二点目は
,学習の成立とか勉強の目的が変わってきたことである。中学校よりも高等学校,さらに大学をと親は子供に期待をした。そういう形での学習の目的,動機があったが,今はそうでもなくなった。96%が高校に進む時代,学習の目的は少しずつ変わってきた。
三点目は,教育の質的充実である。現在は学習をしようと思えばだれでも小・中・高等学校へ行けるように整備が行われ,教育の仕組みとしては,行き届いた時代になってきた。今後は,子供たちの様子をきめ細かく見ていくことも,質的な充実と考えることができる。
四点目は学校と社会の在り方。今まで以上に,学校の社会に対する説明責任,公開性ということが問われてきている。
○教育指導における評価の意義と役割
評価の原点は学習指導の一環としての評価活動である。また,評価を通じて子供が勉強が分かる,学習が楽しくなる,学習意欲が高まるということが最終的な出口になる。評価というと,成績をつけるというイメージがあるが,子供が勉強が分かるようになるための評価でなくてはいけない。
先生方にとっては,指導の力量が高まったり授業改善につながったりする評価ということである。
学校にとっては,自己点検・自己評価,あるいは教科経営などが課題になってくる。
○指導要録の改善とこれからの評価の在り方
・評価観の変遷
・指導要録における評価の在り方の変遷
・今回の改訂のポイント
・目標に準拠した評価の意義
○目標に準拠した評価の進め方
・評価活動の流れ
大事なことは,基礎・基本である。この単元はこれが大事だということを見極める作業が非常に重要である。それが明らかになって,評価の計画が立ってくる。手続きとして基礎・基本分析表のようなものがあり,そして指導計画がつくられ,指導の重点項目が示される,それに対応した形で評価場面,評価規準,評価方法がセットされるということが大事だと思う。
・評価計画の作成
指導計画と評価計画を連続した一体化したものとしてつくって,それを更新していく。学習指導要領,解説,教科書,観点の趣旨,評価規準の参考資料,国立教育政策研究所や総合教育センターが作成したものもある。そういうものを参考にしながら,評価規準をつくっていただくことになる。
・評価規準の設定と運用
評価規準は学習指導要領や解説,教科書から演繹的に参考資料というかたちでつくられるものだが,同時に,子供の学習状況を見極めながら,事例を帰納的につくっていくという部分も必要な気がする。子供たちの学習状況の典型的な結果をストックし,先生方で協議しながら,一つのモデルにしていくと評価規準が生かされてくる。
それから学習状況が十分でない児童生徒への対応については,まだ研究が不十分な状況で,この部分をどういう形で予め評価指導計画に組み込んでいくかが今後の課題だろう。
・評価場面,評価方法の工夫改善
○観点別学習状況の評価の観点ごとの総括
○観点別学習状況の評価の評定への総括
○目標に準拠した評価の改善課題
評価の客観性・信頼性の確保については以下のようなことが考えられる。
・指導と評価の計画が一体的に作成されること
・評価規準と評価方法がマッチしていること
・評価する者とされる者が互いに納得し理解して評価が行われること
・指導計画,評価計画の見直しと改善が常になされていること
・観点別学習状況の評価の趣旨が生かされていること
・計画の公開性が確保されていること
・学校として,組織体としての評価の工夫改善が行われていること
○おわりに
3 教材展示
・発声発語訓練システム
・ハンディキャップ支援装置
・点字ディスプレイ及び点字プリンタ
・過去の教育研究論文(最優秀賞・優秀賞)
4 施設開放
・図書資料室
・ソフトウェアライブラリ
・特殊教育棟(検査室,行動室,実習室)
5 研究発表・研究協議
○新設教科「情報」における指導の在り方に関する研究
【概要】県立学校における普通教科「情報」の指導内容,指導方法及び指導に必要な条件等について研究し,教科「情報」が各学校に導入されるための参考とすることを目的としている。「実習をともなう授業の効果的な展開方法」「各学校の現状を踏まえた実習室の管理方法」「観点別評価を意識した具体的な評価の方法」についてセンターより発表があり,その後協議を行った。
○評価規準,評価方法等の開発に関する研究
【概要】新学習指導要領が示す目標に照らしてその実現状況を見る「目標に準拠した評価」(いわゆる「絶対評価」)の実践的な研究を進め,各中学校及び小学校において評価規準・評価方法等の参考となるものを示すことを目的としている。A〜Cの三分科会に分かれ,センターからの基調提案,各教科からの提案,研究協力委員からの提案を受け協議を行った。なお,C分科会については,エルネットによるCS配信を行った。
○小学校における英語学習に関する研究
【概要】小学校では,学習指導要領において,三年生から総合的な学習の時間が新設されており,この学習活動の一つとして,国際理解教育に関連する学習の中で,特に,英語活動を導入する学校が増えることが予想される。このような背景の下に,この研究では,英語活動を導入するに当たってどのような点に配慮すれば,効果的かつ発展的な学習になるかを探ることを目的としている。センターからの基調提案の後,小学校三校から実践事例が発表され,協議を行った。
○高等学校地理歴史科・公民科における評価の在り方に関する研究
【概要】「地理歴史科・公民(社会科)は暗記物である」という認識を改め,国際的に通用する地理歴史科・公民科の学力の育成に適した評価方法の在り方,及び,それに適した授業内容,授業方法の在り方について研究することを目的としている。センターからの研究の概要説明とアンケート調査結果の報告の後,研究協力委員六人から「世界史」「日本史」「地理」「政治・経済」「倫理」の各実践事例とポートフォリオを使った事例の発表があり,協議を行った。
○予防・開発的教育相談の在り方に関する研究
【概要】構成的グループエンカウンター等の実践を試み,その実践例を収集するとともに留意点をまとめ,各校種に適したエクササイズを開発する。また,将来的には当総合教育センターで実践研究したメンバーによって普及を図り,全教師がこの手法を身に付け実践できるようになることをねらいとしている。センターからの基調提案の後,協力委員より三つの実践発表があり,協議を行った。
○養護学校等が行う特殊教育相談の支援に関する研究
【概要】県内の養護学校との連携を図り,総合教育センター所員が地域において教育相談を行うことによって,地域における教育相談のニーズを把握し,学校における教育相談機能の充実を図ることをねらいとしている。基調提案の後,研究協力校より研究実践概要と二つの実践事例の発表があり,協議を行った。
6 おわりに
今年度より小・中学校に導入された「目標に準拠した評価」(いわゆる「絶対評価」)については,各学校において,その趣旨を生かすべく,真剣に取り組まれている。しかし,初年度ということもあり,多くの教師が評価を進めるに当たっての数多くの疑問点や課題を抱えながら取り組んでいるのが現実である。工藤氏の御講演は,そのような課題への貴重な助言となったのではないだろうか。また,午後の各研究発表部会においては,多くの先生方より御助言,御意見をいただいた。今後の研究に生かしていきたい。