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商業高校インターアクトクラブとの交流
生徒が作り上げる交流を目指して
愛知県立豊橋養護学校

   本校高等部では,以前から豊橋商業高校と交流活動を行っており,特にインターアクトクラブとは,年3回の交流会を実行委員の生徒が中心になって企画して行っている。しかし,両校は地理的な距離も多少あり,タイムテーブルや本校の通学事情等により,両校の実行委員が直接顔を合わせて企画会議を行うことは困難で,職員によるメールや電話での連絡による調整が,実質の企画会議になっていた。
 そこで今年度は,距離の離れた相手と顔を見ながらリアルタイムで会議ができるテレビ会議システムのメリットを生かし,両校の実行委員同士が,直接意見交換をしながら行う企画会議を計画した。テレビ会議システムを利用することで,生徒同士で交流活動を作り上げる実感が高まり,交流会当日の活動が,より充実するのではないかと考えた。


1 交流の計画

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時 期

内  容

6月

交流校への研究協力の依頼と研究内容の説明

8月

機器設置及び使用方法・留意点の説明

9月

職員同士によるテレビ会議リハーサル(接続確認)と設定等の微調整

10月

交流実行委員によるテレビ会議システムを利用した第1回交流企画会議
(顔合わせ,第2学期交流会の大まかな内容確認,次回企画会議期日決定)

11月

交流実行委員によるテレビ会議システムを利用した第2回交流企画会議
(第2学期交流会の企画検討,準備するもの等の確認)

12月

本校での第2学期交流会(クラス別交流)
実行委員による反省会(反省及び次回交流会の企画担当と企画会議期日の検討)

1月

交流実行委員によるテレビ会議システムを利用した第3回交流企画会議
(第3学期交流会の企画検討,準備するもの等の確認)

2月

本校での第3学期交流会(全体交流)
実行委員による反省会(反省及び次年度に向けての交流計画検討)

2 交流の対象

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 本校高等部と,豊橋商業高等学校(インターアクトクラブの生徒)

3 交流の実際

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(1)テレビ会議システムを利用した企画会議(10,11月,1月)

 ○使用機器
  Meeting Plazaを利用可能なパソコン及びウェブカメラ,マイク,大画面テレビ(両
 校1台ずつ)


  ○実践の様子
  
実践を行うに当たり,両校のタイムテーブルや本校生徒の下校事情に合わせ,交流企
 画会議(以下,企画会議)の時間を午後3時半から30分程度に設定した。テレビ会議を
 利用するのは初めてということで,第1回の企画会議は画面を通じて相手と話し合うこ
 とに慣れることを目標にした。
  実際の会議では,第1学期の交流会で一度顔を合わせているものの,改めて一人一回
 ずつ画面(カメラ)に向かって自己紹介を行い,実際に声を出す体験をした。会議が始
 まる前は緊張してそわそわしていたものの,一通り終わる頃には,しっかりと声が出せ
 るようになっていた。
  その後,11月の第2回の企画会議において,2学期の交流会の具体的な内容や準備に
 ついて話合いを行った。両校の3年生は,この交流会が最後の交流会となるため,前年
 度と同様に,交流会の最後に行う『おわりの会』で,お互いに相手の卒業生へ卒業記念
 品の贈呈を行うことになり,卒業生の人数や男女比の情報交換を行った。
  1月の第3回の企画会議では,活動内容や細かなゲーム方法,準備するものの検討と
 分担等,3学期の交流会に向けて話合いを行った。質問や提案,それに対する修正案な
 ど,実のある企画会議になった。

 


(2)本校を会場にした第2学期の交流会(12月)

  
実行委員以外の生徒は,実際に顔を合わせるのが1学期の交流会以来のため,始めの
 うちは
多少緊張している様子であったが,各クラスごとに分かれて交流活動を進めるう
 ちに笑顔が多くみられるようになり,楽しく交流していた。
  
その後,体育館に全員集まり『おわりの会を行った。各クラス毎の活動内容を発表
 した後,お互いの卒業生へ卒業記念品の贈呈を行った。

  交流会終了後,実行委員が集まって反省会を行った。今回の交流会の反省とともに,
 テレビ会議システムを使った企画会議の進め方の反省や,3学期の交流会に向けての打
 合せを行った。その中で,テレビ会議システムでの聞き取りやすい話し方など,疑問に
 思っていたことの幾つかを確認することができた。


4 生徒の変化

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 写真1 第1回企画会議
(徐々に慣れて笑顔になる生徒)
 写真2 第2回企画会議
(画面を通して話し合う生徒)
   
 写真3 第2回企画会議
(質問に答える本校生徒)
 写真4 第2学期交流会
(ゲームで楽しく関わる両校生徒)
   
 写真5 第2学期交流会
(ゲームで楽しく関わる両校生徒)
 写真6 第2学期交流会
(卒業記念品の贈呈)

 1回目の企画会議では,画面に商業高校の友達が実際に映るまでは緊張した表情で「まだ映らないよ,大丈夫かな」と,本当にテレビで交流ができるのか心配したりしていた。実際に商業高校の生徒が画面に映ると,「映った」と歓声を上げる生徒もいたが,多くは緊張した面持ちで画面を見つめていた。自己紹介が進み,徐々に慣れてくると,仲間の自己紹介を聞いて笑ったり,商業高校の友達の自己紹介を興味深げに聞いたりしていた。
 2回目の企画会議では,テレビ画面に商業高校の友達が映るのをおしゃべりしながら落ち着いて待っていた。また,テレビ画面から時間差で聞こえてくる自分の声を確認しながら話せる余裕も出てきたが,そのことで逆に話し方がぎこちなくなっていた。
 
3回目の企画会議では,テレビ画面から時間差で聞こえる自分の声に惑わされずに話すことができ,終わった後に「私,今日はしゃべれなかった」と残念がる生徒もいるなど,テレビ画面を通しての交流を楽しめるようになった。

 

5 成果と課題

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<研究の成果>
 身体に障害のある児童生徒にとって,離れた所への移動は困難であったり制約が大きかったりする場合がある。そのため,教室の中で模擬体験を行ったり,もしくは相手にこちらへ来てもらうこともある。しかし,このテレビ会議システムを利用することで,移動という一番の問題点が解決でき,話を聞いたり話し合ったりする活動であれば,直接会うのと同じような活動を体験することができる。

 今回の実践では,テレビ会議システムを利用することで,交流会の企画会議を直接顔を見ながら話し合って実施することができた。そのことにより,交流会を企画しているという意識も高まり,より積極的に参加する生徒もみられるようになった。交流会当日も,内容や準備について生徒同士で話合いを行っていたこともあり,実行委員によるスムーズな運営が行え,両校の生徒同士が楽しく関わることができた。
 また,テレビ画面を通して会話するという活動自体が日常とは異なる体験で,それだけで企画会議を楽しみにする生徒もいた。児童生徒にとって,学習活動をより楽しいものにする可能性をもっているように感じた。

<研究の課題>
 このシステムをより効果的(快適)に利用するためには,双方に通信速度が確保されたインターネット回線が必要であったり,大画面テレビが必要であったりと,それぞれに一定の環境を必要とする。また,双方の担当者が機器の操作に慣れたり,双方が周囲の協力を得て時間を調整するなどの努力をする必要もある。今回の実践では,両校とも県立学校ということで,ほぼ同様の環境が整っており,周囲の理解や協力もあって利用しやすかったように思う。
 その一方で,回線速度の関係で自分の声が画面から時間差で聞こえてくる現象も気になったが,生徒がその現象に慣れることである程度解決でき,回数を重ねるごとに活発に話合いができるようになったと感じている。このあたりの改善が望まれる。

 交流活動は,繰り返し行うことでより成果が大きくなる。来年度も継続してこの活動に取り組み,生徒同士でより充実した企画会議が行えるようにしていきたい。


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