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新美南吉ゆかりの学校同士の交流
4年 総合的な学習の時間「南吉さんのことを伝え合おう」の実践
安城市立桜町小学校

   本校は,半田市岩滑(やなべ)出身の童話作家・新美南吉が教師として勤務した安城高等女学校(現:安城高等学校)の跡地に建てられた学校である。近隣には,南吉にゆかりのあるものも多くあり,本校では全学年において,南吉の作品を取り上げた国語学習や,南吉に関わる総合的な学習を進めている。
 4年総合的な学習「南吉博士になろう」では,南吉の生い立ちや人となりを調べる学習に取り組んだ。半田市の新美南吉記念館と南吉の生家の見学をしたり,安城市駅前商店街の南吉ウォールペイントを描いた方から話を聞いたり,南吉の詩に曲を付けている方から歌を教えてもらったりするなど,幅広く南吉に関わる学習を進めた。その学習の中で,テレビ会議システムを活用して南吉の母校・岩滑小学校と交流する時間「南吉さんのことを伝え合おう」を設定した。安城から離れた半田の地でも自分たちと同じように南吉のことを慕い,学んでいる子どもたちがいるということを知ることで,よい刺激になるであろうと考えた。そして,テレビ会議交流や直接交流をする中で,互いの南吉に関わる学習の成果を発表し合ったり,南吉の作品に対する意見交流をしたりして学習を深めた。

1 交流の計画

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時 期

内  容

7月

交流校との打ち合わせ

9月

事前の接続テスト
第1回テレビ会議交流(学校紹介・南吉学習紹介)

10月

半田市岩滑小学校にて直接交流(南吉学習発表)
事前の接続テスト
第2回テレビ会議交流(南吉学習発表,質疑応答,意見交流)

2 交流の対象

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本校4年生児童97名(3クラス)
半田市立岩滑小学校4年生児童71名(2クラス)

3 交流の実際

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(1)第1回テレビ会議交流(学校紹介・南吉学習紹介)(9月下旬)

 互いの学校の紹介や,南吉にまつわる事柄を紹介し合った。質問コーナーでは,半田でも給食で南吉クッキーが出ることが分かったり,矢勝川の彼岸花が,「ごんぎつね」のお話の中に出てくるように「赤いきれ」のように川一面にさいていることが分かったりした。それらを知ったときの子どもたちの驚きようが印象的だった。交流後の本校の子どもたちは,「テレビ会議をするのは初めてで,緊張しました。でも,たくさんの質問に岩滑小の子が答えてくれて,うれしかったです」「私たちと同じように,岩滑小の子も南吉さんのことを好きなんだなぁと思いました。今度の直接交流で,安城の南吉さんのことを伝えるのがとても楽しみになりました」と,感想を書いていた。以上からテレビ会議交流をしたことで,南吉学習への意欲が高まってきたことが分かる。

 

写真1 桜町小学校の紹介
 

写真2 岩滑小学校のことを質問

(2)半田市岩滑小学校にて直接交流(南吉学習発表)(10月上旬)

 社会見学の一環として,新美南吉記念館や南吉の生家,岩滑小学校へ訪れ,直接交流を行った。岩滑小学校の子どもたちからは,南吉作品の舞台となる岩滑の町を紹介してもらった。本校からは,安城での南吉の様子を,クイズ,詩の群読,歌などで表現し,発表した。前回,テレビ会議交流をしているおかげで,最初から和やかな雰囲気で交流をすることができた。交流後の本校の子どもたちは,「この前テレビ会議をした子たちが目の前にいて,不思議な感じがしました。でも,落ち着いて発表をすることができました。僕たちの群読や歌をしっかりと聞いてくれてうれしかったです」「南吉さんの『木の祭り』のようにホタルがいっぱい飛んでほしいと思って,岩滑小の子たちはホタルを育てているということが分かりました。岩滑小のまわりは自然がいっぱいで,その中で南吉さんはお話をつくっていたんだなあと思いました」と,感想を書いていた。テレビ会議交流と直接交流を効果的に取り入れたことで,更に南吉に関する学習意欲が高まったようであった。

 

写真3 詩の群読発表
 

写真4 岩滑小学校の南吉学習の発表

(3)第2回テレビ会議交流(南吉学習発表,質疑応答,意見交流)(10月下旬)

 今までの交流を通して,更に知りたいことをお互いに質問し,答え合う場を設定した。さらに,日本全国の4年生が国語科で学習する「ごんぎつね」の意見交流をして考えを深めた。

〜質疑応答の様子〜
Q.直接交流の時に,うなぎは今はもう矢勝川にはいないと言っていましたが,いつ頃までいたのですか?
A.ひいおじいさんが子どもの頃までは,矢勝川でうなぎの漁ができたそうです。でも,今でも小さいうなぎなら川にいるみたいです。
Q.前のテレビ会議の時に,半田でも給食で南吉クッキーが出ると言っていましたね。安城の南吉クッキーは,きつねの形と,でんでんむしの形と,2匹のかえるの形ですけど,半田のはどんな形のクッキーですか?
A.半田のクッキーは,きつねの形だけです。クッキーではないですけど,南吉弁当,兵十のおっかあに食べさせたかったうなぎ弁当というのがあります。

 交流後の本校の子どもたちは,「今でも小さいうなぎがいると言っていて,びっくりしました。うなぎの漁をしていたと聞いて,兵十がおっかあのためにうなぎを捕っている様子を想像することができました」「ごんぎつねの意見交流もして楽しかったです。岩滑小の子と意見がちがったので,とてもびっくりしました。意見交流ができてよかったです」と,感想を書いていた。南吉のことやその作品について,互いの考えを伝え合ったことで,南吉学習の深まりが見られた。

 

写真5 お互いに質疑応答
 

写真6 「ごんぎつね」の意見交流

4 交流後の感想

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交流を終えた後の子どもたちの感想

・桜町小だけでは分からないことが,テレビ会議や直接交流でよく分かりました。岩滑小の子からいろいろ教えてもらいました。とても得した気分でした。家に帰った後,お父さん,お母さんにも教えてあげました。
・私は「ごんぎつね」の意見交流をしたことが心に残っています。国語の授業でもみんなと話し合ったけど,岩滑の子からはそれとは違った意見が聞けてよかったです。あと,テレビに映っている岩滑の子が,自分たちと同じクラスの子のように思えて不思議な感じでした。
・「ごんぎつね」の中に出てくる場面が,岩滑の川やお寺や自然だということを知って驚きました。質問したことに詳しく答えてくれたので,「ごんぎつね」のことが今までよりもよく分かりました。
・ぼくたちが調べてきた安城の南吉さんのことを,岩滑の子に伝えることができてよかったです。テレビ会議で質問されたときはどきどきしたけど,ちゃんと答えることができてよかったです。


5 成果と課題

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 <研究の成果>
 今まで取り組んできた本校の南吉学習は,書籍やインターネットで調べたり,南吉童話を読み深めたり,安城に在住する南吉の教え子の方や関わりがあった地域の方々からお話を聞いたりすることが多かった。研究1年目となる昨年度は,6年生同士でテレビ会議システムを活用した交流を行い,一定の成果を上げることができた。テレビ会議システムを活用したことで,安城と半田という離れた場所にいながら,それぞれの南吉学習への取り組みをリアルタイムで見せ合うことができた。研究2年目となる今年度は,安城と岩滑を比べるだけでなく,南吉作品の代表作「ごんぎつね」をテーマにして交流することを目的にして,4年生同士で行った。昨年度に引き続いて岩滑小学校との交流ということもあり,最初からスムーズにテレビ会議システムを使うことができた。
 本校の4年生は,安城から離れた半田の地でも自分たちと同じように南吉のことを慕い,学んでいる子どもたちがいるということを知り,よい刺激を受けていた。そして,テレビ会議交流や直接交流をする中で,互いの南吉学習の成果を発表し合ったり,南吉作品に対する意見交流をして学習を深めたりすることができた。今年度は,1対1で話し合ったり互いに質疑応答する場面を多く取り入れたりしたので,昨年度以上に「もっと知りたい」「もっと伝えたい」という気持ちが強くなり,南吉学習の意欲の向上につながった。また,質問の内容が「ごんぎつね」をベースとしたものも多く,国語科の学習の発展としても深めることができた。これらの交流を行ったことで,例年の4年生に比べて南吉学習の深まりが見られたことが大きな成果である。また,ここでは紹介していないが,今年度の6年生同士でも昨年度同様にテレビ会議システムを活用した交流を行っている。学校間同士の交流の輪が広がってきていることも成果の一つと言える。

<今後の課題>
 岩滑小学校との交流が軌道に乗ってきたが,今回の実践では,写真や具体物を見せ合う活動がやや少なかったように思う。
 研究3年目となる来年度は,テレビ会議交流の中で具体物を見せ合えるような場も設定したいと考えている。また,更に他の学年でもテレビ会議システムを活用した交流を図り,学校間の南吉学習の広がりをもたせていきたい。


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