交流実践紹介 海外との交流

海外日本人学校との交流
新城市立千郷小学校

 本校の5年生を1〜3年生の3年間担任し,昨年度より南米パラグアイのアスンシオン日本人学校に勤務する教諭が,1学期末に日本へ一時帰国をした。これを契機に,子どもたちの活動の様子を届けたり,先生の近況を通して,海外の日本人学校の様子を伝えてもらいながら,児童に広い視野をもたせ,そして,新しい学習活動に結び付けられないかと考えた。
 そこで,今年度については,メールを用いた交流を行うことにした。

1 交流計画の計画
時 期 内   容 
7月 交流相手(パラグアイ・アスンシオン日本人学校 教諭)
交流学年担当者(本校5年生担任)との打ち合わせ
 
9月
学校訪問のお礼と,運動会の様子を見てほしいという依頼
日本人学校からの返事
10月 メールのお礼と,稲刈りや学習発表会の報告
11月
日本人学校からの返事
12月 交流のお礼など
2 交流の対象
 本校の5年生(4クラス120名)と,アスンシオン日本人学校
3 交流の実際
(1)交流の方法

 メールを利用しての手紙のやり取りを基本とした。今回は,4つのクラスが1クラスずつ順番に手紙を書くこととし,教諭には,特定のクラスにあてた返事ではなく,全てのクラスに分かるような内容の返事をいただくやり取りを依頼した。このことで,すべてのやり取りを5年生全員で共有でき,同じ質問や回答を繰り返すことのないようにした。

(2)注意点

 子どもたちが個々にメールを送ると,交流相手に迷惑がかかってしまう。そこで,子どもたち一人一人がメールを送るのではなく,学級単位で手紙を取りまとめ,送信することにした。また,添付ファイルのサイズが無駄に大きくならないように留意した。


(3)交流の様子


 <1回目> 9月  5年松組の手紙
 教諭が来校してくださったことへの感謝の気持ちと,運動会で初めて挑戦する組み立て体操の様子を,是非,ウェブページで見て欲しいというお願いを中心に手紙を書いた。子どもたちの手紙は文書作成ソフトで作成し,メールに添付して送った。
 教諭からは,早速返事をいただけた。その中には,ウェブページで運動会の様子を見た感想なども書いてあった。その返事の文面は,今回手紙を送ったクラスだけでなく,5年生全員(4クラス)に紹介した。


 <2回目> 12月  5年竹組の手紙
 2回目の手紙は,10月に送る予定が大幅に遅れてしまい,実際に送ることができたのが12月になってしまった。今回は,自分たちで収穫したお米を使って五平もちを作った様子や学習発表会の様子,授業の様子などを主に書いた。今回も子どもたちの手紙を文書作成ソフトで作成し,それに写真も貼り付けて送った。

 <3回目> 12月  5年梅組の手紙
 クリスマスや正月を控え,児童の手紙の内容は,日本との習慣の違いを質問するものが多かった。今回は,子どもたちが書いた直筆の手紙を送りたいと考え,スキャナで手紙を取り込み,メールに添付した。
 教諭からも,大変うれしかったと,直筆の手紙が返信された。その返信は,こちらの3学期始業式に合わせた時期に届き,子どもたちは,大喜びであった。さらに,子どもたちの質問にも丁寧に答えていただいていた。

 <4回目> 1月  5年雪組の手紙
 教諭への手紙の最終回となった。手紙を書く直前,当地方にしてはめずらしく雪がたくさん積もり,子どもたちは雪合戦を楽しんだ。また,書き初めに取り組んだ様子も含め,手紙を書くことにした。今回もスキャナで手紙を取り込んた。
 教諭からの手紙には,アスンシオン日本人学校での総合的な学習の時間に,現地の昆虫を調べているグループのことが書かれていて,子どもたちは,その様子を伝える手紙に掲載されていた珍しいパラグアイの昆虫の姿を見て,とても興味深く読んでいた。また,年度末に向けて,6年生になる子どもたちへの励ましの言葉もいただいた。
   
写真1 教諭へ手紙を書いている様子 写真2 日本人学校の学習発表会の様子
   
   
写真3 児童に紹介された写真@
(マンゴーの木の実)
写真4 児童に紹介された写真A
(パラグアイの珍しい昆虫)
   
成果と課題 
(1)交流した児童と教諭の振り返りを通して

 交流を終え,日本人学校の教諭から次のようなご意見をいただいた。
個人的には,千郷小学校で最後に担任した子どもたちから手紙がくるのはうれしい。ただ,うれしさだけで終わってはもったいない。これまで,返信の際には日本とパラグアイの違いについて,できるだけ伝えるようにしてきた。子どもたちからの質問も,そういったことが多かったように感じる。今後は,そのことに関して,さらに理解を深めていけるような交流になればいいと考えている」
 今回の実践では実現できなかったが,一般的に,国際交流では,相手を理解してコミュニケーションできるようになることそのものを目的とする交流もあるし,お互いの地域を舞台にした学習活動の経過を報告し合い,話合いによってそれぞれの学習を進める実践もある。また,調査方法や具体的な行動のフォーマットを決めておいて,その結果を学習の共通テーマにして,レポートの共同制作や会議を開催するなど,具体的な目標を決めて活動する学習が考えられる。
 実際,本校の児童に
交流後のアンケートをしたところ,パラグアイについて興味をもった児童が,半数以上いた。特に,手紙に書かれていたパラグアイの自然や生活の様子に目を向ける児童が多かった。今回の交流が,日本と地球の反対側にある国に興味をもつ契機になり,さらなる学習活動の可能性を感じている。
 
(2)今後の課題

 今回は,海外の日本人学校に赴任した教員と交流するという,大変貴重な機会を得た。今後,可能ならば,子どもたち同士の交流に発展させたい。
 交流相手の教諭からは,「
こちらに住んでいる子どもたちも,日本の学校について大変興味をもっているので,今後,タイミングが合えば,子ども同士の交流ができたらうれしい(負担にならない程度に)」とのご提案をいただいた。来年度は,相手校が承諾してくだされば,そのような交流実践に発展させたい。
 また,本校の児童からは,「メールだけでなく,テレビ会議をやってみたい」という意欲的な意見も出た。海外とのテレビ会議については,現在の環境で実施するのはいくつか課題もあるが,動画ファイル等を活用することもあわせて,どのような交流方法ができるか,検討してみたい。


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