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SNSのビデオ通話機能を利用した理科学習交流会  
中学3年・中学1年 「考える」をテーマにした実験を通して
江南市立西部中学校


   本校は,江南市の市街地より離れたところに位置し,学級数が14学級という中規模校である。本校の理科では,どの学年も積極的にICT機器を活用しており,デジタル教科書や書画カメラを日常的に活用した授業を行っている。理科では「なぜ」を大切に思考力を高める授業を心がけている。そのためにICT機器の活用は有効であると考える。今回は学校の枠を超えて,中学校3年生と1年生が離れた場所で同じ実験を行い,SNSのビデオ通話機能を利用して意見交流をするという実践を行った。
 科学的思考力を養う上で仮説や考察はとても重要なものであり,意見交換をすることで刺激され,生徒の学習をより深められると考えた。より効果が高まるような意見交換をするには,普段の環境ではない他の地域の生徒(他の学年の生徒)がよいと考え,東海市立上野中学校の1年生を交流対象とした。今回は,通常の授業で実践する準備段階として,両校の有志による実践を行った。互いの学校で同じ実験を行い,タブレット端末でビデオ通話をしながら仮説における意見交換を行った。さらに検証実験を済ませた後,考察し意見交流を行った。

1 交流の計画

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時 期

内  容

5月 交流校との打ち合わせ@

7月

通信テスト
交流校との打ち合わせA

8月

第1回学習交流会(自己紹介,二本のろうそくの実験)
第2回学習交流会(鉄球と磁石球の実験)

2 交流の対象

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本校3年生生徒13名(有志)
東海市立上野中学校1年生生徒20名(有志)

3 交流の実際

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(1)交流校との事前打ち合わせ(5月下旬)
 交流授業を行う前に,相手校の担当教員とSNSのビデオ通話機能を用いて,「当日にどんな実験を行うのか」「器具は何が必要なのか」「時間はどれだけかかるのか」といった内容の打ち合わせを行った。授業内容だけでなく,通信機器や通信速度などもお互いに確認を行った。
<機器の確認>
 @タブレット端末
 AWi-Fiなどの通信端末
 B大型ディスプレイ
 Cタブレット端末の画面をミラーリングする手段(無線or有線)
 ※@〜Cの項目について確認を行った。


(2)第1回学習交流会(8月上旬)
 1回目の交流では,通信テストも兼ねて自己紹介と二本のろうそくの実験を行い,授業の進め方を確認した。実験内容は「長さの違う二本のろうそくに同時に火を付け,その上からビーカーをかぶせるとどうなるか?」というものである。
〜流れ〜
 @本日の流れを説明し,互いに自己紹介を行う
 A実験のテーマ「二本のろうそく」について説明を受ける
 Bビーカーをかぶせるとどうなるのかを三択形式で予想する
  ア:短い方が早く消える
  イ:長い方が早く消える
  ウ:両方同時に消える
 Cア〜ウを選んだ理由と,なぜそうなると予想したのかを画用紙に記入する
 DCで作成した画用紙をもとに,相手校に自分の考えを伝える

 Eビーカーをかぶせて各班で検証実験を行う
 F検証の結果を基に,なぜそのような結果になったのかを考え,画用紙に記入する
 GFで作成した自分の考えを相手校に伝える
 H感想とお礼を相手校に述べる
〜生徒の様子〜
 自己紹介時には,これから何が始まるのだろうとわくわくしている様子だったが,実験が始まると表情が引き締まり,これまでの経験を基に自分の予想を組み立てていた。自分の考えを相手校に伝える際は緊張している様子だったが,しっかりと自分の言葉で伝えることができていた。検証実践で実際にどうなるのか確かめると,予想とは違う結果になり,かなり驚いていた。しかし,結果を受けてなぜそうなるのかを考えている様子は真剣で,目の前の課題に真摯に取り組んでいた。

   
自分の予想を相手校に伝えている様子 検証実験の様子

(3)第2回学習交流会(8月中旬)
 2回目の交流は,鉄球と磁石球の実験を行った。「レールの上に一列に並べた鉄球と磁石球に,鉄球をぶつけるとどうなるのか?」を考える実験である。

 実験に使用したレール  検証実験を行っている様子

〜授業の流れ〜
 @実験のテーマ「鉄球と磁石球」について説明を受ける
 A演示実験を見て(相手校にも配信して),鉄球と磁石球が並んだ列に鉄球をぶつける
  とどうなるかを選択形式で予想する
  ア:動かない
  イ:勢いよく離れる
  ウ:ゆっくりと離れて戻ってくる
 B自分の予想を理由とともに画用紙にまとめ,相手校に伝える
 C実際はどうなるのかを演示実験で確認(相手校にも配信)する
 Dなぜそうなるのか,各班で検証実験を行う
 E検証の結果と自分たちの考察の結果を相手に伝える
 F感想とお礼を相手校に述べる

〜生徒の様子〜
 予想を立てるまではスムーズに行えたが,検証実験を行い理由を考察する段階でかなり苦心していた。ハイスピードカメラを用いて事象をゆっくり再生すると,思わぬ発見があり,それを糸口に考察を進めていった。相手校は下級生であるため,下級生に理解してもらえるように言葉や説明を工夫して伝えようと努力している様子がうかがえた。言葉だけでなく実験器具を用いて,身振り手振りで相手に伝わりやすいように意見を発表していた。


相手校に実験の様子を配信  相手校に自分の考えを配信 

4 交流後の感想

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他学年の生徒と意見交換し合うと,身に付いている知識量が違うので意見が異なり,興味深いものとなった。

他校の生徒とディスカッションすると,自分が考えていなかったことに気付かされ,とてもよい刺激になった。

実験の予想でさまざまな考え方や結果についての意見を交流することで,自分の中でもいろいろな発想を得ることができた。「鉄球と磁石球」では,条件を変えて実験を行うことで規則性を見つけることができ,それを相手に伝えることができたのでよかった。

相手校が1年生ということで「どうしたらわかりやすいか」を中心に考え,図を用いたり言葉を選んだりして発表内容を工夫した。工夫をする中で自分自身の考えもより深められたのでよかった。

既に授業を受けて実験に対する知識を身に付けた3年生と,まだ知識を身に付けていない1年生との両方の意見が交流できたので,とっても素晴らしいものになった。違う視点でのものの考え方があるということを知ることができたのでよかった。

ビデオ通話を使った新しい方法で,他の学校の他学年の生徒と一つの課題に取り組めたので,ふだんの授業では得られない経験ができた。
5 成果と課題

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<研究の成果>
 
今回の実践に関する打ち合わせは,相手校に訪れることなく,すべてビデオ通話で行うことができた。実践に対する負担も少なかった。
 他地域・他学年の生徒と交流するということで,1回目の交流では生徒は遠慮がちな様子もあったが,2回目からは積極的に交流する姿が見られた。相手意識をもつことによって,検証実験や考察などに取り組む姿勢は,ふだん以上であった。生徒の感想からも,学習の効果が高かったことがうかがえる。

<今後の課題>
 
今回のような1回だけの交流ではなく,定期的な交流を行った方が学習効果は高いと考えられる。交流会を定期的に行うことで生徒の授業に対するモチベーションも高くなるだろう。そして,自分の考えを相手に伝える機会が増えることにより,表現力なども身に付けさせることにもつながるだろう。
 普段の授業でも,言語活動を取り入れてはいるが,定期的に他の学校の生徒と交流することは,自身の学校の同級生と交流するよりもよい効果を生み出すだろう。

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