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新美南吉ゆかりの学校同士の交流
6年 総合的な学習の時間「わたしたちの南吉さんを語ろう」の実践
安城市立桜町小学校

   本校は,半田市岩滑(やなべ)出身の童話作家・新美南吉が教師として勤務した安城高等女学校(現:愛知県立安城高等学校)の跡地に建てられた学校である。近隣には,新美南吉ゆかりのものも多くあり,本校では全学年において,南吉作品を取り上げた国語学習や,南吉に関わる総合的な学習の時間を進めている。
 テレビ会議システムを活用すれば,遠く離れた人と気軽に交流することができる。今年度は,このシステムを活用して,6年生の総合的な学習の時間「わたしたちの南吉さんを語ろう」の実践の中で,新美南吉の母校である半田市立岩滑小学校との交流活動を計画した。テレビ会議システムを活用した交流は,子どもたちの「もっと知りたい」「伝えたい」という気持ちを強くし,総合的な学習の時間の意欲の向上に効果を発揮すると考えた。

1 交流の計画

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時 期

内  容

5月

交流校との打ち合わせ

6月

事前の接続テスト
第1回テレビ会議交流(学校紹介)

7月

事前の接続テスト
第2回テレビ会議交流(南吉学習紹介)

10月

事前の接続テスト
第3回テレビ会議交流(南吉のふるさと紹介)
半田市岩滑にて直接交流「南吉ふるさと巡り」

2 交流の対象

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本校6年生児童126名(4クラス)
半田市立岩滑小学校6年生児童83名(3クラス)

3 交流の実際

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(1)第1回テレビ会議交流(学校紹介)(6月)

 まず,それぞれの学校紹介を行った。学校の様子や子どもた
ちの活動,行事や児童会活動など,写真を見せながら発表し合った。その際,交流時に見せたい写真データを,事前にメールの添付ファイルで送り合った。それを,お互いの発表に合わせて,プロジェクタで投影した。第2回以降も,写真や動画を見せるときには事前に送り合った。また,学校紹介以外にも,桜町小学校全校で取り組んでいる南吉の詩の群読や6年生の南吉学習の取組などを紹介した。それぞれの発表の後には,質問に答える場を設定したり,簡単なじゃんけんゲームをしたりして,交流を深めた。

 

写真1 桜町小学校の紹介
 

写真2 岩滑小学校のことを質問

(2)第2回テレビ会議交流(南吉学習紹介)(7月)

 今回は,新美南吉の作品を劇や紙芝居,ペープサートなどで本校の1年生に伝える取組を,岩滑小学校に紹介した。本校の1年生に見せた劇「子どものすきな神様」を,テレビ会議でも上演して紹介した。また,学区の商店街に描かれている南吉の壁画を写真に撮って紹介した。岩滑小学校の子どもたちから,安城と南吉との関わりについてのリアルタイムで質疑応答ができ,調べたことをより詳しく伝えることができた。岩滑小学校からは,南吉の生涯について詳しく発表してもらい,発表を聞いた後,より詳しく知ろうと質問を投げかけ,その場ですぐに答えてもらった。安城と半田という離れた場所にいながら,それぞれの南吉学習への取組をリアルタイムで交流することができることに,子どもたちも喜びを感じていた。ICTを活用した交流は,子どもたちの「もっと知りたい」「伝えたい」という気持ちを強くし,総合的な学習の時間の意欲の向上に効果を発揮していた。

 

写真3 劇「子どものすきな神様」を上演
 

写真4 南吉の生涯について質問

(3)第3回テレビ会議交流(南吉のふるさと紹介)(10月中旬)

 今回は,新美南吉が生まれ育った岩滑の町のことを,岩滑小学校の子どもたちから詳しく聞くことにした。南吉の生家や南吉がよく遊んだ神社,南吉作品に登場するお寺や新美南吉記念館などについて,写真や資料を交えながら伝えてもらった。本校の子どもたちは,南吉のふるさとのことに興味をもち,岩滑小学校の子どもたちに幾つも質問をしていた。また,このテレビ会議の交流の場に新美南吉記念館の館長さんも同席してくださっていたので,より詳しく話を聞くこともできた。今回の交流により,南吉のふるさとにより深く興味をもち,直接訪れたいと思う子どもたちもいた。

 

写真5 南吉のふるさと紹介
 

写真6 新美南吉記念館の館長さんに質問

(4)半田市岩滑での直接交流「南吉ふるさと巡り」(10月下旬)

 前回の交流で,岩滑の町への関心が高まったので,学校休業日に岩滑小学校へ出向いて直接交流を行うことにした。希望者を募ったところ,本校からは児童7名と保護者3名が参加した。公共交通機関を使い,1時間かけて岩滑小学校へ着いた。岩滑小学校の子どもたちも数十名のボランティアが参加し,丁寧に岩滑の町を案内してくれた。南吉の生家は外から見ると,一階建てに見えるが,お勝手場が,地下一階にあり,とても急な階段を降りないといけなかった。初めて訪れた本校の子どもたちは,「南吉さんはここで毎日食事をしていたんだね」と,南吉の当時の様子を想像することができた。また, 南吉の生家の前には常夜灯がある。その 常夜灯にはくぼみがあり,幼いころの南吉の遊びの一つ,草つき遊びであいたくぼみだということを前回の交流の時に聞いていた。直接に訪問したことで,実際にそこで草つき遊びを体験することができ,子どもたちも喜んでいた。また,岩滑の町に残っている赤い井戸にも案内してもらった。鉄分を多く含んでいる常滑の土を使っているので,赤くなっている井戸である。今では貴重になっている「ごんぎつね」の話の中にも登場する赤い井戸を間近に見ることができ,新美南吉のふるさとの様子がよく分かった。また,岩滑の町を案内してくれた岩滑小学校の子どもたちとも,直接交流できたことで親睦も深まった。

 

写真7 南吉の生家を見学
 

写真8 草つき遊びを体験

4 交流後の感想

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交流を終えた後の子どもたちの感想

・自分たちが詳しくは知らなかった南吉さんのことを知ることができてよかったです。
・安城で過ごしたころの南吉さんの様子を,岩滑小学校の子に伝えることができてよかったです。
・南吉さんのふるさとのことを教えてもらい,岩滑の町へ行きたくなりました。実際に行ってみると,「ああ,ここがごんぎつねの舞台になった川の土手なんだなあ」と,お話の様子が目に浮かんできてよかったです。
・岩滑の子たちも,南吉さんのことが好きなんだということが分かりました。私たちだけでなく,地域のみなさんにももっともっと南吉さんのことを広めていきたいなと思いました。


5 成果と課題

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 <研究の成果>
 今まで取り組んできた本校の南吉学習は,書籍やインターネットで調べたり,南吉童話を読み深めたり,安城に在住する南吉の教え子の方や関わりがあった地域の方々からお話を聞いたりすることが多かった。今回,テレビ会議システムを活用したことで,安城と半田という離れた場所にいながら,それぞれの南吉学習への取組をリアルタイムで伝え合うことができた。子どもたちは,今まで以上に「もっと知りたい」「伝えたい」という気持ちが強くなり,総合的な学習の時間の意欲の向上に効果を発揮した。テレビ会議交流を重ねていく中で,南吉のふるさとに興味をもち,岩滑小学校の子どもたちや新美南吉記念館の館長さんにも質問をする姿が多く見られた。また,岩滑小学校の子どもたちの顔や反応を見ながらのテレビ会議交流であったことが,南吉のふるさとにより深く興味をもち,直接訪れたいと思う気持ちが高まった要因の一つとも言える。そして,直接訪問したことで,新美南吉のふるさとの様子がよりよく分かり,新美南吉のことを自分たちももっと広めていきたいという気持ちが高まっていったことも感想から分かる。この交流を行ったことで,今まで以上に南吉学習の深まりが見られたことが大きな成果である。

<今後の課題>
 今回の実践は,お互いに初めての試みであったので,交流の場を設定したり,インターネット回線をつないだりすることにやや手間取り,合計4回の交流しか行えなかった。今後は,もっと気軽に交流が行えるように工夫し,交流回数を増やしていけるようにしていきたい。


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