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協同制作を通しての豊橋商業高校との交流
ネットワークを活用した授業交流の実践
愛知県立豊橋養護学校


  今年度は,昨年度から取り組んでいる教科学習における授業交流(共同学習)を更に充実させ,深める実践に取り組んだ。昨年度よりもテレビ会議による話し合いの機会を多くすることで,協同制作というチームプロジェクト体験がより充実するとともに,協力して作り上げたという実感や充実感がより高まるのではないかと考えた。また,継続した共同学習に加えて,最後に直接交流で反省会と交流会を行うことで,協同制作の実感とともに互いの理解をより深めたいと考えた。

1 交流の計画

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時 期

内 容

6月

 豊橋商業高校担当者との実践を行う授業の検討及び内容・スケジュール等の打ち合わせ

9月

 メールによる両校担当者の打ち合わせ(第1回テレビ会議交流での具体的な内容や準備について)
 第1回テレビ会議交流(自己紹介,協同制作ウェブページデザインの検討)

10月

 第2回テレビ会議交流(協同制作ウェブページデザインの決定,分担するデータの形式等打ち合わせ)
 メールによる連絡,打ち合わせ,データ送付(随時)

11月

 第3回テレビ会議交流(協同制作ウェブページの改善等意見交換)
 第4回テレビ会議交流(協同制作ウェブページの改善等意見交換,第5回直接交流打ち合わせ)

12月

 商業高校での直接交流(共同学習感想及びウェブページ評価発表,交流会)

2 交流の対象

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 本校高等部3年生(マルチメディア表現授業履修生徒)
 愛知県立豊橋商業高校3年生(課題研究マルチメディア授業履修生徒)

3 交流の実際

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(1)授業の検討及び内容,スケジュール等の打ち合わせ(6月)

  商業高校の昨年度までの担当者が転勤されたため,新しい担当者に昨年度までの取組や今年度の取組の構想について説明,実践を行う授業の検討のお願いをした。その後,主任の先生や実践を行う授業担当の先生と,交流及び協同制作の内容(自慢料理のレシピ集サイト)や制作の分担,大まかな計画,授業交流の候補日等の打ち合わせを行った。

(2)第1回テレビ会議交流(9月)

  最初に簡単な自己紹介を行った後,両校の生徒が個々に授業で考えてきたデザインを提案した。提案に際しては,紙に描いたデザイン画をウェブカメラに写しながら,リンク等も含めて説明を行った。
  その後,それぞれのデザイン案についてよかったところ,ぜひ取り入れたいところなどの意見交換を行った。そして,それぞれのデザイン案や意見をもとに両校それぞれで一つの案にまとめ,第2回目のテレビ会議交流で決定することにして,第1回目のテレビ会議交流を終えた。

(3)日常の授業交流

  授業で作成したデータのやりとりや,データ制作を通して出てきた疑問や問題点等については,昨年度と同様に両校の生徒同士が互いにメールで情報交換するようにした。そのため,授業の最初に必ずメールチェックを行い,メールが来ていれば生徒同士でその内容について伝え合ったり,相談したりしてメールで返事を送るようにした。
  また,協同制作しているウェブページのデータを逐次本校の内部ページにアップロードすることで,常に制作状況を両校で確認しながら授業に取り組めるようにした。

(4)第2回テレビ会議交流(10月)

  テレビ会議交流に際しては、商業高校からメールで送られてきていた第2次デザイン案を事前に授業で検討し,試作ウェブページとして作成しておいた。それをテレビ会議システムのウェブ共有機能を利用して両校で見ながら意見交換を行い,デザインを決定した。デザイン決定に際して,スクロールバーの設置等,具体的な意見が出され,充実した話し合いとなった。改善点のうち,配色等については全体デザインを担当する本校生徒が話し合って作成を進め,それをもとに次のテレビ会議交流で検討することにした。
  その後,試作ウェブページをもとに料理写真やアイコン等の画像サイズ,レシピの元データの形式やメールでの送信方法についての打ち合わせを行った。

(5)第3回テレビ会議交流(11月)

  料理画像やレシピデータを組み込んだ制作途中のウェブページを,前回と同様にウェブ共有機能で互いに見ながら,気が付いた改善点等の意見交換を行った。戻るボタンの表現の仕方やレイアウトの修正,材料の分量表現等,ウェブページとしてのクオリティを高めるために,それぞれが授業で気付いた点についてしっかり意見交換をすることができた。

(6)第4回テレビ会議交流(11月)

  テレビ会議がなかなかつながらず,両校担当職員が携帯電話で連絡しながらいろいろ対応したものの,ネットワークトラブルのために最後までつながらなかった。そこで,今回のテレビ会議交流で両校の生徒が提案しようと思っていたことをメールで伝えることにして,その日の授業を終えた。
  次の授業で,互いに相手からのメールによる意見を確認し,それに沿ってウェブページや画像データ等の改善に取り組んだ。普段からメールによる情報交換等を行っていたことで,急なトラブルにも最小限の計画への影響で対応することができた。

(7)商業高校での直接交流(12月)

  本校生徒が商業高校を訪問し,作成したウェブページをパソコン画面で一緒に見ながら,共同学習の感想やウェブページの評価と更に改善したい点を一人ずつ発表した。その後,交流会で本校生徒と商業高校生徒とがペアになり,カードゲームを楽しみながら交流を深めた。

4 交流の様子

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 写真1 テレビ会議交流の様子  写真2 商業高校生徒の描いたデザイン案
   
 写真3 テレビ会議でのウェブ共有画面  写真4 画面を一緒に見ながらの反省会
   
 写真5 交流会でのカードゲームの様子  写真6 協同制作したウェブページ


(1)生徒の様子

  本校の生徒は今までに何度かテレビ会議を経験しているものの,商業高校はテレビ会議システムを利用するのは初めてという生徒が多く,1回目のテレビ会議では戸惑ったり緊張したりしていて,意見を言うのにも躊躇している様子であった。
  しかし,回数を重ねるごとにテレビ会議や2校での共同学習に慣れてきた様子で,発信を躊躇することなく教室内での普段の話し合いのように意見が活発に出るようになった。
  最後の直接交流では,下記の生徒の感想にもあるように両校の生徒から「感動した」「いい勉強になった」等の感想が出され,更に改善したい点を自発的にメモして以降の学習に生かそうとするなど,充実した共同学習を行うことができた。そしてその後の交流会では,最初から両校の生徒が相談して作戦を立ててカードゲームに取り組んだ。カードゲーム終了後の少ない時間でも一緒に楽しめるゲームを生徒が主体的に提案して、最後まで交流を楽しもうとする姿が見られたりするなど,交流としても充実した活動を行うことができた。

(2)直接交流での生徒感想

 
交流学習の
最後に直接交流を行い,これまでの共同学習の感想や,ウェブページの発表などをして交流を締めくくった。以下は交流学習全体に対する生徒の感想である。

・テレビ会議で話し合うたびに,その話し合った結果がウェブページという作品に反映されていき,協力して作っているという実感がもててよかった。

・何もない状態から,二つの学校で協力してこんな素敵なウェブページを作り上げることができて、感動した。

・話し合った内容をウェブページ上で実現するために工夫することで,自分自身のウェブデザインの技能や表現力が上がって良かった。

5 まとめ

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  3年間の研究・実践を通して,交流学習や共同学習の充実にテレビ会議システムがいかに有効であるかということの検証に取り組んできた。
  昨年度取り組んだ豊橋商業高校との共同学習の実践において,共同学習とテレビ会議システムの有効性についてある程度検証できたものの,初めての取組ということで十分にテレビ会議システムを活用しきれていない部分があり,豊橋商業高校の先生からももっと活用できるのではないかという意見をいただいていたため,3年目になる今年度は冒頭に記したように昨年度の取組をより深める実践に取り組んだ。
  具体的には,テレビ会議システムによる生徒同士の話し合いの機会をより多くすることでチームプロジェクト色を強めるとともに交流としての相互理解を深め,テレビ会議システムの機能(ウェブ共有等)を有効的に活用することに取り組んだ。
  実際に実践を行ってみると,テレビ会議による話し合いを重ねるごとに徐々に意見が活発に出るようになって,充実した話し合いを行うことができた。これは,機会を多くすることでテレビ会議による話し合いに慣れ,普通の教室内での話し合いと同じ状態に近づけたということと,話し合いをするたびに自分の意見が協同制作の作品に反映されてクオリティが上がることを実感でき,意見を言う意欲につながったからではないかと考える。
  また,ウェブ共有機能を効果的に活用することで,ウェブカメラの解像度の低さをカバーし,的確に相手に自分の意見を伝えることができ,このことも活発な意見交換に効果を上げたのではないかと思う。
  以上のように,昨年度から取り組んできた実践により,共同学習におけるテレビ会議システムの有効性を確かめることができた。また,1年目から取り組んでいるインターアクトクラブとの実践については,両校とも研究が終了する来年度以降も継続していきたいということで,意見が一致している。このことも,テレビ会議の有効性を裏付けていると思われる。
  このような共同学習以外にもタブレット端末の普及等により,理科での地層や断層等の野外観察学習等,身体に障害のある生徒にとって困難な学習を,テレビ会議システムを活用することで,直接触れられないまでも,その場で質問に答えてもらったり,拡大して写してもらったりして実現できるなど,いろいろな活用が考えられる。今後もさらなる活用を模索していきたいと考える。
  最後に,3年間の研究実践に協力していただいた豊橋商業高校の先生方に感謝し,まとめとしたい。


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