交流実践のはじめにもどる>

「Skype」のグループビデオ通話を利用した保護者ボランティアとの交流
小学5年 家庭科
「気持ちよく過ごせる自分の居場所作りにトライしよう」の実践

豊田市立井上小学校

IMGP4142  IMGP2763
1.交流の計画 2.交流の対象      3.交流の実際        4.交流後の感想        5.成果と課題
 

小学校5年生の家庭科の時間において,整理整頓や清掃の仕方に関する学習で,家庭と連携した授業実践に取り組んだ。事前に,児童・保護者に話を聞いたところ,家庭科の授業で学んだことを家庭でほとんど実践できていないという実態が明らかになった。そこで,インターネットを活用し,学習の場である学校と実践の場である家庭をつなぎ,保護者ボランティアにアドバイスをいただきながら授業を進めることで,児童の家庭における実践意識を高められると考え,本実践に取り組んだ。

1 交流の計画

▲ページの先頭へ

時 期 内  容

10

上旬 保護者ボランティアの募集
下旬 保護者ボランティアとの打ち合わせ

11

上旬 保護者ボランティアとの直接交流による学習
下旬 保護者ボランティアとの打ち合わせ・通信テスト

12

上旬 保護者ボランティアとのインターネット交流「Skype」
※以後,交流を継続する
2 交流の対象

▲ページの先頭へ

5年組児童27
保護者ボランティア
3 交流の実際

▲ページの先頭へ

(1)直接交流による消費者生活に関する学習(11月上旬)
 消費生活の単元において,保護者ボランティアを講師として学校に招き,直接交流を行った。インターネットがいかに便利なものだとはいえ,もし会うことのできる相手なのであれば,できる限り実際に会って交流をした方が相手に対する親しみの感情も湧くし,その親しみこそが児童の学習意欲に大きな影響を与える鍵となる。授業で学習したことを家庭での実践につなげるためにも,できる限り保護者ボランティアとの心理的な距離を縮めておきたいという考えもあった。
 授業では,保護者ボランティアに,各家庭で実践している節約術などを紹介してもらった。児童は「家計の支出ランキング」や「商品購入で意識していること」などを,クイズや質疑応答形式で学んだ。授業の終末段階で保護者ボランティアが児童への願いを語った時には,児童は真剣な面持ちでうなずきメモをとりながら聞いていた。

<児童の感想>
「食費に5万円もかかっているなんて知りませんでした。しかも,きちんと工夫して商品を選んでいるのだからすごいと思います。残してはいけないなと思いました。」
「A君のお母さん,B君のお母さん,来てくれてありがとうございます。二人のお話はびっくりすることがたくさんあって面白かったです。勉強になりました。これからもよろしくお願いします。」

 保護者ボランティアと直接交流することによって,児童は授業と家庭生活との関わりを強く意識するようになった。また,保護者ボランティアに親近感を抱いたことで,今後の学習に意欲をもつことができた。

(2)インターネット交流による整理整頓・清掃に関する学習(12月上旬)
 直接交流の学習を生かし,インターネットを活用した交流学習に取り組んだ。整理整頓・清掃に関して学ぶ単元「物を生かして住みやすく」で実践した。Skypeのグループビデオ通話を利用し,保護者ボランティアに子ども部屋の机や棚などを映し出してもらい,整理整頓のこつを教えてもらった。児童は,「家事のプロ」からアドバイスをもらうことで目を輝かせ,家庭での実践意欲が高まったようであった(写真1)。
 教室と保護者ボランティア(名)の三者をつなぎ,保護者ボランティアには,リアルタイムで子ども部屋の机周辺を映し出してもらった。児童は積極的に質問し,整理整頓・清掃の必要性や難しさ,こつなどについて具体的に学ぶことができた(写真2)。



写真 保護者ボランティアとのグループビデオ通話の様子



写真 子ども部屋の整理整頓について質問をする児童の様子

同級生の部屋の様子を中継するとあって,児童は終始,興味津々であった。さらに,「○○が汚れているからだめ」などと改善点を指摘するだけでなく,「自分も同じだなあ」「分かってはいるけど,なかなか整頓する気になれないんだよなあ」など,整理整頓や清掃の難しさについて共感的に理解することができていた。「使ったらすぐに片付ければいい」「片付ける場所をきちんと決めておけばいい」といった「べき論」を言葉で伝えることは容易だが,それでは児童の実践意欲にはつながりにくい。本時で,実践することの難しさについて共感し合ったことが,その後の「工夫をして少しでも便利な部屋にしよう」「片付けが少しでも楽になるように日頃の整頓をしよう」という気持ちにつながったので,この取組は有効であったと思う。

また,授業の終末段階で,保護者ボランティアから自分の子ども時代の経験談を語っていただいた。保護者も,子ども時代には皆と同じようになかなか整頓できずに困っていたことや,だからこそ,皆に工夫を伝えることで皆によりよい生活が送れるようになってほしいと願っているという内容であった。児童は,まるで自分の母親から語りかけられているような表情で真剣に話を聞いていた。

本時の後,児童は整理整頓・清掃について具体的な実践内容を決定し,家庭での実践に移した。児童や保護者の話から,授業で聞いたことだけでなく,自分なりに工夫して考えたことも加えて実践する姿を確認することができた(写真3)。

<学習前>   <学習後>

IMGP3997

IMGP4142

 写真 学習前後の児童の部屋の比較

4 交流後の感想

▲ページの先頭へ

<児童の感想>
・お母さんたちも子どもの頃からしっかりしていたのではないことが分かり安心しました。でも,ちゃんと掃除ができるとよいことばかりなので,早くちゃんとできるようになりたいです。これからがんばっていきたいです。


・僕はめんどうだから,怒られてからやったり怒られてもやらないこともありました。でも,A君とB君のお母さんの話を聞いて,僕のお母さんはちゃんと僕のことを考えてくれていたことが分かりました。これからは怒られる前に,自分からやります。

・A君の机よりも私の机の方が汚いので,ちょっとまずいと思いました。それと,A君のお母さんが言っていた「きれいだとやる気がおきる」というのは本当だと思います。私も,きれいな場所だと勉強や遊びが気持ちいいです。

・よく「後でやればいい」と思ってしまいます。ちゃんと掃除ができると頭もよくなりそうなので次の授業が楽しみです。
5 成果と課題

▲ページの先頭へ

<実践の成果>
 保護者ボランティアと交流しながら学習を進めたことによって,児童の学習意欲は格段に高くなった。また,保護者ボランティアが整頓のこつなどを熱心に話してくださったり,児童の質問に丁寧に答えてくださったりしたので,児童は整理整頓や清掃の仕方について「もっと知りたい」と思うようになった。「家庭科が好き」と答える児童も増えた。また,休み時間には,自主的に道具箱の片付けをする児童の様子が見られるようになった。中には,友達の家に遊びに行き,遊びの一環として掃除をする児童も現れ,楽しみながら実践の輪が広がってきている。
 保護者ボランティアから教えていただいた片付けのこつは,ひと手間加えるだけで大きな効果があり,結果的には片付けが楽になるということを多くの児童が体感した。そのことによって,自分の家庭生活を見直し,自分の生活に合った工夫を見つけようとする意識が芽生えた。児童の様子からは,授業で学んだことを生活に生かそうとする姿がはっきりと見て取れる。この意識の変化こそ直接交流とインターネット交流を組み合わせて保護者ボランティアと交流した成果ではないかと思う。

<今後の課題>

 学習を進める中で,気になる点が一つあった。それは,保護者ボランティアに質問する活動があまりにも楽しくて手軽だったため,まるで自分の母親に「お母さん教えて」と聞くように,相手のことを考えずに何でも聞いてしまうということだ。保護者ボランティアとの距離を縮めることは大切だが,「親しき仲にも礼儀あり」であり,交流する際のモラルやマナーについての指導も並行して行う必要があった。改善し今後に生かしていきたい。