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異文化理解に向けての交流
5年 総合的な学習の時間「自分の将来と異文化理解の関係性について」の実践
愛西市立佐屋西小学校

   5年生の総合的な学習では,「体感しよう! 世界の文化」をテーマに,世界のさまざまな地域の文化について調べたり,体験したりしながら,異文化についての理解を深めている。「異なる文化」は,国家間や地域間でのみ存在するものではなく,自分と他者の間にも存在することに気付かせ,世界の文化について学びを進めていく中で,異文化理解というものが日常生活のいたるところで重要になってくることを感じさせたい。
 今回の実践では,「外国の文化について学ぶことは,自分の将来とどんな関係があるのか」という素朴なテーマを基に,現段階で思い描いている自分の将来像と異文化理解との関係について,グループでの意見交流の後,社会人2名とのTV会議を用いた意見交流を計画した。

1 交流の計画

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時 期

内  容

5月

交流相手2名との打ち合わせ

9月

交流相手2名との電話打ち合わせ

10月

交流実践の日程調整
交流相手の仕事について学ぶ(広島・T氏)

12月

交流相手の仕事について学ぶ(京都・M氏)
事前の接続テスト
自分の将来についての意見交流
TV会議システムを利用した交流学習(発表,質疑応答,意見交流)

2 交流の対象

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本校5年生児童44名(2クラス)
京都府立高校国語科教諭 M氏
フリーアナウンサー,ラジオパーソナリティ T氏

3 交流の実際

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(1)質問事項の事前送付(11月)

 児童は,自分が将来就きたい仕事の内容やそれに向けて中学校,高等学校,大学や専門学校などで学びたいことについて考え,グループごとにまとめた。M氏,T氏の仕事内容やその職に就くまでの略歴を担任から聞き,自分が将来就きたいと思う仕事への道のりと比較したり,クラスメイトと意見交流をしたりしながら,社会人2名への質問内容をまとめた。

(2)ICT機器を活用した意見交流会(12月)

【使用機器】
リコーTV会議・Web会議システム(リコーUCS),タブレット端末2台,大型スクリーン


 2時間構成とし,初めの1時間は児童のみで「自分の将来就きたい仕事」について意見交流をした。グループ活動を中心に,お互いの考えや思いを聴き合うことに重点をおいた。自分が将来就きたい仕事について,お互いに説明し合い,その仕事に就くために必要だと思うことや,現在総合的な学習の時間で学んでいる異文化理解とどのようなつながりがあるのかについて話し合った。
 残りの1時間は,TV会議を活用し,M氏とT氏の社会人2名にゲストティーチャーとして参加していただいた。
 まず,それぞれに自己紹介をしていただいた。M氏は,工業を学んだのち,中国文学を専攻され,中国への留学や語学学校のスクールマネジメントを経て,公立高校の国語科教諭をされている。T氏は,ラジオパーソナリティや結婚披露宴の司会を務めるなど,「話すこと」を仕事にされるとともに,中国語や韓国語などに興味をもたれ,社会人になってから勉強を始められている。
 次に,事前のアンケートをもとに,M氏には,「なぜ,英語ではなく中国語を学ぼうと思ったのですか」「中国語の勉強をしたのに,なぜ中国に関する仕事をしないのですか」,T氏には,「なぜ,大人になってから中国語の勉強をはじめたのですか」「司会をするときやラジオの番組で気をつけていることは何ですか」といった質問に答えていただきながら,異文化理解やキャリア教育に関する話をしていただいた。
 最後に,二人から,児童が現在学んでいる異文化理解の重要性について,「異文化理解,つまり他者の文化や考えを尊重したり,受け入れたりしようとする姿勢は,これからますます国際化していく社会の中で,非常に重要なものになってくるということ。また,他者とは外国の人を指すだけではない。他者とは,同じ日本に住む人をも指す。将来の仕事が外国人と直接関わるものでなくとも,自分と違う考え方や習慣をもつ人と関わりながら仕事や生活をしていく中で,相手を理解しようとする態度は欠かせないものである」というメッセージをいただいた。

 

写真1 ゲストティーチャーの紹介
 

写真2 仕事で不可欠な辞書の説明
 

写真3 質疑応答
 

写真4 メッセージを聴く児童たち

4 交流後の感想

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交流を終えた後の児童の感想

・私の将来の夢は眼科医。自分の将来の夢を二人に話し,アドバイスをもらえる時間があった。私はチャンスと思い,自分の夢について話した。すると,「眼鏡とコンタクトは外国の人も使うから,外国の物について知っておくといいよね」というアドバイスがもらえた。
・TさんとMさんは素敵な人だった。二人のすごいと思ったところは,次々に発表される将来のことに対して,一つずつ丁寧に答えていたところ。人の将来の夢は知らなかったはずなのに,あのように話してくれるとは思わなかった。思わず聞きたくなるような話だった。TさんとMさんのおかげで,「通訳」という夢に自信をもつことができた。
・自分の未来を考えるのは難しいし,悩んだり,迷ったりもする。そんな自分の未来を考えるのに,TさんとMさんのコツを教えてくれた。「自分の好きなことを見つけること」と「どんどん失敗して成功を見つけること」
・TさんとMさんは,小さい頃にもっていた夢はかなわなかったけど,今はちがうことを見つけて,楽しく仕事をしているということがわかった。
・TさんとMさんの話に,今の私の夢と直接関係があることはあまりなかったが,Tさんのように将来の夢が変わるかもしれない。だから,そのときになって関係してくるかもしれないので,話を聴けてよかった。
・異文化理解と自分の夢は全然関係ないと思っていた。でも,この時間を終えて,少し異文化理解と自分の夢が関係あると思った。自分の夢は,ゲームなどを作る人。ゲームの中には外国の言葉もたくさん出てくるので,英語や中国語を習おうと思っている。
5 成果と課題

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 <研究の成果>
 1時間目の後半,数名が児童全員の前で,自分の考えやグループのメンバーから助言された内容などを発表した。この間も映像と音声はつながっている状態であったが,児童側では,意見交流に集中できるよう,映像を見えないようにしておいた。M氏とT氏の側では,児童同士の話し合いや意見発表が見られる状態となっており,その様子を見ていただいたおかげで,その後の意見交流でどのようなことがアドバイスとして有効であるかや,児童の興味・関心がどういった方向であるのかをつかんでいただくことができた。時間をとらせることになってしまったが,これが質疑応答や意見交流がスムーズに進むことにつながった。
 ゲストティーチャーの方と交流会を行う前から,児童の多くが,これからの社会では,たくさんの外国人と触れ合う機会が増えてくるから,外国のことを知っておくといいということは認識していた。しかし,自分と異なる文化について,知識を得るだけにとどまらず,それらを尊重する態度や,それらを受け入れた上で自分の考えもきちんと相手に伝えることが重要であるというところまでには,理解が至っていなかった。M氏がおっしゃっていた「異文化理解というのは自分の身の回りに存在する。この人は自分と合わないなと思う人がいたとしても,それで関係を終わらせるのではなく,その人の良い部分や自分と似た部分に目を向ければ,そこから何かを得たり,関係が変わったりすることもある」という内容は,児童にとって非常に新鮮で,新たな価値観をもたらしてくれた。
 また,この実践では,これまで総合的な学習の時間で進めてきた異文化理解をテーマにするに当たり,将来の夢を取り上げたが,ここに社会人のゲストティーチャーを招くことで,キャリア教育という面からも異文化理解にアプローチすることができた。T氏の「将来の夢は変わる可能性がある。夢は一つとは限らないから,たくさん挑戦して失敗してもいい。自分の好きなことを見つけてほしい」というアドバイスは,児童の視野を広げてくれたと同時に,失敗を恐れる必要などないという安心感も与えてくれた。現在の仕事が小さい頃の夢とは一致しなくても,大きなやりがいをもって楽しく仕事をされているT氏の言葉だからこそ,非常に説得力があった。

<今後の課題>
 今回は3か所を鮮明な映像と音声でつなぐため,株式会社リコーの協力をいただいたが,インターネット回線の使用について,市の管理者への手続きが幾つか必要であった。さらなる成果を考えると,複数回実施したいところだが,交流相手の都合や市への手続きなど,周りの協力や相当な準備が不可欠である。
 3学期には,一人一人が一つの国または地域を選び,その文化や魅力についてインターネットや本を活用して調べ,クラスでプレゼンテーションをする。このような類の活動を2学期から始め,プレゼンテーションの制作段階でゲストティーチャーにアドバイスをいただき,3学期の発表会を参観して,講評していただくなど,継続性をもたせた活動にしていきたいと感じた。そのためには,ICT機器を学習の中でどのように生かすかというソフト面のレベル向上とともに,使いやすさを重視したハード面の環境整備にも取り組んでいかなければならない。


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