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中学校社会科における専門職の方との交流
公民的分野「日本の農業対策」の実践を通して
岩倉市立岩倉中学校
   社会科学習において,専門職の方から直接話を聞くことは大切なことである。しかし,専門職の方に授業の進度に合わせて出前授業をしていただくことは難しい場合がある。そこで,「Face Time」のビデオ通話機能を利用して,専門職の方に授業をしていただくことを計画した。
 交流相手には,加藤秀明氏に依頼した。加藤氏は,一宮市郊外でいちごの生産をする一方,IT企業での海外勤務の経験を生かして,台湾や中国などにいちごの加工品の販売も行っている。また,農業関係の講演会やテレビ番組に出演した経験もある。いちごの価格変動が加藤氏の生活に直接影響するため,加藤氏の言葉には大変重みがあり,いちごの価格変動を,生徒がより切実感をもって聞くことができると考えた。

1 交流の計画

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時 期

内  容

10月

ゲストティーチャー(加藤秀明氏)との打ち合わせ

11月

事前アンケートの実施

12月

質問事項の事前送付(電子メール)

1月

授業実践
礼状の送付(電子メール)

事後アンケートの実施

2 交流の対象

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 本校3年生と加藤秀明氏

3 交流の実際

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(1)質問事項の事前送付[電子メール](12月)

 生徒は2年次までに,地理的分野で日本の農業の諸問題についてひととおり学習している。しかし,事前アンケートの結果から農家の収入,農業の労働問題,後継者不足,国際競争などについての知識がほとんどないことが,明らかになった。そこで,加藤氏が出演したテレビ番組を見せ,加藤氏に聞いてみたいことを書かせた。たくさんの質問が出されたが,クラスで話し合い,「どうすれば農業にたずさわる人が増えるのか」「どうすれば日本の農業は国際競争に勝ち残ることができるのか」の2点に絞って電子メールで送付した。

(2)ICT機器を活用した出前授業(1月)

 ・使用機器:タブレット端末,AppleTV,大型モニター
 ・使用アプリケーションソフト:「Face Time」
 ・使用回線:3G回線
 まず,いちごのパック詰めから出荷までの流れを説明していただいた次に,提携している和菓子メーカーの方にも登場していただき,加工品や業務提携の話をしていただいた。そして,生徒の一つ目の質問である「どうすれば農業にたずさわる人が増えるのか」という問いに答えていただいた。加藤氏は現在30歳代前半であるが,一宮市内で彼の次に若い専業農家の方は60歳代だそうである。本当に後継者がおらず,改善策は全く見つからないとのことであった。とにかく,農業を儲かる産業に変えていかなければならないとお話しされた。二つ目の質問「どうすれば日本の農業は国際競争に勝ち残ることができるのか」については,実際に加藤氏が行っていることを教えていただいた。上海で農地を借りて米の生産をしていることや,いちごの加工品を海外に輸出していることなどである。テレビ番組に出演したときにも話をされたが,そのときに聞けなかった内容についても詳しく教えていただくことができた。

4 交流前後の変化

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 写真1 AppleTVへの接続  写真2 出前授業の様子を映したモニター
 
 写真3 交流する生徒  写真4 交流後の生徒の意見

◇交流前と交流を終えての感想 〜アンケート,振り返りなどから〜

 <交流前>
  
生徒は2年次までに,地理的分野の学習で,農業に関する統計資料を読み取り,農業就業人口が減少していることや,食料自給率の低さなどの諸問題についての調べ学習を進めてきた。3年次では,公民的分野の経済の観点から,日本の農業対策を考える授業を行った。その中で「将来,専業農家になりたいか?」と発問すると,大半の生徒が「なりたくはない」と答え,自分とは関わりのない世界の話だと認識しているようであった。

  
<交流後>
 
 交流を終えた後,再度「どうすれば日本の農業は国際競争に勝ち残れるか」というテーマで話し合いをさせた。農業分野の国際競争というと,生徒はどうしてもマイナスのイメージが強かったが,加藤氏との交流によって,積極的な姿勢で考えをもつことができた。そして,次世代の農業の可能性について,六次産業化やアグリビジネスなど,加藤氏の助言通りグローバルな枠組みで考え直すことができた。
 事後アンケートの結果を見ると,加藤氏との交流は「自分にとってためになった」と全員が答えた。その理由としては,「驚きや新しい発見があったから」「農業に対する考え方が変わったから」「テレビに出るような人が,質問したことに丁寧に答えてくれたから」などがあり,どの理由からも交流が有意義であったと感じることができた。
  
  *生徒の感想
   生徒A
 最近は,加藤氏のように農業を企業化して行う人が増えていると聞いて驚きました。農業と他の産業をうまく組み合わせて,日本の農業が発展していけばいいなと思いました。
   生徒B
 現在,日本の農業は世界に押されつつあり,危機的な状況にあると思います。それでも加藤氏のようにいろいろな対策を行っている方もいることがわかりました。今まで農家の方と関わりがなかったけれど,農家もいいなと思いました。
   生徒C
 六次産業化するには,農家の方も経済や経営の知識がいると思います。加藤さんのように誰でもできるわけではないと思うので,本当に大変だと思いました。加藤氏は,日本だけでなく,世界を視野に入れているのですごいと思いました。
   生徒D
 ビデオ通話で農家の風景や声がリアルに伝わってきたので,とても現実的に考えることができました。輸入に頼らない国になってほしいと思うけれど,そのためには,国全体で関わっていかなければいけないと思います。他人事だと思ってはいけないなと思いました。

 

 成果と課題

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<成果>
 生徒の感想や授業の様子などから,交流が有意義なものであったことは明らかである。それに加えて,ハード面での成果もあった。今年度は,タブレット端末と「FaceTime」を使って交流を行った。タブレット端末の最大の利点は,誰でも簡単に使えることである。カメラ,マイクを内蔵したタイプなら準備が簡単で,ICT機器の活用が苦手な方でも実践が可能である。ビデオ通話が可能なアプリケーションソフトも多数あり,パソコンと違い,教室内を移動することができるため,今後も活用方法を探りたい


<課題>
 生徒からの質問事項の送付(電子メール)と交流実践当日のタブレット端末の操作は、全て教師が行った。生徒と専門職の方が直接交流できるよう電子メールなどが使用できる環境の整備とメール利用を含めた情報モラル教育も日頃から行っていくことが必要であると感じた。


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