交流実践紹介 海外との交流

オーストラリアの生徒とメール交換
扶桑町立扶桑北中学校
 扶桑北中学校では、およそ10年前からオーストラリアのタラバジュラ州立学校へ、町の事業として生徒を派遣している。毎年、3年生の生徒から、抽選で選ばれた生徒が5名派遣されている。平成14年度には、オーストラリアからも生徒と教員が派遣されてきた。派遣された生徒たちの多くは、オーストラリアでできた友人や、ホームステイ先の家庭と、手紙やEメールのやり取りを継続している。
 オーストラリアでは、日本語を学習している学校がたくさんあり、日本人が片言の英語を話せる程度に日本語を話せる人が多くいる。
 今年度、相手のタラバジュラ州立学校が、生徒一人一人にメールアドレスを配付することになり、生徒同士が1対1でメールの交換をする条件が整った。本校の生徒は英語の学習として、タラバジュラの生徒は、日本語や日本の文化などの学習になることから1年間で3回のメールの交換を企画した。

扶桑町立扶桑北中学校の実践

1 交流計画
時期 内容
7月  英語科の指導で全員が相手校生徒へ英文の手紙の下書きを書く。
10月  技術・家庭科の情報の時間に、オーストラリアのタラバジュラ州立学校へ、メールを送信する。
11月  メールの返事を、技術・家庭科の時間に受信する。英語の時間に返事の下書きをする。
12月  技術・家庭科の情報の時間にメールの送信を行う。 
1月  メールの受信と下書き。授業としての最後のメールとなるので、お礼の手紙として下書きをする。
2月  お礼の手紙を送信する
2 交流の実際
(1) 英語の時間メールの下書きをし、技術の時間に送信する。
 教科書の例文を中心に、下書きの指導をし、下書きは夏休みの宿題とした。9月に提出された下書きを、英語科教員が添削指導し、技術・家庭科の情報の時間に送信した。中学2年生の生徒たちであるが、早い生徒は10分程度で入力と送信を完了し、遅い生徒は50分の授業時間でやっと入力を済ませ送信した。中にはアドレスの入力ミスなどで、1時間で送信できなかった生徒もいて、休み時間などを利用して全員に送信させた。
 また、メールを送信する際には、CCに私の授業用メールアドレスを入れさせ、トラブルが起こったときの原因を調査できるようにした。プロジェクターを利用し、CCによって送信が完了したことを生徒に知らせ、そのCCメールでその時間の評価を行った。

技術・家庭科の送信の風景              英語の教科書には電子メールの教材がある   
 

メールの下書き


(2) メールの受信
 英語力のある生徒は、メールの中身が理解できるが、そうでない生徒にはインターネット上にある翻訳サイト(インホシークテキスト翻訳やエキサイト翻訳)を利用してメールを翻訳させた。
   http://honyakuinfoseek.infoseek.co.jp/amitext/indexUTF8.jsp
   http://www.excite.co.jp/world/text/
 オーストラリアからの返信は、ローマ字を期待していたが英語で送られてきた。相手校の日本語のレベルがどの程度か十分把握していなかったことと、なにより私自身の英語力が不十分でオーストラリア人の日本語教師にこちらの意図が十分に伝わらなかったためだと思う。しかし、本校生徒にとっては英語の学習になり好都合であった。
 また、本校のメーラーがHTML形式のメールに対応しておらず、テキスト形式に表示されてしまう不都合がおこった。このあたりも、あらかじめ連絡を取り、調整する必要があった。

オーストラリアからの返信メール


(3) 2度目のメールの送信
 技術の時間に受信して、英語の時間に下書きをして、その後技術の時間に2度目の送信をする予定であったが、時間の確保が難しく技術の2回の授業で行った。英語の教員から、例文のプリントを準備してもらい、英語の苦手な生徒に配慮した。受信の授業は、授業の後半を利用し、送信の授業は次の週に、入力に時間のかかる生徒に配慮して、授業の初めから行った。早い生徒は、受信の授業の時間に、クリスマスメールを送信し、その返事を次週に受け取って、年賀メールをその時間に送信した生徒もいた。

日本からの2回目のメール

3 交流以外の学習
 オーストラリアからのメールには、いろんな質問があり、日本の文化や扶桑町の文化や産業などに関する事柄もあり、日本や自分たちの住んでいる地域に改めて目を向ける良い機会となった。日本の良いところや扶桑町の良いところを調べたり話し合ったりした。
4 交流相手校との連絡
 すべて電子メールを用いて連絡を行った。オーストラリアでも教育予算が削減され、相手の日本語教員が2つの学校を掛け持ちとなった結果、電子メールの返事が1週間かかることもあった。しかし、手紙の交換よりは早く連絡ができるので、電子メールが打合せには不可欠と言える。  
5 成果と課題
 本校の生徒たちは、今回の企画に大変意欲的に取り組んでいる。2度目のメールを送る授業では、多くの生徒がメールの下書きを自主的に行い、準備をしてきた。また、送られてきたメールに歓声をあげ、口語の形で書かれている文を訳すのに四苦八苦しながらも大変楽しそうであった。「もっと英語を勉強したい。」という声を多くの生徒から聞いた。
 扶桑北中学校には100台以上のコンピュータがあるが、生徒一人一人がコンピュータに触れることのできる時間は限られている。休み時間か授業中の与えられた時間だけである。オーストラリアからメールが来ていてもメーラーを開かないと返事が来ていることに気付かない。タラバジュラ州立学校のコンピュータは、各教室に数台設置されているコンピュータを利用しており、日本のようなコンピュータ室があるわけではないので、生徒全員が一度にメールを送る環境が整っているわけではない。いつのまにか相手から催促のメールが何度も送られてきている場合もあれば、未だに返事が来ない場合もある。また、扶桑北中学校の生徒がメールを送信する際に、一番ミスが多かったのは、アドレスの「,」「.」の入力ミスであった。メールの送信がうまくいったかどうか確認をさせないと、送信ミスに気付かないことがある。タラバジュラ州立学校でもそのようなミスがあったのかもしれない。

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