グループウェアを活用した校務の効率化

1 はじめに

 平成22年度10月に改訂された「教育の情報化に関する手引」(文部科学省)には,グループウェアを活用した効率的な校務処理の例が具体的に示されています。また,「校務の情報化は,業務の軽減と効率化によって,教育活動の質まで変化させる」とも記されています。
 しかし,グループウェアを業務に活用している学校はまだ少数(平成23年現在)であるのが現状です。そこで,業務上の問題点を解決するにはグループウェアのどの機能を用いればよいかを押さえながら,利用目的別にグループウェアの活用方法を紹介します。

2 グループウェアの概要

(1) グループウェアとは

 「グループウェアとは,校内LANを活用して情報共有やコミュニケーションの効率化を図り,グループによる協調作業を支援するソフトウェアの総称である。」
(「教育の情報化に関する手引」より)


(2) グループウェアの目的

 グループによる協調作業とは,単に作業を分担することではありません。その目的は,個人の特性や能力を生かし,互いの情報を共有しながら業務の効率を高めることにあります。協調作業の一つとして校内LANにグループウェアを導入し,活用することで,校務の軽減と効率化の進展が期待されるのです。


(3) グループウェアの代表的な機能

メイン(トップ)

グループウェアの入口となるウェブページ。個人の必要な情報を集約,表示

スケジュール

個人・グループのスケジュールの登録と閲覧

施設予約

会議室,プロジェクタ等,共有施設・備品等の予約状況の確認と予約

掲示板

グループウェア利用者全員に連絡・通達文書を掲示

回覧板

グループ内に知らせたい文書を回覧 (誰が閲覧したか把握できる。)

ショートメール

グループ内でメールを送受信

ファイル管理

ドキュメントや文書フォーマットを共有化し,一元管理



3 グループウェアの導入

 グループウェアには有料,無料,多機能なものや操作性に優れたもの等様々なものがあります。今回はフリーソフトウェアである『GroupSession』を例としてグループウェアの機能について紹介します。


 図1 「GroupSession」の初期画面

 まず,グループウェアの導入と,導入時における留意点については,同じ「愛知エースネット」のコンテンツの一つである

   <参照> 「グループウェアの導入と朝礼時間の短縮」

に詳しく記述されていますので参照してください。


4 グループウェアによって解決できる業務上の問題点

 グループウェアを導入することによって,次のような業務上の問題点を改善することができます。

業務上の問題点

解決機能

・ 職員朝礼や各種会議で・・・
       不在者に連絡が伝わらない
       連絡事項が多くて時間がかかる,メモしきれない
       連絡を忘れてしまう,議事録を作るのが面倒
・ 別室の先生と連絡が取りづらい
・ 会議の日程がなかなか決まらない
・ 行事や会議の予定が重なったり忘れたりする
・ 不在連絡が相手に伝わらない
・ 行事の反省や教職員アンケートで・・・
       記入用紙がどこに行ったかわからない
       反省や回答が集まりにくい
       自由記述の意見を入力するのが面倒
・ メールを送信したのに気付いてもらえない
・ 文書の回覧や決裁で・・・
       最後まで回るのに時間がかかる
       閲覧が不徹底,回した後でもう一度見たい
       部外者に見られたくない
・ 施設・備品の予約が面倒,空き状況が分かりにくい
・ 必要な文書がどこにあるのか分からない


5 利用目的を実現するためのグループウェアの機能

(1) 情報の周知徹底  

 グループウェアにログインして最初に表示されるユーザのメイン画面(図2)には,スケジュール,メールの着信状況,掲示板の更新状況など,職員に向けての様々な情報が配置されています。


 図2 メイン画面

 『GroupSession』では,メイン画面に「インフォメーション」欄(図3)があります。この欄は特に目に付く場所にあり,各種通知が自動的に表示されます。任意の情報を登録することもできます。職員朝礼の時間短縮には後述する「掲示板」機能が有効ですが,職員朝礼の内容をこの「インフォメーション」に掲載する方法も有効です。

 常駐場所が職員室以外の部屋の職員も,最寄りの端末から朝礼内容が確認できます。
 この他,各分掌からの依頼事項の掲示や予定変更の通知などにも利用され,職員への情報の周知徹底に寄与します。


 図3 インフォメーション機能を利用した職員朝礼内容の掲示


(2) スケジュールによる状況把握  

 職員それぞれが自分の予定を把握でき,それに加えて他の職員の状況も把握できるので,学校という組織内における業務の円滑化を図ることができます。

 個人のスケジュール(図4)には時間割や個別の内容を登録しています。また,スケジュールは個人のものだけでなく,グループごとに登録することもできます。図4の例では,全日制というグループには学校行事を,各分掌などのグルーブにはそれぞれの会議のスケジュールなどを登録しています。この例では種類別に色分けしており,緑色は学校行事,赤色は会議,青色は個人スケジュールとしています。


  図4 スケジュール画面

 メイン画面(図2)にもスケジュールが表示されるように設定することができます。なお,メイン画面に表示されるスケジュールは所属するグループと個人のスケジュールをまとめて表示しています

 図5はスケジュールを「月間」で表示した例です。「GroupSession」では表示するメンバーが指定できます。グループ全員のスケジュールを表示させると,校内の行事や会議等のスケジュールの確認や,臨時の会議や作業の設定等を効率的に行うことができます。さらに,教職員の所在が把握できるので,緊急時の対応を迅速に行うことができます(下記の例では,学校行事が黒,分掌業務が青,出張がオレンジです)。


  図5 スケジュール「月間」のイメージ


≪参考≫

 スケジュールに時間割を組み込んでグループのメンバー全員のスケジュールを表示すると,スケジュール全体が見にくくなります。そのため,例えば生徒指導部だけの時間割を確認したいときは右図のような「生徒指導部員空き時間表」をPDF等で作成し,「ファイル管理」の「キャビネット」の中に入れておきます。そうすることにより,空き時間が確認しやすくなります。


(3) 施設・備品の有効活用  

 会議室等の施設予約と状況確認(図6)ができ,施設の有効活用を行うことができます。施設だけでなく,プロジェクタ等の備品の情報も登録できるので工夫次第で様々な用途に利用できます。施設・設備等の空き状況検索も可能で,時間調整の効率化が実現できます。


  図6 施設予約のイメージ
  

(4) 連絡会の時間短縮  

 グループ全体に広報を行う機能です。複数の掲示板を作成,運営することができ,掲示板毎にアクセス可能なユーザを割り当てることもできます。意見の集約や電子会議室として利用できます。全教職員向けに連絡事項を効率的に伝達し,打合せや会議の時間を短縮することができます。
 「3 グループウェアの導入」と同じく,下記コンテンツに詳しく書かれているので参照してください。

   <参照> グループウェアの導入と職員朝礼の短縮



(5) 回覧板による情報伝達  

 主にグループなどの「複数の人」に対する情報伝達の手段として回覧板機能(図7)があります。従来の回覧板では相手の不在により回覧が滞ってしまったり,人数が増えるほど回覧に時間を要したりすることもありました。しかし,この機能では回覧情報を相手に一斉に送付するため,回覧待ちが生じません。回覧相手の確認状況を見ることもでき,回覧が送られた職員はコメントを残すこともできます。回覧内容は保存され,いつでも確認することができます。分掌内や教科係内等での情報伝達に利用できます。


 図7 回覧板画面


(6) ショートメールによる情報交換  

 主に「個」に対する情報交換の手段としてメール機能(図8,9)があります。これまでの情報交換手段としては「内線電話を用いる」「相手を直接訪ねる」「書置き(メモ)をする」といったものがありますが,相手がいない場合の時間のロスや伝達漏れなどが生じがちでした。
 メールを利用することで情報伝達の正確性が向上し,添付ファイルの利用など,他の機能と統合された環境によって利便性が向上します。
 ショートメールは,グループウェアの中だけで使えるものなので,間違って外部に送られることはありません。また,送信したメールについては,相手の開封状況も確認でき,伝達漏れを防ぐことができます。

 職員アンケートの回収に利用すれば,紙が不要になります。アンケートが記述式のときは,集約をコピー&ペーストで行うことができ手間が減少します。


  図8 受信メール画面


 図9 送信メール画面


(7) ファイル管理による情報資産の共有  

 主に定型文書や書類のひな型のファイル共有のために利用します(図10,11)。全ての職員がアクセスできるフォルダと,所属するグループの職員のみアクセスできるフォルダが設定できます。

 「GroupSession」ではファイルが更新された場合には通知されるので,個人が保管している古いバージョンのファイルが利用されることを防ぐことができます。


  図10 ファイル管理画面(キャビネット一覧)


  図11 ファイル管理画面(フォルダ情報)


 ファイルの検索機能があれば,目的のファイルを効率的に探し出し,利用することができます。


  図12 ファイル管理画面(ファイル詳細検索)


6 おわりに

 今回の検証から,グループウェアは教職員間の円滑な連絡,紙の削減,効率的な事務処理の推進等に大きく貢献するツールであることが分かりました。グループウェアを有効に活用することで,教職員同士の情報の共有化が進み,また校務の効率化を図ることができます。効率化によって生じた時間や得られた情報の有効な活用が,教育の質の向上につながると期待されます。ただし,グループウェアが円滑に運用されていくためには,全教職員が利用のメリットを感じ,毎日利用してもらう必要があります。そのためにも,グループウェアの活用目的(朝会等の連絡体制の効率化,ペーパーレス化等)を明確にし,目的に見合う機能を有したグループウェアを利用していくことが重要であると考えます。