交流実践紹介 海外との交流

インターネットを利用した外国との音楽交流
大府市立吉田小学校

 本校には、昨年度の6月、アメリカ合衆国から帰国した5年生の児童Aがいる。彼は、父親の仕事の関係で4年間ほど日本を離れていた。米国では、現地の小学校と日本語補修学校の両方に通っていた。
 昨年度、児童Aが在籍する4年生の音楽学習で、地域のお祭りの音楽を題材に、市外の小学校の4年生とインターネットを通して交流をした。その経験を基に、今年度は、児童Aのアメリカでの友人たちに、日本の音楽を紹介するという取り組みに挑戦したいと考えた。

吉田小学校の実践

1 交流計画
段 階 活  動  内  容 備   考
外国の子供と音楽交流をすること知り、曲を選ぶ。 
ビデオで撮影する。  HPにアップする。
外国の子供の感想を知る。お礼のメールを送る。 Email
交流先の演奏のビデオを視聴する。
教えてもらった外国の歌を練習する。
郵便
(ビデオ・楽譜)
教えてもらった歌の演奏ビデオやメールを送る。 郵便
(ビデオ・楽譜)

2 交流の準備

(1)交流相手

○アメリカ合衆国、テキサス州在住
  R Family(母B、長男C、次男D)

○児童Aと母親に、交流先を紹介してくれるよう依頼した。児童Aが通っていた2校の現地校にメールを送ってくれたが、返事がもらえなかった。そこで、児童A一家が家族ぐるみで付き合いをしている、学校に通わず家庭で義務教育を行っている家族を紹介してもらった。アメリカでは、そのような形の教育も公に認められているとのことであった。この家庭の場合は、母親Bが、長男Cと次男Dに勉強を教えている。

(2)交流打合せ

○児童Aの母親に交流のねらいや概要を話し、アメリカの母Bに伝えてもらった。
○メールアドレスを教えてもらい、英語で担任から下のような手紙を送った。手紙は、ALTにお願いして送信前にチェックしてもらった。
 @ 交流依頼の手紙
Dear ▽▽▽▽(母B)
Hello. My name is
△△△△(担当教諭). I’m a music teacher in Yoshida Elementary School in Obu-city, Japan. Ms.○○○○(児童Aの母) told me your email address so I am happy to be able to send you an email. As she told you, I would like to exchange music and ideas between your students and mine, using the internet. This is what I hope to do. First, I will video tape my students performing and put the video on our school’s website. Then, you and your students access our site, watch the students singing and having fun and then let us know (by e-mail) what you thought about it. Finally, we would really appreciate you introducing us to some typical American children’s songs. Either a similar video performance or just some songs (written music with lyrics) would be great, whatever you choose.
I’ll take the video tomorrow. After putting it on the website, I will send you the website address. When you get the address, please access the site and watch the video.
We look forward to hearing from you.
Best Regards
△△△△(担当教諭)
 
 A 母Bからの返事
Dear △△△△(担当教諭)
This sounds like fun! We are looking forward to seeing your performance! We would be honored to participate in this exchange of music and cultures. We can respond to your performance through e-mail immediately. However, I do not have a web-site and have not found a format for video that e-mails well. I will try to make a video for you and mail it. You can send me your address or I can send it through 
□□□□(児童A). It will take a little longer that way, but it will be of better quality. While you are waiting on our video, I will try to gather some sheet music for you. We are so excited for this opportunity! Thank you so much.
Sincerely,
▽▽▽▽(母B)

 手紙にあるように、母Bは交流の依頼を喜んで引き受けてくれた。演奏のビデオについて、コンピュータで送ることは技術面で心配があるので、郵送してくれることになった。また、アメリカで歌われる子供の歌の楽譜を送ってくれるという約束をしてくれた。
交流の実際 

(1)曲を選ぶ (12月中旬)
 
5年2組の児童に交流の計画を話した。昨年度の交流を思い起こさせ、今回は外国の子供に演奏のビデオを見てもらおうと話すと、「ええっ、外国。」という反応が返ってきた。子供たちの中には、日本国内に向けてと同様に、外国にも電子メールを送ることができるということがイメージできない子供もいる様子だった。
 外国人が相手ということを意識してか、児童が選んだ曲は「赤とんぼ」「ソーラン節」になった。また、アメリカではリコーダーの学習がないということを話してあったので、シューベルトの「ます」のリコーダー演奏も紹介することになった。

「赤とんぼ」を歌う

(2) ホームページにアップする (12月20日)
 3曲とも、今までの授業の中で練習してきた曲だったので、すぐに録画することができた。児童Aに英語で曲の紹介をしてもらいビデオに撮った。彼はバイリンガルであるが、今までクラスメート等の前で英語を話すことはなかった。しかしこの紹介については、快く引き受けてくれた。収録したビデオは、動画編集ソフトで編集をし、ホームページ担当の職員の協力を得て内部ページにアップした。アメリカにはメールで内部ページのURLを伝え、そこにアクセスして視聴してもらった。
       
  
  内部ページにアップした動画の音声    
(著作権等の関係であいさつと民謡の音声のみ掲載)

(3)交流先の感想を知る (1月15日)

 長男Cと次男Dはホームページの動画を見て、久しぶりに児童Aの話す姿を見て喜んでいるという返事が来た。メールの中には、リコーダーの演奏が特に気に入ったことや日本の歌の歌詞の内容を知りたいなどの感想が書かれていた。

(4)アメリカの子供の歌の楽譜をメールで受け取る (2月3日)
  アメリカの曲の楽譜が、添付ファイルで2曲送られてきた。「If I had a hammer」「This Land is Your Land」という曲だった。はじめの曲は、イギリスで育った本校のALTも学校で歌ったという、よく知られている曲だった。子供たちに楽譜を増し刷りして渡し、1曲目は英語で歌い、2曲目はリコーダーで演奏できるように練習した。

アメリカから送られてきた楽譜

(5)練習したアメリカの曲を演奏したビデオをホームページにアップする (2月23日)

 アメリカの曲は子供たちにとっては馴染みのない曲想だったが、多くの子供がメロディーを気に入り楽しく練習できた。数回の練習の後、ビデオ撮りをした。前回と同じように、吉田小学校のホームページの内部ページにアップし、アメリカの母B、長男C、次男Dに見てもらった。まもなく、下のような感想のメールをもらった。

「This Land is Your Land」の演奏風景
Dear △△△△(担当教諭)
I did receive your e-mail and we watched the videos. We are very impressed! Your students did an excellent job. "If I Had A Hammer" was especially impressive! I looked at the date of my e-mail to you with the music. You have been teaching them the music less than a month. You and the students must have worked very hard. Tell them that their pronunciation of all the words was very good.
We look forward to hearing from your students.
Thank you so much,
▽▽▽▽(母B)

(6)アメリカの子供の演奏を見る (2月27日)

 2月24日にアメリカからのDVDビデオが届いた。テキサスの音楽ブルーグラスミュージックで始まり、二人の自己紹介に続き、「This Land is Your Land」「The Crawdad Song」の2曲を、長男Cと次男Dがギターに合わせて歌っている様子が収録されたビデオだった。吉田小学校の子供たちは、初めて見るアメリカの景色や往来の様子に驚きの表情で見いっていた。また、リズムにのりながら体を揺らして歌う二人の様子に感心していた。
 
送られてきたDVD

DVDをみんなで鑑賞する

(7)アメリカの音楽の感想を送る (3月8日)
 アメリカから送られたビデオを見た子供たちの感想を、全員分英語に訳してメールで送った。

DVDを見ての感想(右は児童Aのもの)

成果と今後の課題 

(1)子供たちの交流活動についての感想
○ 日本国内でなく、アメリカの人たちと交流できたのはすごいと思った。
○ 日本とアメリカは遠く離れたところにあるけれど、インターネットを使えばいろいろと教え合えるのでいいと思った。
○ アメリカの子供たちも日本の音楽を聴いてくれて、アメリカの音楽を教えてくれたので、歌で仲良くなれるとは思わなかった。
○ 英語でよく分からなかったけれど、歌を聴いていると楽しくなってきた。
○ がんばって歌った曲が、外国まで届いてよかったと思った。
○ アメリカ以外の国とも音楽交流をしてみたくなった。
○ 音楽だけでなく、総合の授業などでも離れた所に住んでいる人たちと交流したい。

(2)成果
○ インターネットを使って地球規模で交流ができることを、児童に実感させることができた。
○ 言葉が通じない相手とも、音楽を媒体にして交流を楽しむことができた。「音楽は世界の共通語」ということを、知らせることができた。
○ アメリカ独特の音楽に直に触れることができた。ブルーミュージックやアメリカのフォークソングを聴いたり、送ってくれた楽譜を頼りに自分たちが演奏したりすることができた。

(3)課題
○ 今回はたまたま帰国子女がいたので、交流の必然性も生まれた。また交流相手に恵まれ、アメリカのR Family一家や親戚・知人を巻き込んで、楽譜送信や演奏ビデオ作りで協力していただいた。今後このような交流をするならば、どのようにしてきっかけを作り交流相手を探すかが課題である。


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