NAS用OSによるファイルサーバの構築

1 はじめに

   無償のオープンソースソフトウェアで構成されたNAS用OS「FreeNAS」を用いると,ファイルサーバを構築できます。また,設定作業のほとんどがブラウザ上から行えるため,Windows以外のOSに馴染みが無い方も比較的容易にシステムの構築が可能です。さらに,FreeNASは最小動作要件が『96MB以上のメモリを搭載すること』と,低スペックのパソコンにおいても活用が可能なため,使用頻度の低くなったパソコンを有効活用することもできます。

   ここで紹介する構築手順は以下のとおりです。




2 システムCDの作成

   (1) OSイメージのダウンロード

   ア FreeNASのホームページ(http://www.freenas.org/)にアクセスします。

   イ 「Downloads」のリンク先に「FreeNAS LiveCD」の一覧があります。

   ここでは「LiveCD0.69.2 i386」をダウンロードします。「Download」のリンクをクリックしてしばらくするとファイルのダウンロードメニューが出てきますので,任意の場所に保存します。

   ウ ダウンロードが完了すると「FreeNAS-i386-LiveCD-0.69.2.4700.iso」が保存されます。


   (2) OSイメージのCDへの書き込み

   ダウンロードしたイメージをCDに書き込みます。ISOファイルをCDに書き込む手段は様々あります。詳しくは,お使いの書き込みソフトウェアのマニュアルを参照してください。




3 OSの起動と初期設定

   (1) 設定保存用USBメモリの準備

   FATでフォーマットしたUSBメモリをパソコンに接続しておきます。ここでは,各種設定をUSBメモリに保存する方法をとっているためです。なお,設定の保存は変更を行うたび自動的に行われます。

   (2) FreeNASの起動

   システムCDからパソコンを起動します。各種ハードウェアの認識も自動的に行われるので特別な操作は必要ありません。「Enter a number:」という行が表示されましたら起動完了です

_  *** This is FreeNAS, version 0,69.2 (revision 4700)
    built on Thu Jun 11 00:06:51 UTC 2009 for i386-livecd
    Copyright (C) 2005-2009 by Olivier Cochard-Labbe. All rights reserved.
    Visit http://www.freenas.org for updates.

    LAN IPv4 address: 192.168.1.250

    Port configuration:

    LAN -> lnc0


Console setup
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1) Assign interfaces
2) Set LAN IP address
3) Reset WebGUI password
4) Reset to factory defaults
5) Ping host
6) Shell
7) Reboot system
8) Shutdown system
9) Install/Upgrade to hard drive/flash device, etc.

Enter a number:
_    図3-1 FreeNAS起動完了時の画面


   (3) 初期設定(IP設定)

   FreeNASの起動直後のIPアドレスは192.168.1.250が割り振られます。その他の設定も環境に応じて変更します。

   ア 図3-1の「Enter a number:」に「2」を入力してください。ネットワーク設定の画面に移行します。

   イ 「Do you want to use DHCP for this interface?」では,DHCPが有効なLANの場合は「Yes」を,固定IPを割り振る場合は「No」を選択します。なお,「Yes」を選択した場合は手順の「キ」に進みます。

   図3-2 DHCPの有効/無効設定画面


   ウ 「Enter new LAN IPv4 address.」では,IPアドレスを入力します。

   図3-3 IPアドレス設定画面


   エ 「Enter new LAN subnet mask......」では,「e.g.」欄を参考にサブネットマスクを入力します。(例:「255.255.255.0」の場合→「24」を入力)

   図3-4 サブネットマスク設定画面


   オ 「Enter IPv4 default gateway.」では,デフォルトゲートウェイを入力してくます。

   図3-5 デフォルトゲートウェイ設定画面


   カ 「Enter DNS IPv4 address.」では,DNSサーバのアドレスを1つ入力します。

   図3-6 DNSサーバ設定画面


   キ 「Do you want to configuration IPv6 for this interface?」はIPv6関連の設定です。必要な場合は設定します。

   図3-7 IPv6の有効/無効設定画面


   ク 「Initializing interface. Please wait...」と画面上に表示され,しばらくすると更新されたネットワーク設定の内容が表示されます。また,これで今後の設定をブラウザから行うことができるようになったため,そのURLが表示されます。

_ Initializing interface. Please wait...

The LAN IP address has been set to:
IPv4: 192.168.0.214/24

You can access the WebGUI using the following URL:
http://192.168.0.214:80

Press ENTER to continue.
_ 図3-8 ネットワーク設定の完了とFreeNAS管理URLの通知画面



4  FreeNASの基本設定

   (1) FreeNASサーバ管理画面へのログイン

   LAN内のパソコンのブラウザに,FreeNASサーバのURLを入力(http://設定したIPアドレス/)すると,ログイン画面が表示されます。ユーザ名とパスワードの初期値はそれぞれ,「admin」,「freenas」です。


   図4-1 FreeNASへのログイン画面


   (2) 基本設定

   管理画面へログオンするユーザなどの基本的な設定を行います。

   ア 「System」→「General」の順に選択します。

   図4-2 基本設定画面への移動

   イ 「Username」→FreeNASサーバ管理画面へのログインユーザ名を変更する場合は修正します。

   ウ 「Timezone」→「Asia/Tokyo」の順に選択します。

   エ 「Save」ボタンをクリックし,設定を保存します。

   ※ここでは「English」で解説を進めていきます。

   図4-3 基本設定画面


   オ 「Password」タブをクリックし,新しいパスワードを設定します。

   カ 「Save」ボタンをクリックし,設定を保存します。

   図4-4 パスワード設定画面


   (3) ハードディスクの追加

   ここではFreeNASで使用するハードディスクを追加します。

   ア 「Disks」→「Management」と進みます。

   図4-5 ハードディスク管理画面への移動


   イ FreeNASで使用するハードディスクの一覧が表示されます。右下の「+」をクリックします。

   図4-6 ハードディスク一覧画面


   ウ 「Disk」で追加するハードディスクを選択します。FreeNAS起動時に認識された全てのデータドライブ(USBメモリ等も含む)が表示されるので,容量や製品名などを確認して設定します。

   エ 「Add」ボタンをクリックします。

   図4-7 ハードディスク追加設定画面


   オ 一覧に,追加されたハードディスクが表示されます。

   図4-8 ハードディスク一覧画面(追加設定後)


   カ ハードディスクの追加後,「Apply changes」ボタンをクリックします。「Status」欄が「ONLINE」になっていれば,追加作業は完了です。

   図4-9 ハードディスク一覧画面(追加完了)


   (4) ハードディスクのフォーマット

   ここではハードディスクのフォーマットを行います。

   ア 「Disks」→「Format」の順に選択します。

   図4-10 フォーマット画面への移動


   イ 「Disk」には追加されたハードディスクが全て表示されます。フォーマットするハードディスクを選択します。

   ウ 「File system」→「UFS(GPT and Soft Updates)」の順に選択します。

   エ 「Format disk」ボタンをクリックします。

   図4-11 フォーマット設定画面


   オ 確認メッセージが表示されますので,「OK」ボタンをクリックします。

   図4-12 フォーマット確認画面


   カ フォーマットが開始されます。最後に「Done!」と表示されればフォーマットは完了です。

   図4-13 フォーマット処理画面


   (5) ハードディスク情報の登録

   ここではハードディスクへの名前の割り当てなど,ファイル共有に必要なハードディスク情報の登録を行います。

   ア 「Disks」→「Mount Point」の順に選択します。

   図4-14 ハードディスク情報登録画面への移動


   イ 情報が登録されているハードディスクの一覧が表示されます。右下の「+」をクリックして登録作業に入ります。

   図4-15 ハードディスク情報一覧画面


   ウ 「Disk」にはフォーマットが完了したハードディスクが全て表示されます。情報を登録するハードディスクを選択します。

   エ 「Mount point name」に任意の名称を入力します(例:「share1」)。ここで設定した名称は,後述のファイル共有の設定で使用することになるので,判別しやすい名称にします(図4-16)。

   オ 「Add」ボタンをクリックします。


   図4-16 ハードディスク情報設定画面


   カ 一覧に,情報が登録されたハードディスクが表示されます。複数のハードディスク情報を登録する場合は,「ア」〜「エ」の作業を繰り返します。

   図4-17 ハードディスク情報一覧画面(情報設定後)


   キ ハードディスク情報の登録が終わったら「Apply changes」ボタンをクリックします。「Status」欄が「OK」になっていれば,設定は完了です。

   図4-18 ハードディスク情報一覧画面(設定完了)



5  ファイル共有の設定

   (1) ファイル共有設定

   Windowsから共有フォルダにアクセスするための設定をします。

ア 「Services」→「CIFS/SMB」の順に選択します。

   図5-1 ファイル共有設定画面への移動


   イ 「Common internet File System」の右側の「Enable」チェックボックスにチェックを入れます(図5-2)。

   ウ 「Authentication」→「Local User」の順に選択します。

  「Local User」とすることでユーザ設定を行い,アクセス権限者を限定します。作業は後述の5-(3)で行います。 「Anonymous」にすると誰もがアクセスできる設定になります。

   エ 「NetBIOS name」→コンピュータ名を設定します。(例:「freenas」とした場合,エクスプローラから「\\freenas」でアクセスできます。)

   オ 「Workgroup」→任意のワークグループ名を設定します。

   カ 「Dos charset」→「CP932」の順に選択します。

   キ 「Large read/write」→「Enable large read/write」チェックボックスにチェックを入れます。

   ク 「Save and Restart」ボタンをクリックすると設定が保存され,ファイル共有設定が有効になります。FreeNAS自体が再起動するものではありません。

   図5-2 ファイル共有設定画面


   (2) ハードディスクとの関連付け

  ここでは作成したファイル共有設定を,どのハードディスクに適用するかを設定します。

   ア  「Shares」タブをクリックします。

   イ ファイル共有設定が関連付けされているハードディスクの一覧が表示されます。右下の「+」をクリックして登録作業に入ります。

   図5-3 ファイル共有設定とハードディスクの関連付け一覧画面


   ウ 「Name」→任意の共有フォルダ名を設定します。(例:「NAS01」とした場合,エクスプローラから「\\コンピュータ名\NAS01\」でアクセスできます)

   エ 「Path」→ファイル共有を行うハードディスクを選択します。「...」ボタンをクリックします。

   図5-4 ファイル共有設定のハードディスクとの関連付け1


   オ  手順4-(5)-ウで設定したハードディスクの名称一覧が表示されます。ファイル共有を行うハードディスクの名称をクリックします。

   図5-5 ファイル共有設定のハードディスクとの関連付け2


   カ  画面上のテキストボックスにハードディスクの名称が入ったことが確認できたら,「OK」ボタンをクリックします。

   図5-6 ファイル共有設定のハードディスクとの関連付け3


   キ  「Add」ボタンをクリックします。

   図5-7  ファイル共有設定のハードディスクとの関連付け4


   ク  一覧に,ファイル共有設定が関連付けされたハードディスクが表示されます。

   ケ 「Apply changes」ボタンをクリックして,設定を反映させます。

   図5-8 ファイル共有設定とハードディスクの関連付け一覧画面(設定完了)


   (3) ユーザ設定

   ここではファイル共有にアクセスするためのユーザ情報の設定を行います。

   ア 「Access」→「Users and Groups」の順に選択します。

   図5-9 ユーザ設定への移動


   イ ユーザの一覧が表示されます。右下の「+」をクリックして追加作業に入ります。

   図5-10 ユーザ情報一覧画面


   ウ 「Login」→ユーザ名を入力します。

   エ 「Full Name」→FreeNASの管理上でのみ使用する情報です。空白だとエラーが返ってきてしまいます。

   オ 「Password」→パスワードを2回入力します。

   カ 「Primary group」→ユーザが所属するグループを設定します。ここでは「wheel」を選択します。

   キ 「Save」ボタンをクリックします。

   図5-11 ユーザ情報設定画面


   ク 一覧に,登録されたユーザ名が表示されます。他のユーザを登録する場合は,「イ」〜「キ」の作業を繰り返します。

   図5-12 ユーザ情報一覧画面(設定完了)


   ケ ユーザ情報の登録が終わったら「Apply changes」ボタンをクリックします。これで設定が反映されます。

(4) グループとアクセス権の設定

   フルアクセスのユーザと読み取り専用のユーザを区別するために,フルアクセスのグループを設定し,それ以外のグループは読み取り専用という形で設定を行います。

   ア 「Disks」→「Mount Point」の順に選択します。

   イ 対象のハードディスクの設定ボタンをクリックします。なお,この設定はハードディスク毎に行うことができます。

   ウ 「Access Restrictions」項目で設定を行います。以下の例では「wheel」グループをフルアクセス,その他のグループを読み取り専用としています。

   図5-13  グループとアクセス権の設定


   エ 以下は「user001」を「wheel」グループ(フルアクセス),「user101」を「guest」グループ(読み取り専用)としている例です。

   図5-14 アクセス権別のユーザ設定例


   (5) 動作確認

   ア  エクスプローラから「\\NetBIOSname(※手順5-(1)-ウで設定したもの)」でアクセスします。ユーザ認証画面では手順5-(3)で設定したユーザ名とパスワードを入力してください。手順5-(2)-イで設定した名称のフォルダが表示されます。

   図5-15 動作確認1


   イ マイネットワークから辿ることもできます。ファイルやフォルダの作成やアクセスに問題がなければ作業終了です。

   図5-16 動作確認2


   (5) システムの終了

   ア 「System」→「Shutdown」と進むと,確認画面が表示されます。「OK」ボタンをクリックするとシステムがシャットダウンされます。

   イ ここまで行った各種設定はUSBメモリに保存されています。次回の起動時にこのUSBメモリを接続しておけば,自動的に設定が反映された状態でFreeNASが起動します。




6  おわりに

   校務の情報化が進む中で、セキュリティを確保した上でデータ保存領域を確保する事は喫緊の課題となっています。そのような状況下で、比較的容易にデータ保存領域の不足解消が可能な上,PC資源の有効活用も期待できます。校内での情報管理等の一助となれば幸いです。




参考文献