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中学校社会科における専門職の方との交流
公民的分野「租税のしくみ」の実践を通して
岩倉市立岩倉中学校

   社会科学習において,専門職の方から直接話を聞くことが大切であると考える。しかし,現実的には,学校に来校して出前授業をしていただくことは簡単ではない。そこで,テレビ会議システムを活用して,専門職の方に授業をしていただくことを計画した。
 交流相手には,会計事務所に勤務されている税理士の方に依頼をし,社会科公民的分野の「租税の仕組み」について,専門家の観点から詳しく解説していただいた。生徒は税理士の方の専門的な話にじっくりと耳を傾け,税制度についての理解を深めていった。


1 交流の計画

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時 期

内  容

9月

ゲストティーチャー(税理士)との打ち合せ

10月

事前アンケートの実施

11月

電子メールを活用した質問事項の事前送付
授業実践

12月

電子メールを活用した礼状の送付
事後アンケートの実施

2 交流の対象

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 本校3年生と,会計事務所勤務の税理士

3 交流の実際

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(1)電子メールを活用した質問事項の事前送付(11月)

 
生徒に事前アンケートを行ったところ,税に関する知識はほとんどなく,消費税,たばこ税,法人税ぐらいしか挙げることができなかった。また,間接税・直接税,国税・地方税といった類別や,どれぐらいの税が徴収されるかなど,ほとんど見当がつけられない実態が明らかとなった。そこで,生徒に税について調べても分かりにくいことで知りたいことを挙げさせ,電子メールで会計事務所に質問する活動を行った。

(2)ICT機器を活用した出前授業(11月)

 今年度に関しては,ハード面の都合でテレビ会議システムの活用が実現できなかったため,事前に撮影した動画をウェブ上にアップロードしておき,教室のコンピュータでダウンロードする方法をとることで代行した。
  税制度の解説だけでなく,税理士の立場から納税の重要さについても話をしていただいた。生徒の振り返りをみると,「消費税が上がると聞いて本当に嫌だなと思っていたけど,国民が納税しないと本当に大変なことになる」など,租税の意義を理解できたようであった。

4 交流の様子

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 写真1 質問メールを作成する生徒  写真2 出前授業の様子
   
 写真3 礼状を作成する生徒  写真4 事後アンケートの実施

◇交流前と交流を終えての感想 〜アンケート,感想文から〜

<交流前>

 
本単元を実施するにあたって,3年生の3クラスの生徒(105名)に事前アンケートを行った。すると,税金に関する知識はほとんどなく,消費税以外の税については,納税をしている意識がはほとんどないことが明らかになった。また,税理士という職業自体も聞いたことがない生徒がほとんどであった。

*質問メールと税理士の方の返答

「税理士になるにはどういう資格が必要ですか」
→税理士になるには,全部で七つの試験に合格する必要があります。ただし,大学院で税理士になるための勉強を修了していると,そのうち二つの試験が免除されます。

「税理士はどんな仕事をするのですか」「税金を払わない人がいることを聞いたのですが,払わない人は罰金とかあるのですか」
→主に,会社がいくら税金を納めたらよいのかを計算する仕事を受けています。会社は売り上げに応じて税金を納めなければなりません。その計算方法はとても複雑で,専門家でないととても困難です。もし税金を払っていないことが発覚すると,「追徴課税」といって,本来払うべき金額に罰として更に金額が加算されます。


「どういった人たちを相手にして仕事をしているのですか」
→自宅が市なので,市内の中小企業が多いです。また,事務所が名古屋にあるため名古屋のお客さんも多いです。仕事上,お客さんの会社を訪問したり,税務署に出張したりすることも多いです。


「日本の税金は,外国と比べて高い方ですか?それとも安い方ですか」
→今の日本の制度では,税金が全くといっていいほど足りません。ヨーロッパの国は日本の消費税にあたる,「付加価値税」という税金の税率がとても高いです。スウェーデンなどは25%もあります。税金が高くても福祉が充実しているので,国民は納得して生活しているようです。


<交流後>
   
 交流を終えた後,感想文を書かせた。「税理士の方との交流は自分にとってためになった」と答えた生徒が大半を占めていた。その理由としては,「クイズ形式で楽しく学べたから」「フリップなど資料が豊富で分かりやすかったから」「質問したことに丁寧に答えてくれたから」などの理由があり,どの理由からも交流が有意義であったと感じることができた。
  
*礼状メール
 
 今の日本は借金がとても多くて,どんどん積み重なっていることを知りました。消費税が上がって負担が大きくなるのは嫌だけど,国のためにしっかりと納めたいと思いました。今回は,私たちのために貴重な時間をさいてくださり,本当にありがとうございました。



5 成果と課題

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<研究の成果>
  
 今年度はハード面の都合で,
テレビ会議システムを活用することができなかったため,あらかじめビデオで撮影したものを流すこととなった。生放送ではないので,効果は半減してしまったとは思うが,複数のクラスでの実施が可能となった。やはり,専門職の方から直接話を聞けるというのは,生徒にとって本当に価値の高いことだと思う。
 
生徒Aは,以下のような感想を書いた。
 クイズ形式の話だったので,とても楽しく学ぶことができました。質問にも丁寧に答えてくださり,参考になりました。実は,僕は前から将来税理士になろうと思っていました。税理士になるには,七つもの試験に合格しなければならないことを初めて知り,びっくりしました。大学院で勉強すれば,二つの試験が免除されるとアドバイスをしていただけたので,大学院に進学して勉強したいと思います。まずは,高校受験に向けて全力でがんばります。
 生徒Aは,今回の交流を通して自らの将来について具体的に考えるようになった。来年度以降も,専門職の方に依頼をし,出前授業を行うことを計画している。

<研究の課題>
   
 本実践では,質問をしたり礼状を書いたりするのにメールアドレスが必要であったが,生徒一人一人にアドレスを発行することは,非常に困難であった。また,生徒指導上においてもトラブルが危惧されたため,あえて生徒にメールアドレスを与えずに,教師が一括して送信することにした。とりわけ中学校において,生徒指導担当と連携して,情報モラル教育を日頃から行ってくことが必要不可欠であると感じた。


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