天体などの定点観察した結果をまとめたもの
・母体内での胎児の成長の動画(3Dエコーの映像)
・うまくできない実験や実験の標準的な操作法を補うもの
  イ 中学校部会のまとめ
   () 学校におけるデジタル教材の必要性と効果
  デジタル教材を問題解決に至るプロセスで生徒に適用することで,興味・関心をもたせたり,学習の目的を整理させたりするといった活用,あるいは思考のイメージ化・モデル化に適しているということから必要性は高いと考えられる。
 また,限られた時間の中で,教科書に紹介されている実験・観察などを一通り行うことを求められている。そのため,生徒自身が必ず行う実験・観察を補足したりより深めたりするデジタル教材は,学習を深める効果とともに学習時間の効率的な活用にも資するという点からも必要性を感ずることが多かった。
 特別な環境でないと見られない現象を観察したり,具体的な例を基にしてシミュレーションを行ったりすることは,擬似的な成功体験を与えることになり,生徒が授業に参加する機会が増え,学習意欲の増加につながった。併せて,観察を通して問題解決の一部を擬似的に体験することもできた。
   実験・観察に比べ,見やすい映像が繰り返し提供されることで,生徒は学習に対する見通しをもちやすくなり,学習意欲の高揚につながった。
 また,授業を効率的に進められるため,時間短縮が顕著に図られたという点も大きなメリットであった。
   () デジタル教材に対して望まれること
   デジタル教材を活用した授業を試行することは,生徒指導,進路指導などの様々な業務を抱えているため,事前準備などに割く時間が限られ,担当教員にとって負担が大きい。JSTのデジタル教材群は内容として優れたものが多く含まれているが,常時,継続的に活用するという視点からは整理が十分ではなく早急に改良が求められる。
 その他,特に望まれる点は以下のとおりである。
・問題提示と結果がまとめやすいものがほしい。
・一連の流れとしてセットされたものではなく,素材として個々に活用できる方がよい。
・詳細なナビゲーションは必ずしも必要ない。
・ビデオ的な要素や動く図説的なものがあればよい。
・素材の選択が容易になるような工夫がほしい。
・教科書との対応を明確にしたインデックスの準備と,発展に当たる部分の実験が望まれる。
・各素材がどんな効果が期待できるのかを含めレーティングされていることが望ましい。
・カラーのものや細かい写真を含むワークシートは中学校の環境に合わない。
・指導時間が短くなるような素材が求められる。
・細かいものを大きく見られるような素材がほしい。
・教科書にない発展的な内容を含む映像がほしい。
・複雑な前提条件などがない簡単な作りがよい。
  ウ 高等学校部会のまとめ
   ()高等学校におけるデジタル教材の必要性とその効果
高等学校については,各教科書に学習すべき項目が大変多く含まれ,実験も多種類にわたることから,十分な実験・観察に時間をとらず,授業を進めていくことが多い。そんな中でデジタル化された教材を授業に活用すると,生徒の学習意欲が高まるだけでなく,実験や観察を加えても従来と同じ授業時間で済み,さらに,学習内容の習得が早まるなど効果は絶大である。
 授業でのデジタル教材の活用が始まって数年が経過し,生徒の意欲の高まりがあるという現象を享受することなく,本当に必要な素材は何かを精査する時期に入ってきていると考える。また,デジタル教材の中には科学的に高いレベルの内容を扱ったものも多くあり,教師自身の教材研究の資料としてもその活用の幅を広げることができるのではないかと思う。 今回の試行において認められた顕著な効果は以下のとおりである。
・従来実施できなかった実験を擬似的に体験させることができた(学習内容の充実が図られた)。
・実験や観察を追加しても従来とほぼ同じ時間数で指導内容を消化することができた(指導時間の短縮)。・発展的,先端的な内容のデジタル教材を見せることで,内容を深め,興味を高めることができた。
   () デジタル教材に対して望まれること
   実際の活用について,教師側の指導方針とデジタル教材の流れが一致しないことがほとんどで,この調整に困惑する例が多かった。高校の場合,各科目の専門外の教師が授業に当たることが多いため,教材の設計に当たっては簡素で教材としての活用が容易になるような工夫を求める声が強かった。また,近年様々なデジタル教材の活用を伴う授業実践が報告されており,デジタルのよさ,特性を生かした授業展開はどうあるべきか研究を進める時期となってきたのではないかという指摘もあった。
 その他,特に望まれる点は以下のとおりである。
・カラーのものや細かい写真を含むワークシートは印刷が困難で高校の環境に合わない。
・コンピュータやプロジェクタなど利用の環境が学校によって異なっている。整備を一層進めることが必要である。
 また,今後充実させるとよい教材として以下のような要望が出された。
・ストーリー性のない教材集的なもの
・科学的な現象のうち,企業などでの実際に活用している事例を集めたデジタル教材
・大学入試でよく問われる実験を動画にしたデジタル教材

研究のまとめと今後の課題

 実践及び協議の中から分かったデジタル教材の授業への効果的な活用には,活用意図の明確化,活用方法の習得,利用方法の工夫の3点に留意することが大切である。
・デジタル教材は,使う場面によってその効果が異なるので,児童生徒の状況や指導意図,学習内容に合った活用を図る。
・年間指導計画のどの場面でどのように活用するのかを位置付けることが重要である(活用意図の明確化)。
・授業時のコンピュータ操作,映像の提示法などのスキルアップが重要である(活用方法の習得)。
・教員一人一人によって,活用の仕方や使い方は異なってくるが,児童生徒にとって効果的,効率的な活用モデルを確立する必要がある(活用方法の工夫)。
 JSTの「理科ねっとわーく」への大きな要望としては,コンテンツには良いものも多いが,授業意図に合うように活用しようとすると事前の準備に手間がかかる。もう少し手軽に扱える素材集的な編集にした方がよいということを提言したい。
 本研究の実践として,小・中・高等学校17校でデジタル教材を活用した授業実践を行った。アンケート結果からは,多くの児童生徒がデジタル教材に対して,大きな期待をもっていることが分かった。それは,実証授業においてデジタル教材の動画等を食い入るように見つめる児童・生徒たちの様子からも分かる。コンピュータに関する機器の整備が一定程度進んだ現在,デジタル教材を効果的かつ効率的に活用することは,理科教育の充実に大変有用である。

参考文献

1) 独立行政法人メディア教育開発センター 文部科学省委託事業 「教育の情報化に資する研究(ICTを活用した指導の効果の調査)報告書」平成19年3月

資料1 実証授業一覧
資料2 実践校アンケート一覧(前期後期

実践編
32本の実証授業のうち、小学校2本、中学校2本、高等学校1本、計5本を紹介する。
小学校
実践1 小学校6年 「大地のつくりと変化」 授業日 平成191126

実践2 小学校4年 「もののあたたまり方を調べよう」 授業日 平成19124


中学校

実践3 中学校2年 「感覚と運動のしくみ」 授業日 平成19年6月21

実践4 中学校3年 「地球と宇宙 四季の星座と季節の変化」 授業日 平成19127


高等学校

実践5 高等学校3年 化学U「課題研究」 授業日 平成19626