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中学校社会科の授業を通しての交流
単元〜北アメリカ州のようす〜を通して
東浦町立北部中学校
   テレビ会議システムの活用研究の最終年度になる今年度は,昨年度の反省である驚きと感動のあるテレビ会議システムの活用をテーマに取り組んだ。普段,会ったり,話したりすることができない場所の人とテレビ会議システムを利用して会話をしたり,質問に答えてもらったりすることで,驚きや興味を引き出し,理解を深めることができるのではないかと考えた。
 今回は,1年地理的分野の「北アメリカ州のようす」の単元で,テレビ会議システムを使用した交流を実践した。アメリカが多民族国家であることに着目し,多民族国家ならではのよさや大変さを考えさせる中で,実際に現地に住んでいる方に直接話を聞くことができれば,より課題追究・解決につながりやすいのではないかと考えた。交流相手は,アメリカ合衆国コロラド州で小学校の教員をしているジェームス氏一家にお願いした。


1 交流の計画

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時 期

内  容

10月

日本でジェームス氏一家と相談・打ち合わせ
・授業の趣旨の説明と日程や時差の確認

10月〜11月

メールでジェームス氏一家と相談・打ち合わせ
・当日予想される質問や話してほしい内容を伝え,日時を決定

11月中旬

アメリカと北部中学校間で,通信機器の接続テストを実施し,機器を選定
・使用アプリケーション:「Skype」
・使用端末:ジェームス氏がタブレット端末,北部中がWindowsパソコン

11月28日

第1回交流実践
・学習の課題解決に向けて「Skype」を使い,北部中1年B組・D組とジェームス氏一家と交流

12月3日

第2回交流実践
・学習の課題解決に向けて「Skype」を使い,北部中1年A組・C組とジェームス氏一家と交流

12月9日

第3回交流実践
・学習の課題解決に向けて「Skype」を使い,北部中1年E組とジェームス氏一家と交流
 

12月下旬

ジェームス氏一家に交流後のお礼や感想をメールで送付

2 交流の対象

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日 本     東浦町立北部中学校  1年生5クラス
アメリカ合衆国 コロラド州在住    ジェームス氏(アメリカ人)
                       夫人(日本人)
                       ご子息二人

3 交流の実際

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(1)日 時

        日本時間         現地時間

第1回 B組 11月28日(木)10:20〜35  11月27日(水)18:20〜35
    D組 11月28日(木)11:15〜30  11月27日(水)19:15〜30
第2回 A組 12月3日(火)10:20〜35  12月2日(月)18:20〜35
    C組 12月3日(火)11:15〜30  12月2日(月)19:15〜30
第3回 E組 12月9日(月)10:30〜45  12月8日(日)18:30〜45


(2)使用機器

 「Skype」が使用できるノートパソコン,ウェブカメラ,LANケーブル,オーディオケーブル,RGBケーブル,マイク,電子黒板

(3)授業実践

 @ 単 元
  中学社会 地理的分野 「北アメリカ州のようす」多民族国家と環境問題

 
A 学習指導案・本時の目標と展開

 

 

学   習   活   動

指 導 上 の 留 意 事 項

問題の把握

 1 アメリカで活躍している人の写真を見て、容姿や言語の違いに気づく。
(1) アメリカで活躍している人を発表する。

 (2) 本時の学習課題をつかむ。

民族や文化が違うと生活にどんな影響が出るのだろうか。

 2 資料をもとに、多民族国家の良い点や不便な点について考える。
(1) 人種別や言語別の割合の資料を参考にして、自分の考えをまとめる。
(2) グループで各自の予想を発表して、考えを深める。
(3) グループでまとめた意見を発表する。





3 ゲストティーチャーの話を聞いて、考えを深める。

(1) ゲストティーチャーの話を聞く。
・時計や外の様子を写してもらい、日本と比較する。
・アメリカで生活していてよかったことや困ったり、不便だったりしたことなどの話を聞く。

(2)ゲストティーチャーへ質問をする。

(3)話を聞いて、思ったことや考えたことをまとめ、発表する。
 
 
 4 次時への問題意識をもつ。 

 oできるだけ多くの人物を発表させる。
o発表の中で、アメリカの歴史についても簡単にふれておく。
oアメリカ人でも容姿や民族が全く異なる写真を資料として提示する。

 oアメリカで活躍する人物を比較させ、意見の中から学習課題を作るようにさせる。

oアメリカ在住の白人・黒人・黄色人の割合や言語別の割合を示した資料を提示する。

 o個人の考えをはっきりさせた上
 で、グループにして話し合わせ
 る。


評 学習課題に対して、自分の予想をたてることができる。(行動観察・発表)

 oグループでは、お互いの意見を言わせてグループの意見としてまとめさせる。

 oすべてのグループの意見を出した上で、まとめていくように話し合わせていく。

 Skypeを使って、国際結婚をしてアメリカで生活している日本人の婦人の話を聞くことで、自分の考えを確かめたり、新しい発見をしたりできるようにする。

 o本時のねらいにせまるように司会をする。

 o不便なことがあっても、互いの
 文化を尊重し合い、対等な関係を
 築きながら共存していることにつ
 なげたい。

評 多文化共生社会について多面的・多角 的に考え、適切に表現することができる。(ノートの点検、発表)

予想

 

追究

 

 B 授業の概要
  1 アメリカで活躍している人々にはいろいろな人種や民族の人がいることを知る。
  2 資料を基に,民族や文化が違うと生活にどのような影響が出るか考える。
    個人→グループ→全体
  3 「Skype」を使用してジェームス氏一家にアメリカの生活の様子を聞く。
  4 本時のまとめをする。

・本時では「民族や文化が違うと生活にどんな影響が出るのだろうか」という学習課題を追究した。一人一人で予想を立てた後,小グループで意見の交流をした。その後,グループ間の交流を行い,意見をまとめた上で実際にアメリカで暮らしているジェームス氏一家に登場していただき,アメリカでの生活の様子や大変さや楽しさを話していただいた。お話の後は,生徒の質問にも答えていただいた


4 交流前後の生徒変化と交流の様子

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(1)交流前(生徒のプリントより)
・白人や黒人などの人種差別がひどいのではないか。
・いろいろな国の言語があるので,言葉が通じないから大変ではないか。
・いろいろな国の文化が分かるからよいのではないか。


(2)交流の様子

 写真1 交流の様子@  写真2 交流の様子A
 写真3 交流の様子B  写真4 交流の様子C
 写真5 交流の様子D  写真6 交流の様子E

(3)交流後(生徒のプリントより)
・日常的な差別はそれほど感じないようだが,根強く残っていることが分かった。
・言語の問題はあるが,お互いにジェスチャーやニュアンスなどで伝わるのでそれほど困らないことが分かった。
・食文化の違いから,食生活がけっこう大変であることが分かった。
・多文化の中で生活していくには,自分の考え方を全て通そうと思わずに,相手の考えも聞きながら接することが大切だと分かった。

 

  成果と課題

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<研究の成果>
・ジェームス氏は,タブレット端末を使用したので,移動しながら部屋の中や外の景色を見せてもらうことができた。そのため,生徒に課題解決に取り組ませるだけでなく,日本とアメリカの時差の違いや現地の季節などをリアルタイムに伝えることができた。

・日本とアメリカが離れていても映像が途切れたり音がずれたりすることなく,普通の会話のように交流することができた。そのため,生徒は最初から驚きと興味を持って取り組むことができた。

・コロラド州と日本との時差が約16時間あるが,こちらの授業時間が,現地では午後6〜7時であり,深夜や早朝などの問題なくジェームス氏一家全員と交流することができた。

・授業時間の最後の15分に交流実践ができたので,授業変更等をせず実施できた。

・ジェームス氏はこの交流を快く引き受けてくださり,しかも同じ内容の話を5クラスの生徒にしていただいたことに感謝したい。

<研究の課題>
・今回は生徒の質問に答えていただくという形であったが,授業中の生徒同士の交流となると時差の問題があり難しいと思われる。時差があまりない国であれば,作品を共同制作するなどの交流も可能だと思う。

・交流相手との機器の違いがあるなど,アプリケーションソフトの選定や通信の接続テストを十分行う必要がある。

今回はジェームス氏の夫人が日本人であったため,生徒との交流や質問は夫人の通訳で問題なく行うことができたが,言語の違いが問題である場合は,さらに綿密な打ち合わせが必要になったと思う。


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