電子黒板の効果的な利用方法

1 はじめに

   ICTの積極的な活用による「わかる授業」の推進が期待されています。そこでここでは,当サイト内の「基本的なプロジェクタの利用例」,「効果的なプロジェクタの利用方法」及び,「PLCを利用したネットワークの構築」の内容を参考に,効果的に電子黒板を利用する方法を紹介します。
   電子黒板を利用するに当たり,電子黒板本体(デジタイザ),付属の電子ペン,電子黒板のソフトウェアがインストールされたパソコン,プロジェクタ,WOLスクリーンが必要になります。なお,付属ソフトウェアのインストール,基本的な操作方法はユーザーズガイド及び内部ページのICT向上テキスト「電子黒板の教育的利用」を参照してください。
   ※WOLスクリーンは,Write on the Lightスクリーンの略で,磁石を用いて黒板に貼り付けることでホワイトボードの代替となるスクリーンのことです。




2 プロジェクタの投影方法の工夫

   ここでは教室の環境等によって,プロジェクタの投影方法などの工夫をし,電子黒板の活用効果を上げる方法について紹介します。

   (1) 普通教室での利用(通常の利用方法)

   授業展開によって,プロジェクタの設置位置と投影する位置を工夫することで,板書事項と投影画像の相乗効果が期待できます。プロジェクタの設置に関しては,当サイト内の「基本的なプロジェクタの利用例」を参照してください。


   (2) 特別教室等の大教室での利用(2台のプロジェクタ利用) ・・・図1

   特別教室等の大教室では,後方の生徒にも見やすい環境を作ることが必要です。そこで,パソコンからの映像を分配器を利用し,教室の中間あるいは後方に2台目のプロジェクタで投影することにより,後方の生徒も分かりやすく授業を展開することができます。

分配器の利用
二箇所で投影
   図1 2台のプロジェクタの利用例


   (3) 投影場所の素材に応じた利用…図2

   ア 黒板に投影する場合

   黒板にそのまま投影することもできます。この場合,プロジェクタを黒板モードにするときれいに投影できます。

   イ 黒板に投影する場合(WOLスクリーン利用)

   WOLスクリーンを利用すると画像をきれいに投影することができます。

   ウ ホワイトボードに投影する場合

   そのまま投影することができます。光が反射しやすいため,映像の明るさを調整すると見やすくなります。

   エ 磁石が付かない場所の場合

   磁石のつかない黒板や壁面で電子黒板を利用する場合,チョーク受けや壁面に机を付けて,そこにデジタイザを置いて利用することも可能です。
   なお,電子黒板を常設できれば,電子ペンの位置設定を初回だけ行えばよいため,起動時間を短くすることができます。

黒板に投影する
黒板に投影する(WOLスクリーン利用)
ホワイトボードに投影
磁石の付かない場所での利用
   図2 投影場所状況に応じた設置例


   (4) マルチモニタリング機能の利用…図3

   マルチモニタリング機能を利用することによって,指導にも幅が広がります。基本的なマルチモニタリング機能は,当サイト内の「効果的なプロジェクタの利用方法」を参照してください。

   ア 非アクティブ→アクティブにする

   手元のパソコンと同じ画面がプロジェクタに投影されます。

   イ セカンダリの設定をする

   プロジェクタ投影中でも指導者は手元の画面で他の作業などを行うことができます。下の図では,プレゼンテーション実行中に指導者の手元で「ノート画面」の確認ができるところを示しています。

非アクティブ→アクティブ
セカンダリの設定
パワーポイントの利用例
   図3 マルチモニタリング機能の利用例 ※図の例は識別ボタンを押した状態です。



3 電子黒板活用の工夫

   電子黒板には「遠隔会議」の機能があります。遠隔会議とは,離れた複数の会場でネットワークを介して同時に電子黒板を利用する機能です。なお,この機能を利用する場合は,各会場とも電子黒板を利用できる環境が必要になります。

   (1) 遠隔会議の設定1(既存ネットワークの利用)…図4

   学校内に構築されているネットワークを利用して,複数の教室で相互に電子黒板を利用します。
   遠隔会議の設定手順は以下のとおりです

 
主催者の操作
参加者の操作
手順1
 

   「メイン」画面の「遠隔会議」を選択 
 
手順2
 

   「主催」を選択

   「メイン」画面の「遠隔会議」を選択
手順3
 

   「なし(主催者のみ)」を選択し,その後「接続」を選択

   「ネットワーク」画面の「参加」を選択
手順4
 
 
   「新規」を選択
手順5
 
 
   名前(適宜)及びアドレス欄に接続先のIPアドレス,またはコンピュータ名を入力し,その後「OK」を選択
手順6
 
 
   「接続先」を選択し,その後「接続」を選択
手順7
 

   参加者からの接続要求に対し,「許可する」を選択
   図4 遠隔会議機能の設定1<参考>


   手順7において入力すべき,IPアドレス及びコンピュータ名の確認手順は,以下のとおりです。…図5

   ※ローカルホスト情報には値が自動的に入っています。

確認手順1

   「メイン」画面のメニューの「設定」を選択
確認手順2

   「オプション」を選択
確認手順3

   「遠隔会議タブ」を選択し,「ローカルホスト情報」のIPアドレスを確認する。
   図5 IPアドレス及びコンピュータ名の確認 ※ここでは,主催者に確認してもらう必要があります


   (2) 遠隔会議の設定2(ネットワークのない場合)…図6

   遠隔会議を行なう教室間にネットワークが敷設されていない環境においても,PLC(Power Line Communications)を利用すると容易に遠隔会議を行なえます。PLCとは建物内の電気配線を利用してデータ通信を行う技術です。詳しくは当サイト内の「PLCを利用したネットワークの構築」を参照してください。
   ここでは,同じフロアの二つの教室で実施しました。なお,電源系統が異なるとネットワーク接続できないので,棟をまたぐ,あるいはフロアが違う場合は確認が必要です。

今回利用したPLC
PLCのイメージ図
   図6 PLC  (3) 遠隔会議機能の利用例…図7


   ここでは,プレゼンテーションソフトウェアを利用してみました。電子ペンで書き込んだ内容を同時に別の教室で見ることができ,意見交換や同時に問題に取り組むなど,工夫により指導にも幅が広がると感じました。

相互プレゼンによる答え合わせ

教室A

教室B
   図7 プレゼンの様子 ※今回はPLCを利用し,隣接教室で実施しています


   また,朝の学習など,複数の教室で一斉に授業展開をする場合,テレビ会議のなど通信用ソフトウェアとマイク(ヘッドセット用でも可)・スピーカを組み合わせることにより,指導者が一人でも複数の教室に対して授業を行うことが可能となります。この場合,指導者からの指示や生徒からの質問などをマイクとスピーカを通してすべての教室で共有することができます。
   さらに,Webカメラを接続すれば教室の様子が相互に確認できます。このような利用方法は,次のような場面で活用できます。

   ア 朝の学習
   イ 社会人講座
   ウ 中学生体験入学 など




4 その他の利用例

   ここでは,授業以外での活用例を挙げてみます。

   (1) 部活動会議で利用…図8

   雨天時や試合前後のミーティングなどで利用

   電子黒板のテンプレート及びクリップアートには,部活動や生徒会活動などで利用できる素材もあります。これを利用してスポーツ競技の作戦確認などができます。クリップアートの人物画像などを移動させることもできるため,生徒が自分の動きを把握しやすく大変便利です。

サッカーの作戦会議
   図8 部活動での利用


   (2) 学校行事で利用…図9

   修学旅行の事前指導や交通安全指導,学校祭の打ち合わせなどで利用

   外部機器接続の機能を利用し,デジタルビデオカメラで動画を使用しました。説明を中断することなくそのまま電子ペンを用いて電子黒板上でデジタルビデオカメラの操作もできるため大変効果的でした。
   ※ただし,外部機器を接続するには,外部機器のデバイスドライバがインストールされている必要があります。

ろうけつ染めの仕方
   図9 修学旅行事前指導での利用場面


   (3) 体験入学で利用…図10

   学校紹介や中学生体験入学などで利用

   中学生への説明などで,投影画面上に直接電子ペンで指示を書き込むことができ,中学生に対してポイントを押さえた指導をすることができました。

学校行事
   図10 中学生体験入学での利用場面


   (4) 校務処理で利用

   教科等の会議におけるブレーンストーミングでホワイトボード機能を利用し,出し合った意見などをまとめたり,書き込んだ意見を移動させてカテゴリー別に分けたりすることができます。また,書き込んだ画面をそのまま電子データとして保存できるので,会議記録としても利用が便利です。




5 おわりに

   電子黒板を研究して感じたことは,確実に指導に「+α」があるということです。しかしながら,その設置に時間を要することも現実的な問題です。常設用と移動用に分け,有効的に活用してみるのも1つの方策だと思います。使うことで発見があり,工夫次第で使い道にも広がりをみせます。今後も多くの場面で活用し,新たな発見を模索したいと思います。




参考文献・Web