テレビ会議システムを利用した心の距離を縮める遠隔授業 高等部2年 音楽「ボイスパーカッション」の実践 |
愛知県立岡崎特別支援学校 |
本校は,主に肢体不自由の児童生徒が通う特別支援学校である。多様な障害と児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教育を実践している。また,障害が重度であったり重複しているため特別支援学校に通学困難な児童生徒に対し,教員が家庭や児童福祉施設,医療機関等を訪問して指導する訪問教育(※)という学習形態もとっている。 訪問教育を受ける生徒(以下、訪問教育生徒)の一人は,重大な心臓疾患を患っている。その生徒は,中学部までは普通に登校して友達と一緒に授業を受けていた。しかし,病状が進み,運動や外出制限されることとなったため,高校進学に合わせて本校に転校し,訪問教育を受けることとなった。 そこで,本校の生徒と訪問教育生徒が交流を図りやすい音楽の授業において,テレビ会議システムで両者をつなぎ,リアルタイムでの合同遠隔授業を行うこととした。訪問教育生徒が,学校にいるような気分になり,たくさんの友達と一緒に授業を受ける喜びを再び感じられることを期待し,本実践に取り組んだ。 ※「訪問教育は、障害の状態が重度であるか又は重複しており特別支援学校に通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し,特別支援学校の教員が家庭,児童福祉施設,医療機関等を訪問して行う教育です」 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所のウェブページより |
時 期 |
内 容  | |||||||||||||
4月 |
訪問教育生徒との交換日記 訪問教育生徒からのビデオメッセージ |
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5月 |
交換日記による交流 |
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6月上旬 |
訪問教育生徒宅との接続テスト |
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随時 | 交換日記での交流,手紙による交流 | |||||||||||||
高等部2年生生徒10名 高等部2年生訪問教育生徒1名 |
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<学校側の生徒の感想> ・交換日記もいいけど,直接話せるっていいなと思った。 ・文字もいいけど,顔を見て話せるのがいい。 ・名前を声で呼ばれると,日記で話しかけられるより距離が縮まった。 ・昨年は高校との交流でテレビ会議をしたことがあったけど,授業を一緒にやったのは 新鮮だった。 <訪問教育生徒の感想> |
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<研究の成果> 音楽の合同遠隔授業を行うに当たり,インターネットで生じるタイムラグを考慮した授業計画を立てて実践した。また,授業の様子がリアルに伝わるよう,二つの視点(パソコンに接続したウェブカメラで全体の様子,タブレット端末の内蔵カメラで個別の様子)を準備した。そして,授業中,学校側のメインティーチャーから適切な言葉かけをすることによって,訪問教育生徒が授業を傍観したり,みんなから忘れられているような感覚をもたせないようにするなどの配慮をした。 このように,教員がチームとしてタイムラグを感じさせないように授業内容を工夫したり,見え方・聴こえ方を工夫したりすることは,大変有効な手段であったと感じている。この中で,最も大切だと感じたことは,訪問教育生徒に対する教員の適切な言葉かけである。ハード面とソフト面の相乗効果によって,生徒たちの心の距離を縮めることができたと実感している。 <今後の課題> ハード面では,映像や音声の質を確保しタイムラグを生じさせないような環境をつくることが必要だろう。訪問教育生徒宅の通信環境を利用するなどの方法が考えられる。またソフト面では,機器の操作に慣れていない教員でも,手軽に簡単にテレビ会議システムが利用できるように工夫して,今回のような実践が広げられるようにしたい。今後も,音楽の授業以外でも,テレビ会議を利用した合同遠隔授業を模索しながら,生徒同士のつながりを深められるようにしたい。 |