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テレビ会議システムを利用した交流及び共同学習
ウェブカメラを活用した交流活動の実践
愛知県立ひいらぎ養護学校


   昨年度から,テレビ会議システムを使った交流を本校高等部と県立みあい養護学校高等部との間で行っている。このシステムを使うことにより,身体に障害があり,行動範囲が限られてしまいがちな本校の生徒であっても,離れた場所にいる人と容易にコミュニケーションをとることができ,生徒にとって生活経験を広げるよい機会になっている。
 今年度は,本校高等部の2年生が「愛知県青年の家」(みあい養護学校と隣接している)に野外活動で訪れる機会を利用して,テレビ会議システムで交流を行っている生徒同士が,現地で直接会い交流を深めることにした。


1 交流の計画

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時 期

内  容

5月

みあい養護,ひいらぎ養護の担当者で,今年度の交流について確認

7月

担当者間で打合せ,部会提出,運営委員会提出

9月

第1回テレビ会議交流
野外活動に出向いた際に,「愛知県青年の家」で直接会って交流

12月

第2回テレビ会議交流

2 交流の対象

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 本校高等部第2学年1組(6名),県立みあい養護学校高等部2年1組(8名)

3 交流の実際

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1 第1回テレビ会議交流 9月8日(木) 午後1時30分〜午後2時20分まで
(1)使用機器
   ノートパソコン 1台
   ウェブカメラ  1台
   マイク     1台
   大型テレビ   1台
(2)内容
 ・自己紹介
 ・野外活動についての情報交換
   みあい養護学校 :7月に行われた野外活動についての発表
   ひいらぎ養護学校:次週に行われる野外活動の計画についての発表
   最後に,「愛知県青年の家」で会うことを約束
 ・お互い自由にコミュニケーションをとれるフリータイム
(3)交流の様子
 ・昨年も経験している生徒なので,どの生徒もカメラの前でゆっくりと大きな声で話す
  ことができていた。
 ・自宅でskype を使っている生徒はウェブカメラに慣れているので,話すタイミング,
  速さ,立ち位置を確認することなどを友達にアドバイスしたりしていた。
 ・最初は久しぶりの交流のせいか,やや緊張した雰囲気であったが,お互いに発表しあ
  っているうちに徐々に打ち解けていった。野外活動で行うダンスを披露した際は,み
  あい養護学校の生徒も音楽に合わせて踊っていた。
 ・フリータイムでは,お互いにたくさんの質問が出て楽しく交流することができた。

テレビ会議システムの画像 交流の様子

2 「愛知県青年の家」での交流  9月15日(木) 午後1時から午後1時30分まで
(1)内容
 ・本校生徒が愛知県青年の家に到着後,昼食の機会を利用して,みあい養護学校の生徒
  と現地で交流を行った。
(2)生徒の様子
 ・カメラで話したみあい養護学校の生徒と直接会って,少々戸惑っている生徒もいた。
  実際に会って話す場面ではかなり緊張していた。
 ・時間が経つにつれ,カメラを通じて話したことなどを話題にしながら,双方が話し合
  えるようになってきた。
 ・10月に行われる全国障害者スポーツ大会に選抜された選手が両校にいたので,お互い
  に健闘を誓い合った。
(3)その他
 ・後日,このとき撮影した記念写真を使ってお互いにメッセージカードを作り,双方に
  送付した。
 ・当日,本校が「愛知県青年の家」へ向かう道中に渋滞に巻き込まれ,到着が大幅に遅
  れてしまった。しかし,みあい養護学校の生徒が時間を調整し,会いに来てくれた。
集合写真 メッセージカード

3 第2回テレビ会議交流 12月15日(木) 午後1時30分から午後2時20分まで
(1)使用機器
   パソコン   2台
   ウェブカメラ 1台
   マイク    1台
   大型テレビ  2台
(2)内容
 ・「愛知県青年の家」に会いに来てくれたことへのお礼
 ・行事についての発表
   みあい養護学校 :11月に行われた「みあいフェスタ」についての発表
   ひいらぎ養護学校:9月に行われた野外活動及び11月に行われた「ひいらぎフェス
            タ」についての発表
 ・フリータイム
(3)交流の様子
 ・カメラの前で話すときは,ゆっくり大きな声で話すことはもちろん,回線が途切れた
  ときや,話したことが相手に伝わっていないことが分かったときなどは,もう一度言
  い直すなど,生徒が自分たちで考えて対応していた。
 ・前回とは教室のレイアウトを変更し,行事の紹介の際,大型テレビをもう一台背後に
  設置し,写真を映しながら発表を行った。これによって分かりやすい発表になった。
 ・フリータイムは前回同様盛り上がり,時間を延長して行った。
交流の様子@ 交流の様子A

4 生徒の感想

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(1)今年度のテレビ会議交流の感想
 ・12月の交流では司会を担当した。ちょっと戸惑ったけど,大きな声で司会ができた。
 ・フリータイムの質問は,突然振られて,何を聞いていいか困ってしまったけど,何と
  か自分で考えて質問をすることができた。
 ・行事の紹介のときは,ゆっくりと,はっきりと,聞いている人が分かってくれるよう
  に意識しながら話そうと思っていた。それができてよかった。
 ・いつもはうまく質問することができないけど,今年はうまく質問することができてよ
  かった。
 ・みあい養護も元気でよかったけど,こっちも元気に負けずにやれたと思った。
(2)昨年と比べてどうだったか
 ・大きな声で発表できたし,自然に話をすることができた。
 ・去年は緊張してあまり話すことができなかったけど,野外活動のときに実際に会って
  みて,みあいの生徒のことがよく分かったので,よかった。
 ・去年も楽しかったけど,今年も楽しかった。違う学校の友達としゃべれることは楽し
  い。
 ・去年より会話の機会が増えたので,来年もできたらどんどん話をしたいと思う。
 ・去年はみあいの人たちの元気さに圧倒されたけど,今年はなんとか話すことができて
  よかった。

 

5 成果と課題

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(1)成果
 ・テレビ会議システムは画面を通じてお互いの顔を見ながら,リアルタイムで双方向の
  やりとりができる。今年は昨年度よりも,生徒同士があたかも直接会って話している
  かのようにコミュニケーションをとることができていた。
 ・今年度は,昨年度から続くテレビ会議交流に加え,交流相手と直接会って話をする機
  会を設定した。直接会った際は緊張してしまった生徒もいたが,テレビ会議交流のと
  きに話したことなどを話題にし,比較的スムーズにコミュニケーションをとることが
  できていた。
 ・本校の生徒は,初対面の人やあまり慣れていない人と話すのは苦手な傾向にある。そ
  のような生徒たちが,テレビ会議交流で知り合った人と会えることに対し,「楽しみ
  にしている」「会って直接話をしてみたい」という積極的な気持ちになった生徒が多
  かった。以前より動じない,臆しないといったような社会性が身に付きはじめている
  と思われる。
 ・お互いに自由に話せるフリータイムでは,生徒たちはその場で質問を考えて問いかけ
  たり,質問されたことに答えたりするなど臨機応変に対応し,積極的にコミュニケー
  ションをとることができていた。これまで繰り返し実践してきた成果が,ここにきて
  大きく出てきたように感じる。
(2)課題
 ・ハウリングを起こさないための工夫が必要である。軽減策として,発話するときのみ
  キーボードを押してマイクをオンにし,発話していないときのハウリングをなくすよ
  うにしている。

 ・機器の性質上,音飛びや回線の途絶えがどうしても生じてしまう。しかし,生徒たち
  がそのことに気付き,対応することができていたのは頼もしい限りであった。

 ・本校は各教室に有線LAN の端子が整備されており,教室でのインターネット環境は比
  較的安定している。しかし,時間帯によってはサーバの反応が悪くなることがある。

 これまで,2年にわたってみあい養護学校との交流学習を行ってきた。その中で,生徒たちのこのシステムへの習熟は目を見張るのもがあり,また,交流の内容への関心,興味も高く,非常に積極的に取り組んでいる。今後もお互いの生徒同士の情報交換などの活動を基本に,コミュニケーション能力,社会性の向上に向けた実践ができるとよいと考えている。


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