交流実践紹介 県立学校交流

テレビ会議システムを活用した交流 part3
愛知県立豊田高等養護学校
 
 本校は比較的軽い知的障害のある生徒たちを教育する産業科の高等養護学校である。校訓は「勤勉・感謝・自立」であり、その意味は次のとおりである。
勤勉・・・まじめに学習し、何事も持続して行うことができる力をつける。
感謝・・・思いやりと優しさをもち、感謝の気持ちで人に接する。
自立・・・勤勉な態度と感謝の気持ちを支えとして、職業自立することを目指す。
 教育目標は、「社会自立」と「職業自立」で、毎年ほとんどの生徒が事業所に就職をしている。また、卒業後も「つばさ会」という組織があり、各地域においてジョブコーチを中心に卒業生の相談を受ける体制も確立されている。
 さて、本校の交流としては老人会やこども園との地域交流は盛んに行っている。しかし、学校間交流については、部活動の練習試合以外にはほとんど行われていない。
 そこで、テレビ会議システムを活用した交流としては、各種の学校を相手に取り組むこととした。一昨年(1年目)のテレビ会議システムにおける交流では、本校1年生と安城農林高等学校農業クラブとの交流を行った。生徒の感想としては、「緊張しながらも、楽しかった。便利だと思う。またやってみたい」が多かったが、課題としては、「機器の設定と操作の難しさ。生徒の目的の不明確さ」があげられた。
 昨年度(2年目)については、「より楽しい交流」を目指し、女子バスケットボール部と阿久比町立阿久比中学校(特別支援学級)との交流を行った。両校の学校紹介、自己紹介を行った後、阿久比中学校の生徒から本校生徒に対しての質問に応える形で進行し、打ち解けた後はお互いのパフォーマンスで盛り上がるというハプニングも見られた。
 そして、今年度(3年目)は、本校と県立港養護学校及び第49回愛知県総合教育センター研究発表会会場とを結んで行った交流及び共同学習の実践を報告する。

豊田高等養護学校の実践

1 交流計画
時  期 内    容
5月 第1回参加・交流部会において、センター研究発表会について検討
9月 テレビ会議室においてテレビ会議を行い、センター研究発表会の方向性を検討
テレビ会議システムを活用し、本校と港養護学校、総合教育センターを結び、センター研究発表会で発表することを決定
10月 港養護学校とメールにて交流内容の打合せ(4回)
11月 第2回参加・交流部会において、センター研究発表会の詳細打合せ
リハーサル(交流2日前)
交流当日(センター研究発表会)本校、港養護学校、総合教育センター
を結んで3元中継を実施

2 交流の実際
(1)使用機器

 本校視聴覚室を会場に交流のための機器のセッティングを行った。
 ・ノートパソコン
 ・デジタルビデオカメラ2台(撮影用と記録用)
 ・三脚
 ・外部スピーカー
 ・プロジェクタ
 ・スクリーン
 ・マイク
 ・マイクスタンド
 ・延長コード


(2)交流内容

 両校の職業教育(作業学習)を中心にした学校紹介を行った後、お互いに質問をすることで、和やかな雰囲気での交流となった。
 ア 学校(作業製品)紹介

 「こんにちは。豊田高等養護学校3年生男子ばかり9名です。ぼくたちは、3月に学校を卒業し、会社で働くことを目指して毎日勉強に運動に頑張っています。今から7種目の作業製品の紹介をしますので、よろしくお願いします」と学級代表があいさつした。
 以後、本校と港養護学校が交互に作業についての紹介を行った。

 イ 両校の質問事項

(ア)港養護学校からの質問

 ・作業でけがをしたことはありますか。
 ・一番好きな製品は何ですか。
 ・厳しい先生はだれですか。

(イ)本校からの質問

 ・児童生徒数は何人ですか。
 ・どのように通学していますか。
 ・作業は何時間ありますか。
 ・将来何になりたいですか。


テレビ会議の様子(動画)
上の画像ををクリックして再生
交流後の生徒の感想【本校8名、港養護学校11名】
(1)交流は楽しかったですか。 
         
   【本校】はい:8名 【港養護学校】はい:11名
   理由:相手の反応が見えて楽しかった。

(2)インターネットを使った交流は便利だと思いますか。

   【本校】はい:8名 【港養護学校】はい:11名
   理由:慣れた場所から話ができるのであまり緊張しなかった。

(3)もう一度テレビ会議システムを使った交流をしてみたいですか。

   【本校】はい:7名 【港養護学校】はい:11名
   理由:思っていたよりも楽しかった。
   【本校】いいえ:1名
   理由:知らない人たちと話すことは好きではない。

(4)次回はどんな交流をしてみたいですか。

   ・校内の部活動間で話したい。
   ・他校の授業の様子を見てみたい。
   ・他校の同級生と一緒に勉強がしたい。
   ・プロサッカー選手の練習の様子が見たい。
   ・母校の中学校の後輩と交流がしてみたい。
   ・芸能人(アイドル)と話してみたい。
   ・他県の人たちと話したい。
   ・アメリカ人(ニューヨークの人)と英語で話したい。
   ・世界の人たちと食べ物について話したい。
   ・テレビ局との交流がしたい。
成果と今後の課題 
(1)成果

 機器の設定や操作については、これまでの2年間の経験を生かすことができ、ほとんどトラブルもなくリハーサルから当日を迎えることができた。また、当日も接続の状態が1時間を超える程であったが、切断することなくテレビ会議を継続することができた。これは、新しいテレビ会議システムと3年間の取組の成果である。
 交流としては、障害の違う生徒たちではあったが、ほとんど抵抗感を感じることなく取り組むことができていた。これは、生徒の感想にもあったように、コミュニケーションに課題が多い本校生徒にとっては、やはり相手の姿が見えることで、比較的安心して話ができるテレビ会議ならではの成果である。
 また、生徒たちのほとんどがパソコンの操作経験があり、コンピュータを使った交流にも興味をもつことができた。そして、テレビ会議システムを使った交流に参加したことで、遠隔地の人たちと交流ができることを知り、校内はもちろんのこと、出身中学校やプロスポーツ選手との交流など、生徒の交流及び共同学習への興味はますます高まっている。
 
(2)今後の課題

 ア 機器の設定について

 3年間取り組んだことで、システムや機器の操作に慣れたことが今回の成功につながった。したがって、より広く活用していくためには、より分かりやすいマニュアルの作成が求められる。

 イ 交流日時の設定と継続性について

 今回は特別支援学校間の交流ではあったが、教育課程の違いにより本校の生徒はリハーサルを行うことができなかった。交流日時の設定については、毎年課題として挙げているが、両校の理解と校内の協力体制は不可欠である。

 ウ 愛知エースネットを超えた交流の可能性について

 テレビ会議システムを利用して、生徒の期待感は高まってきた。現在は県外の特別支援学校にテレビ会議の依頼をしてはあるが、実践できるまでには至っていない。今後も県内のテレビ会議を使った交流を積み重ねることにより、利便性・有効性を報告することで、県外の学校との交流の実現も近づいてくるのではないだろうか。
  

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