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バンコク日本人学校との授業交流
- タイ語の授業を通して -
豊明市立沓掛小学校

   新しい学習指導要領では,学校の教育活動全体を通じて,児童がその視野を広げ豊かな人間形成を図るように指導することが求められている。しかし,例えば海外へ目を向けてそれらについて学ぼうとするとき,実際には非常に興味があるものの,学校の外国語活動で英語に触れる程度で終ってしまっている。
 そこで,身近に海外の生活や文化に触れることができる手段として,インターネットによるテレビ会議システムを使うことで,これらの改善を図ることができると考えた。今年度の取組としては,バンコク日本人学校の協力を得て,主にタイ語を通して異文化に触れながら視野を広げ,さらに児童の情報リテラシーやコミュニケーションスキルも向上させることができるであろうという視点から,研究を進めることとした。


1 交流の計画

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時 期

内  容

5月

知り合いの先生を通じて,バンコク日本人学校への協力依頼開始の条件を整える
6月 バンコク日本人学校から協力の了解を得る
システムの構築開始
7月 バンコク日本人学校との接続テスト成功
第1回テレビ会議によるタイ語担当教員との打合せ
8月 授業日程の調整作業

9月

タイ語授業日決定

10月

タイ語の授業指導案作成
授業内容検討,及び,事前アンケート作成

11月

本校児童に事前アンケートと実施
タイ語の授業の事前オリエンテーション

12月

第2回テレビ会議によるタイ語担当教員との打合せ
テレビ会議によるタイ語の授業交流
感想文・お礼の手紙作成
1月 バンコク日本人学校へお礼の手紙を郵送

2 交流の対象

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 本校4年生とバンコク日本人学校のタイ語教員

3 交流の実際

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(1)システム構築と接続テスト(6月)

   
海外の学校との授業交流を行うにあたって,テレビ会議システムがスムーズに運用で
 きることが必要不可欠である。近くの学校であれば,相手校に行ってシステムの構築の
 手助けもできるが,相手が海外だけに容易に行き来することはできない。万全の体制で
 授業を行うために,相手校へはこちらからウェブカメラを郵送し,さらに,システム構
 築の手順を細かく指示した。その後の接続テストは,無事に終えることができた。

(2)タイ語の授業内容検討及び事前の打合せ(11月)

  タイ語の授業を行うに当たって,児童にどのような言葉を学習させるかについて相手
 校の教員と授業内容を検討した。小学校4年生の外国語活動の英語では,挨拶等の日常
 的な会話を中心に授業を行っている。そこで,タイ語での挨拶が身に付けば,英語との
 違いやタイ語独特の表現の違いから,理解がスムーズに進むのではと考えた。
  そこで今回は,「挨拶」及び「1〜10までの数字」を理解させることを中心にして授
 業を組み立てた。

(3)テレビ会議システムを利用したタイ語の授業(12月)

  日本時間の12月20日(火)13:45〜14:30 に授業を実施した。概要を以下に示す。

   1 お互いの言語で挨拶,自己紹介
   2 タイ語の学習(日常的に使う挨拶と自己紹介の方法)
   3 相互から質問(タイに関すること,日本に関すること)
   4 お礼の言葉

  今回タイ語を指導していただく教員は,日頃から日本人学校でタイ語を教えているこ
 とから,日本人に適した指導方法を熟知している。そのため,児童らは,全く体験した
 ことがない言語であってもスムーズに学習することができた。また,お互いへの質問に
 ついても,事前にアンケートを取り,質問に対する返答を考えて臨むようにしたことで
 当日は滞りなく進行することができた。
  テレビ会議システムを利用することで,児童にとっては,生の言語をタイムリーに体
 験することができ,大変意義のある授業となった。

4 交流の様子と交流前後の変化

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 写真1 授業の打合せ  写真2 タイ側の様子
   
 写真3 本校での授業風景  写真4 本校での授業風景

◇交流前の状況と交流を終えての感想 〜交流前,後アンケートから〜

 <交流前>
  授業を受ける前の事前アンケートでは,海外に興味がある児童が多いものの,英語以
 外の外国語に触れる機会がある児童は皆無であった。また,4年生児童では,日本以外
 の国々の情報は乏しく,タイの国の位置も分かっていなかった。そこで,英語以外の外
 国語に触れることで,児童の視野を広げ,世界に目を向ける児童が増えることを期待し
 つつ,授業実践を行うことにした。
  今回,タイ語を選択した理由は,授業者自身が過去にバンコク日本人学校での勤務経
 験があり,その様子が多少なりとも分かっていることで,授業交流が可能であると判断
 したからである。


 <交流後>
  授業後の児童からは,
   ・「同じ時間に離れた外国の先生と授業が行えて不思議な感じがした。けれど,楽
    しかった」
   ・「タイ語のあいさつは,日本語みたいに複雑でなくよく分かった」
   ・「男の子と女の子で語尾の使い方に違いがあるのにびっくりした」
 などの感想があがった。また,身近に外国を感じることができたようで,
   ・「タイのことを調べてみたい」
   ・「タイに行ってみたい」  
 などの感想があり,外国に興味を示す児童が増えた。

      

 成果と課題

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 今年度については,前半は日本人学校との事務手続きに追われ,交流を受諾していただいてから接続テストを行うまでに,かなりの時間を要した。その接続テスト(6月)を終えてから授業の構想を考えたこともあり,授業実践は1回にとどまった。しかし,テレビ会議システムを利用することで,非常に多くのことを学ぶことができ,今後の新たな授業形態の一つとして確立ができる手ごたえを感じることができた。
 来年度の研究に向けて,本年度の成果と課題をまとめておきたい。


<研究の成果>
  今回の実践を通して,児童の視野を広げる手助けができたことは大きな成果と言える。
特に,英語しか触れたことがない児童が,全く知らない言語に接することで外国の文化を身近に感じさせることができた。
 また,日本で日本人の教員が外国のことを教えることとは違い,外国に在住している先生から生の言語,文化を学習することができた点は,児童にとって貴重な体験になった。


<研究の課題>
  授業実践を行うまでの下準備に大きな労力を要した。特に,研究の対象がタイのバンコク日本人学校であることから,システムの構築や不具合が生じた場合の対応が速やかに行えないことがあった。
 インターネットの回線の不具合で不通になることはなかったが,今年のタイ全土の天候不順など,遠方にあるがゆえに,授業実践そのものが困難になることも予想される。機器の調整には万全の準備が必要である。さらに,相手校のパソコンがタイ語仕様のパソコンであったため,会議システムの画面が文字化けしてしまい,使用の手順を説明するのに大変苦労した。日本では起こり得ない事態があるものだと,つくづく感じた。

  以上,苦労した点がいくつか挙げられるものの,リアルタイムで海外と交流ができることは,学校にいながら児童の視野を広げ教育効果を上げることが期待できる。現在,外部講師等を招いて授業を実践する学校が増えてきているが,テレビ会議システムを使った授業を行うことで,新たな授業形態を確立できるであろう。今回の実践は,今後の授業の在り方の一つを示唆する研究になっていくと考えている。
  来年度については,授業実践を増やし,より大きな教育効果が上げられるように研究を進めていきたい。


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