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SNSのメッセージ機能を利用した社会人との交流
4年 総合的な学習の時間
「クレッシェンドで行こう!未来につながる今の道」の実践
豊田市立井上小学校
 

 4年生の総合的な学習の時間において,「将来の夢の実現」をテーマとして,キャリア教育に取り組んだ。児童に,将来の夢を具体的に意識させて,夢に向かって進ませることがねらいである。
 ただ,職業調べでは,本やインターネットを用いればできるが,それだけでは学習が深まらない。そこで,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のメッセージ機能を活用してさまざまな職業の社会人と交流し,実際に働く人から生の声を聞き,仕事の大切さや大変さ,努力や工夫,やり甲斐などを感じることで,学習の効果を高める実践に取り組んだ。


1 交流の計画

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時 期

内  容

5月

本やインターネットによる職業調べ開始
 6月上旬 学年通信にてさまざまな職業のボランティア講師を募集 
 6月中旬 講師への依頼 
6月下旬 通信テスト

7月上旬

学年共通で学ぶ幼稚園教諭との交流開始
7月中旬 さまざまな職業の講師とグループごとの交流開始
11月 学習のまとめ
 2月 学習の発表と決意宣言(2分の1成人式)

2 交流の対象

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本校4年生児童80名(2クラス)
4年生の保護者を中心としたボランティア講師16

3 交流の実際

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 キャリア教育を充実させるためには,職場を訪問して仕事の様子を見たり,講師を学校に招いて仕事の話を聞いたりする場を,複数回設定することができればよいが,講師が近隣で働いている場合であっても,そうした機会を確保することは難しい。そこで,SNSのメッセージ機能を活用し,グループごとにいろいろな職業の人と複数回にわたり交流をする学習に取り組んだ。

(1)幼稚園教諭による出前授業(7月上旬) 
  まず,学年共通で幼稚園教諭の仕事について学習することにした。幼稚園教諭に来校していただき,直接顔を合わせて交流をする機会とした。児童は,事前に幼稚園教諭の仕事について本やインターネットで調べてはいたが,幼稚園教諭が語る言葉に興味津々で,驚いたり笑ったり拍手したりと,最後まで集中して話を聞いていた。この取組を学習への動機付けとした。
興味深い話で児童の心をつかむ幼稚園教諭

(2)幼稚園教諭とのビデオ通話交流(7月上旬)
  前回の出前授業で,児童は幼稚園教諭の話を興味深く真剣に聞くことができた。しかし,すぐにその場で学習を深められるような質の高い質問をすることができる児童はあまりいなかった。また,受動的な学びを能動的な学びにするためにも,振り返りの学習として,その場では気付けなかった疑問や新たに浮かんだ質問などについて話し合う場を設けた。
  講師に再び来校していただくことは難しいため,SNSのビデオ通話機能を利用した交流学習に取り組んだ。振り返りの学習を十分に行うことができたため,児童からは仕事をする意義や心構えなどについて,前回の交流時にはできなかったような内容の深い質問をすることができた。また,この実践は,次に行うグループごとの交流の練習を兼ねており,言葉遣いや姿勢,メモの取り方や情報モラルなど,社会人とインターネットを介してコミュニケーションをとるために必要なことを全員で学ぶよい機会となった。

ビデオ通話で幼稚園教諭に質問する児童

(3)グループごとの交流(7月中旬〜11月)
  学年通信を通して職業調べの学習へのボランティア講師を募ったところ,16名の保護者や地域の方に協力をいただくことができた。児童は,その中から興味のある職業の方を選び,グループごと交流をした。頼れるのはグループの仲間だけ,自分達でがんばらなくてはという思いが生まれ,緊張しながらも真剣に交流をする姿が見られた。講師は,児童の投げかけに対して,できるだけ早い返信を心がけてくれたので,児童はそれを心待ちにし,交流学習の時間をとても楽しみにしていた。
  SNSの簡易メール,ビデオレター,ビデオ通話の三つの機能を組み合わせ交流を行った。ビデオ通話による交流は,相手の表情を見ながら話をすることができ,質問に対する答えもすぐに返ってくるので,交流の実感が強くもてる。現に,ビデオ通話をしているグループの周りには,どのようなやりとりをしているのか気になって見に来る児童が多かった。しかし今回は,あくまでも総合的な学習の時間内での交流であったため,仕事の都合でリアルタイムの交流ができない場合も多かった。そのような時には,ビデオレターや簡易メールを送ったり,交流相手から届いたメッセージを読んだりするようにした。仕事の合間を縫って交流をしてくださる講師に感謝し,真剣に意欲的に取り組む姿が見られた。三つの機能を効果的に組み合わせた交流は,授業時間内の交流を可能にし,学習効果も高められることがわかった。

 簡易メールを使った交流   ビデオレターを使った交流

4 交流後の感想

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・仕事は楽しいけど楽ではないことが分かりました。それに,理容師は髪の毛を切ることだけが仕事ではなく,お客さんを喜ばせてあげることも大切だと分かりました。いろいろとがんばらなければいけないので,私もがんばろうと思いました。

・大人になっても勉強しなければいけないと知って驚きました。勉強って大事なんだなと思いました。

・自動車ができるまでに1,000を超えるテストがあるなんて知りませんでした。自動車は命を乗せているから,そんなにテストをするのです。僕も,家族が笑顔になれる自動車を作りたいです。

・早く仕事がしたいです。ちゃんとお給料をもらって,家族とおいしいものを食べたり,旅行に行ったりしてみたいです。仕事は大変だけど,仕事で幸せになれるのだから大切だと思いました。

・幼稚園の先生が,私たちが卒園した後のことも考えてくれていると分かって,うれしかったです。私もそんな先生になりたいです。ありがとうございました。

5 成果と課題

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<研究の成果>
  SNSのメッセージ機能を活用した交流によって,児童は「自分で調べ,考える」→「疑問に思ったことを質問する」→「求めていた回答以上の興味深いエピソードが返ってくる」→「意欲を高める」→「最初に戻って再び調べ,考える」という流れを繰り返すことができた。一度きりの交流ではなく,複数回にわたり何度も交流することができるからこそ,こうした循環が生まれ,児童の高い意欲と深い追究につながったと考えられる。
  学習前後のアンケート結果を比較したところ,将来の夢をもっていなかった児童も,「夢をもつことができた」「夢に向かって努力している」という項目が高くなった。また,働く意義についても深く考えるようになり,自分が将来働く理由として選んだ項目が,学習前よりも学級全体でおよそ30%増加した。さまざまな職業の講師から,自立して生活していくことの大切さなどについて学んだ成果だと考える。

<今後の課題> 
 タブレット端末やSNSの活用が交流を容易にし,学習の効果を高めることが分かった。今回は16人のボランティア講師に継続して協力していただき,これらの実践が可能となった。課題としては,多くの講師との打ち合わせや,多数のグループの指導を行う教師の負担が大きいということだろう。児童が送ったメールの内容が不十分であったり,誤送信をしてしまったりすることもあった。対応可能な講師の数やグループの適正数などを検討するとともに,SNSの機能をもっと効果的に活用する方法を検討する必要があるだろう。

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