テレビ会議システムを利用した言葉の専門家との交流 6年 総合的な学習の時間「質の高いプレゼンテーションづくり」の実践 |
愛西市立佐屋西小学校 |
本校では,「人間性豊かな子の育成」を教育目標にしている。児童が互いに影響を与え合う授業,聴き合いを大切にする授業を目指し,小グループでの意見交流を中心とした児童主体の授業づくりに取り組んでいる。 6年生の総合的な学習では,「日本の文化を見つめよう」というテーマで,日本建築や伝統的な風習,和食や水墨画など,さまざまな日本文化について調べたり,体験したりしながら理解を深めている。今回の実践は,「古都の魅力を伝えよう」と題し,修学旅行で訪れた奈良と京都の魅力を5年生に伝えるという学習の過程において,言葉の専門家とも言える2名の社会人にテレビ会議を通じてアドバイスをいただき,質の高いプレゼンテ―ションにする取組を行った。 |
時 期 |
内 容 |
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5月 |
交流相手と連絡をとる |
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6月 |
交流相手と電話での打ち合わせ |
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7月 |
通信テスト@ |
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本校6年生児童45名(2クラス) |
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(1)交流相手への資料送付(6月下旬) 児童は,まずは修学旅行の感想やレポートなどを整理し,個々に振り返る活動を行った。その後,それぞれのクラスにおいて,「東大寺」「金閣・銀閣」「清水寺」「奈良・京都の見所」という4グループに分かれ,発表原稿やプレゼンテーション資料を作成した。教師がその概要をまとめ,交流相手に資料送付した。 交流相手は,昨年度にも別のテーマで交流していただいた方であり,2名とも言葉を大切にする職業に就いている。また,奈良・京都にもゆかりがあり,児童の発達段階に応じたアドバイスをしていただけるだろうと思い,今年度も依頼することにした。
(2)テレビ会議システムを利用した言葉の専門家との交流(7月)
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4 交流後の感想 | |||||||||||||
・アナウンサーの方からのアドバイスを生かして,文を読むときに“間”をとることにしてみました。気にしてやってみると,聞きやすいだけでなく,少し話しやすくなりました。本番ではこのアドバイスを生かしたいと思います。 ・今回の交流の中で,うれしいことがありました。それは,高校の国語の先生に「クイズの出し方がいいね」と言われたことです。私は,自分の文章やその工夫に自信がなかったので,とてもうれしい気持ちになりました。 ・高校の国語の先生から,「調べたことよりも,体験したことや感じたことを知りたいとみんな思うはず」ということを学びました。まちがえたときに落ち込まないで,次のことを考えるということも大切だと感じました。 ・アナウンサーの方から「知ってそうで知らないギリギリのところを言う」,「大切なところを強く言ったり,ゆっくり言ったりして,スピードを変える」という二つのことを教えてもらったので,ふだんの発言や発表にも利用していきたいと思いました。 ・グループの人たちと,「どこでクイズに入れればよいか」,「どんな文だったら伝わるか」などを考えながら資料づくりをするのが楽しかった。MさんもTさんも,私たちが発表しているときに,うなづきながら聞いてくれて,とてもうれしかったです。アドバイスも真剣にしてくれたので,今後の修正に生かしていけたらいいと思いました。 ・この交流では,文章を読むときの“間”によって,聞く人に興味をもたせることができるということを教えていただきました。私は今度,クラスのお楽しみ会のオープニングで,今回のような中継スタイルの司会をするのですが,そんな場面でも今日のアドバイスを生かして楽しくできたらいいなと思います。 |
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5 成果と課題 | |||||||||||||
<研究の成果> 昨年度に交流した方々と引き続き交流ができるということで,児童は親しみを感じ「お久しぶりです。今年もお願いします」という挨拶をして,学習をスタートさせることができた。交流学習では「何を学ぶか」ということも大切だが、「誰から学ぶか」ということも大切な要素となる。言葉の専門的な知識がある方というだけでなく,児童にとって「この方から学びたい」と思わせるような人間的な魅力のある方々と交流することによって,児童の前向きな姿勢が引き出され,充実した取組にすることができたのではないかと思う。 本実践の目的は,5年生に奈良・京都の魅力を伝えるためのプレゼンテーションづくりにおいて,言葉の専門家である交流相手の方に助言をいただき,より質の高いプレゼンテーションにすることである。遠方にいる複数の方々と交流することは困難であるが,テレビ会議システムを活用することによって,愛知・京都・広島の3箇所を同時につなぎ,交流を可能にすることができた。また,担任教師や保護者などのいつも接している大人とは違い,児童にとって“特別な存在”に自分たちのアイデアを認めてもらうことにより,児童の学びに対する意欲は大きく向上した。そして,質の高いプレゼンテーションにするための具体的なアイデアや改善点を学ぶことができた。また,児童がその場で考えた質問にも的確な助言をいただき,それらを生かして児童はすぐに資料や発表原稿の修正につなげることができた。 <今後の課題> 今回のように2クラス合同で各グループが順番に発表していくという方法では,各グループへの助言内容を全体で共有できるという利点はあるが,各グループの発表を聞いている時間が長いため,自分のグループの発表について助言を受ける時間が限られてしまうという欠点もある。今後は,グループ数を絞り複数回に分けて交流をしたり,掲示板やメールなど,他の通信手段を活用したりしながら,学習を深めていく必要があるだろう。 テレビ会議システムを活用した交流実践は,物理的・経済的な制限を緩和し,学びを広げたり深めたりする可能性があると感じている。今後も,学びの質を高められるよう努力していきたい。 |