交流実践紹介 特別支援学校間交流

〜テレビ会議システムを利用した交流活動及び共同学習〜
愛知県立ひいらぎ養護学校

 
本校は,平成16年に開校した県内で8校目の肢体不自由養護学校である。開校当初より,同一敷地内にある半田高等学校や,道路一本を隔てたところにある半田農業高等学校と日常的に交流及び共同学習を行っている。このような活動を通して,同じ社会の一員として生きるノーマライゼーションの理念の実現を図っている。
   ところで,日常的に交流学習が根付いている本校ではあるが,テレビ会議システムを活用した交流は初めてである。テレビ会議システムは,離れた場所にいる相手と容易にコミュニケーションをとることができる。身体に障害がある本校の生徒にとって,教室に居ながらにして,離れた場所にいる他の学校の生徒と交流ができる環境は,交流学習の新たな可能性を見いだすよい機会であると考えている。
 今年度は,県立みあい養護学校高等部1年生と,本校高等部1年生の交流を計画し,実践を行ったので報告する。

1 交流計画の計画
時 期  内   容
 8月 テレビ会議システムを活用して,みあい養護学校との交流活動を実施することを担当者間で検討
 9月 交流計画立案
管理職会提案
 10月 学年会(1年)提案
 11月 高等部会提案 みあい養護学校との接続テスト
交流事前指導
 12月 第1回交流  自己紹介,学級紹介
第2回交流  学校紹介,授業及び行事の紹介
2 交流の対象
 本校高等部1年生(6名)と,みあい養護学校高等部1年生(26名)
3 交流の実際
(1)交流事前指導
 ア 使用機器
      ノートパソコン     2台
       ウェブカメラ        2台

      
 マイク        1台
        大型テレビ         1台
      インカム           1台

 イ 指導の実際
    ・ ウェブカメラを使って,県立みあい養護学校と交流を行うことを知る。
     ・ 第1回目のテーマである自己紹介の内容を考える。
     ・ 実際にカメラに向かって話す練習をする。相手に分かりやすく伝えるには,どの
    ような話し方をしたらよいか,自ら考える。
 ウ 生徒の様子
     ・ 生徒によっては,自宅で,最近普及してきているIP電話サービスを使用して生徒
    同士で通信をしていて,パソコン操作に対する不安は全くなかった。

     ・ 画面に映る相手とリアルタイムでやりとりができるので,生徒たちは興味や関心
    をもち,当日に向けての意欲も高まった。

     
・ カメラの向こうの相手に分かりやすく伝えるには,ゆっくりと大きな声で,適度
    な間をとって話す必要があることなどに気付いた。

(2)第1回交流  12月1日(水) 13:15〜14:15
 ア 使用機器
        ノートパソコン   1台

        ウェブカメラ        1台

        マイク         1台

        大型テレビ         1台
 イ 内容

   
・ 先方のみあい養護学校の生徒1名が,司会を担当した。
   ・ 本校の生徒は,教室に集まり,大型テレビの前で,司会進行に合わせて交互に自
    己紹介及び学級紹介を行った。

  
 ・ 全員の自己紹介が終わった後,お互い自由にコミュニケーションをとれるフリー
    タイムの時間を設けた。

 
ウ 交流の様子
     ・ 事前指導の成果によって,カメラの前では,ゆっくりと大きな声で話す生徒が多
    かった。言語が不明瞭な生徒は,自作のテロップを使って話したいことを伝えて
    いた。
     ・ はじめはお互いにややかしこまった雰囲気であったが,交流が進むにつれて,笑
    い声が聞こえたり,歓声が上がったりして打ち解け合っていった。
     ・ フリータイムでは,伝えきれなかったことを話したり,質問したり,パフォーマ
    ンスを披露したりして,楽しく過ごすことができた。
  エ 生徒の感想

     ・ 「カメラを見て大きな声で話をすることはできたけど,緊張して表情を明るくし
    て話すことができなかった」

     ・ 「落ち着いてゆっくり話すことができた」
     ・ 「自分では伝えられているつもりでも,はっきりと話さないと通じにくいことが
    分かった」
     ・ 「発表の後,フリートークで盛り上がったので,とても楽しかった」
 
   
 写真1 交流校の発表を見ている様子  写真2 自己紹介をしている様子

(3)
第2回交流  12月15日(水) 13:15〜13:55
 ア 使用機器
      パソコン     2台

      ウェブカメラ      2台
      マイク       2台
      スピーカー        2台
 イ 内容

     ・ 本校の生徒が司会を担当して交流を進めた。本校の生徒は,一人一人が一つずつ
    のテーマで発表を行った。発表内容はひいらぎピック(運動会),ひいらぎフェ
    スタ(文化祭),作業学習の様子,本校の施設紹介などであった。
 ウ 交流の様子
     ・ 一度経験したことにより,前回よりも落ち着いて話すことができた。
     ・ 学校紹介や行事の紹介の際,写真を使用した。しかし,カメラで写真を映すのが
    難しく,きれいに映らなかったことがあった。
 エ 生徒の感想
     ・「2回目なので,前よりは落ち着いてできた」
   ・「司会は緊張したけど,しっかり行うことができた。でも司会に集中しすぎて,自
        分の発表ではしくじってしまい,悔しかった」

     
・「決まった時間内に,自分の伝えたいことをしっかり伝えることができた」

   
 写真3 行事の紹介をしている様子  写真4 交流後のフリートークの様子

(資料)交流事前・事後アンケート

 成果と課題 
(1)機器の環境整備
   ・ 機器の接続,テレビ会議システムの設定及び操作には慣れが必要であるので,教員
   が日頃から授業等で使い慣れておく必要がある。
   ・ 交流相手の画面を大型テレビ(50インチプラズマテレビ)に映したため,相手の顔
   をはっきり見ることができた。
   ・ ハウリングを防ぐために,発話するときに,マイクを手動でONにする設定が望まし
      い。また,スピーカーのボリュームも小さめにするか,マイクとスピーカーの位置
      を離すなどの配慮が必要である。
   ・ 本校は,各教室に有線LAN の端子が整備されており,教室でのインターネット環境
      は比較的安定している。しかし,時間帯によってはサーバがビジーになることがあ
   り,通信速度が低下することがあった。

(2)肢体不自由養護学校での活用
   ・ 日頃から交流学習が活発な本校であるが,テレビ会議システムを活用した交流は初
      めての経験であった。このシステムにおいては,遠く離れた場所にいてもリアルタ
      イムでコミュニケーションがとれるので,興味をもって取り組むことができた。
   ・ 実際に相手を目の前にしておらず,バーチャルな交流であるので,そのことを理解
      できない生徒にとっては,誰と話しているのか分からないこともあった。
   ・ 一般に,身体に障害がある生徒たちは活動の範囲が狭くなりがちであり,本校の生
      徒も例外ではない。しかし,パソコンの前に居ながらにして,外の世界と交流でき
   るこのシステムは,使い方によっては大きな可能性を秘めている。次年度以降も,
   継続して取り組み,生徒の主体的な学習活動に活用していきたい。
 

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