第45回愛知県総合教育センター研究発表会

平成17年11月25日(金)

1 はじめに

第45回愛知県総合教育センター研究発表会を愛知県教育委員会青木教育次長、寺田学習教育部長他、多数の来賓の御臨席のもと、県内外から500人を超える参加者を迎え、開催した。
午前は、開会行事に続き、「心の教育の基礎基本」と題して、お茶の水女子大学名誉教授の森 隆夫先生による講演を、午後は、研究テーマごとに6部会に分かれて研究発表・研究協議を行った。また、休憩時間中に大学院派遣研修修士論文の内容紹介ビデオの上映を、図書資料室においては、終日にわたり教育論文の展示を行った。
以下にそれらの概要を紹介する。

2 講 演

◆演題「心の教育の基礎基本」

◆講師 お茶の水女子大学名誉教授   森  隆夫 先生

【講演概要】

○ 教育改革と心の教育

 ・ 制度改革と内容改革

制度改革を中心に教育改革が進められがちだが、内容改革の方が大切である。1年に一人一改革、一校一改革を目指して取り組めば10年で10の改革が成し遂げられる。先ずは大事なことから始める。

 ・ 新義務教育観

知徳体のバランスのとれた質の高い教育を目指すためには、知・徳・体の一つ一つが充実していかなければ、バランスはとれない。

○ 心の教育の基礎基本

物事には基礎基本がある。義務教育より前に家庭教育が大事である。教育の一歩は模倣から始まり、努力することから自信が生まれる。赤ちゃんは、まず親から学ぶ。模範が示せる親であってほしい。
家庭教育に心の教育がある。心の教育とは家庭において「心の庭づくり」をすることである。昔の言葉で言えば「団欒」という。
家庭では、ストレスや悩みが解消される場でなければならない。ストレスや悩みが解消できてこそ、しつけができる。

○ 心の教育のキーワード

  ・感動と感化

心の教育はしゃべってするものではない。目と目が合わなければ心は通じない。ある校長は、ほとんど何もしゃべらない。1年に2回ぐらいしかしゃべらない。しかし、そのとき、子供はじっと聞き入る。つまり、感動はしゃべらなくても与えることができる。
感化とは知らず知らずに受ける教育のことである。(「空気の教育」とも言われる) 

○ 家庭教育で大事なこと

  ・初期言語

日本には初期言語という考え方がない。
アメリカでは“Thank you.”“Please.”“You are welcome.”の3つを初期言語として教える。

○ 教師・・・

教師は人間性と教科としての力の両方を高める必要がある。
教科を好きにさせるには人間として子供から好かれること、つまり自分を磨くことが大切である。そのためには先ずは自分を知ることから始まる。

3 大学院派遣研修修士論文の内容紹介ビデオについて

小坂井町立小坂井西小学校 原田 三朗教諭(平成16年度大学院派遣者)
テーマ:「学び」の<場所>についての一考察  
 −高知県・梼原町立四万小学校の総合学習を手がかりとして−
ビデオでは、原田教諭へのインタビューと実践の様子が分かる映像を上映した。
 CS(エル・ネット)により配信している。

4 教育論文の展示

 平成12年度から16年度までの県教育研究論文入賞者(最優秀賞及び優秀賞)の論文を展示した。


5 研究発表・研究協議

次の各研究について発表と協議を行った。なお、当センターの研究の詳しい内容については、ホームページ(http://www.apec.aichi-c.ed.jp/)、及び、今年度末発行予定の「研究紀要第95集」(CD-ROM版)をご覧いただきたい。


 ◇第1部会(全校種)
  教科以外の教育活動の在り方と評価に関する研究
    ―マネジメントの理念を生かした取組―

 【発表の概要】
 名古屋大学教育学部助教授 南部 初世氏による全体講義「組織マネジメントに基づく学校評価」の後、A(小中学校)、B(県立学校)の2分科会に分かれて「総合的な学習の時間」や「特別活動」等の教科以外の教育活動の指導と評価の在り方、及び組織マネジメントの理念を取り入れた実践報告を行った。その後、質疑応答及び研究協議を行った。

 ◇第2部会(高・特)
  高等学校国語科における「読解力」育成の在り方に関する研究
  ―文章の内容を的確に読み取り、読み味わうための評価規準、評価方法の実践例―

 【発表の概要】
 国語科における体系的な評価規準、評価方法の具体例を示し、「読解力」育成のための実践報告を行った。その際、「読むこと」の領域のみにとらわれず、他領域との関連言語活動例の活用等に留意した。その後、質疑応答及び研究協議を行った。

 ◇第3部会(全校種)
  豊かな心の育成を目指す指導の在り方に関する研究

 【発表の概要】
幼児・児童・生徒の望ましい「心の教育」の充実に視点を据え、豊かな人間性をはぐくむ教育の在り方に関する実態調査の結果と分析の報告を行った。その後の研究協議では、今後の実践についての論議があり、幼小中高の連携による指導や保護者・地域を巻き込んでの取組の必要性等が話し合われた。

 ◇第4部会(小中高)
  情報教育の現状と課題 
   ―情報教育推進のための調査研究―
   ―インターネットの教育利用に関わる調査研究―

 【発表の概要】
 前半は「情報教育推進のための調査研究」についての発表を行った。平成13年度と平成16年度の調査結果を分析し、問題点を明らかにし、情報教育の在り方についての提案をした。後半は「インターネットの教育利用に関わる調査研究(参加・交流)」についての発表を行った。特に参加しながらの「愛知エースネットを用いたテレビ会議システムの紹介」については大変好評であった。その後行われた研究協議会では、具体的な事例を基に活発な意見交換ができた。
なお、本部会については、後日CS(エル・ネット)により配信する予定である。

 ◇第5部会(全校種)
  心の発達の支援に関する研究

 【発表の概要】
 「予防・開発的教育相談の在り方に関する研究」(平成12〜14)及び「予防・開発的教育相談の推進に関する研究」(平成15〜16)の上に積み上がる研究として、本年度は、道徳の観点「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」「主として集団や社会とのかかわりに関すること」を目指した研究報告を行った。実践として、小・中・高等学校でのアサーション・スキル習得を通しての内容を報告し、引き続いて質疑応答及び研究協議を行った。

 ◇第6部会(全校種)
  特別支援教育相談のネットワーク構築に関する研究
 ―障害のある子供とその保護者のニーズに応じた相談支援を充実するための養護学校と小・中学校等、関係機関との連携―

 【発表の概要】
 はじめに、研究の趣旨・概要として、養護学校における校内の相談支援体制の整備、充実及び小・中学校を中心とした関係機関との特別支援教育相談ネットワークの構築についての望ましい在り方の提案をした。その後、小・中学校、養護学校6校の実践を発表した。続いての研究協議では、それぞれの学校の実情に合わせた話合いになり、小・中学校への養護学校からの支援の期待等の意見が出た。

6 おわりに
 「心の教育の基礎基本」と題しての森 隆夫先生の御講演は、大変好評であった。森先生のすばらしい話しぶりに会場が引き込まれ、大変楽しい雰囲気の中、拝聴することができた。ユーモアの中に鋭い指摘があり、事後アンケートを見ると、「楽しい講演だったが、内容的に身の引き締まる思いがした」「『心の庭づくり』の話が印象に残った」「『感動』と『感化』を意識していきたい」「家庭の教育力から学校の教育を見直す」といった感想が聞かれた。
 また、午後の研究発表・研究協議においても、多くの先生方より有益な御意見をいただいた。今後の研究に生かしていきたい。