交流実践紹介

幼稚園と高等学校との交流
豊田市立若林幼稚園・愛知県立豊田南高等学校
 若林幼稚園と豊田南高等学校は、文部科学省の委嘱を受け、平成12年度から2年間交流を行ってきました。そして、それをきっかけとして、その後も交流が続いています。

若林幼稚園と豊田南高等学校の実践

1 交流の内容

H12年度
  • 高校生が来園し、幼稚園児の生活、実態把握
  • 豊田南高校文化発表会での幼児による歌の発表およびフラワーアレンジメントのふれあい遊びの交流
  • 高校生が幼稚園の誕生会に参加し、手品やハイパーヨーヨーを披露
  • 高校生と幼児によるパネルシアター作り
  • 幼児と高校生が収穫を喜び合うさつま芋掘り大会と試食会 
  • 高校生によるパネルシアター上演
H13年度
  • 幼児と高校生とのクッキー・ビスケット作り
  • 豊田南高校体育祭で高校生と幼児が一緒に障害物リレーに参加
  • プール遊び、シャボン玉、水鉄砲、砂遊びでのふれあい
  • 高校生の企画による輪投げ屋、風船屋、的当て屋などでのふれあい
  • 幼児と高校生が収穫を喜び合うさつま芋掘り大会と試食会 
  • 高校生がサンタクロースに扮し、共に楽しむリズム遊びやゲーム
H14年度
  • 豊田南高校体育祭で高校生と幼児が一緒に障害物リレーに参加
  • プール遊び、シャボン玉、水鉄砲、砂遊びでのふれあい
  • 幼児と高校生が収穫を喜び合うさつま芋掘り大会と試食会 
  • クリスマス、お楽しみ会

2 交流の様子
(1) 「今度、いつ来るの?」クッキー作り(5月)
 初めての交流の日、A君は「お兄さんたち、いつ来るの?」と朝から楽しみにしていました。いざ、高校生と対面すると、A君の表情はこわばり、担任の陰に隠れてしまいました。保育室からランチルームに移動する時、高校生のBさんがA君に「行こうか?」と声をかけてくれたので、「お姉さんが一緒に行ってくれるよ。よかったね。」と言うと、A君はお姉さんの優しい言葉に『このお姉さんなら大丈夫』と心を開いたのでしょう。うれしそうにBさんと手をつないで行きました。クッキー作りになって、A君は生地を粘土のようにこねるので、手の上でダラダラと溶け始めてしまいました。Bさんが「急いで作ろうね。」と手伝って作ってくれました。焼き上がったクッキーはとてもおいしく、帰る時間になるとA君は手を振りながら、「また、来てくれる? 今度、いつ来るの?」となごり惜しそうに呼びかけていました。高校生に声をかけてもらったり、困っているときに手伝ってもらったりして、高校生のお兄さんやお姉さんは『やさしい』という感情が子どもたちの心に残っていくことで、人への信頼感が育まれていくと思います。
(2) 「お兄さんは強い!」文化発表会参加(6月)
 高校の文化発表会に招かれ、高校へ出かけた時のこと、発表までの時間に武道場でお兄さんと相撲をとったり、お姉さんと追いかけっこをしたりして遊びました。始めは緊張していた子どもたちですが、高校生のC君が「お兄さんと相撲をしよう」と声をかけてくれました。子どもたちがC君を押していくと「うわー、どうしよう。」とC君はどこまで真剣になったらよいのか戸惑いながらしばらく組み合い、様子を見た後、「さあ、かかってこい」と声をかけてくれたり、「なかなか強いな!」とほめてくれたりしました。始めはわざと負けていたお兄さんも、「今度は全員倒すからね。」と次々に子どもを倒しました。子どもたちは「お兄さん、強い!」と驚き、「今度はみんなでお兄さんを倒そう。」と、数人で押し始め、高校生とのふれあいを楽しみました。高校生は子どもたちと接し、「元気だね。」とか「無邪気でかわいい。」と感想を話していました。このようにふれあうことは、人とのかかわりを深めるのに大切なことだと感じました。
(3) 「そうっとだぞ。ゆっくりだぞ」芋掘り交流(10月)
 お兄さん、お姉さんとの芋掘りを楽しみにしていた子どもたちですが、掘り始めると、土が硬く、D君は芋を掘り出せず、「出てこないよう。」と大声を出しました。それに気づいた高校生のE君は手伝い始めました。D君は芋が見え始めると、無理に引っ張るので、何本か折ってしまいました。E君は「あああ。」と残念そうにしながらも、「今度は最後まで掘るぞ。」と言いながら掘っていきました。芋を抜く時にも「そうっとだぞ。ゆっくりだぞ。」と声をかけていました。D君が「交代で抜こう。」というとE君も同意して、交代で芋を左右に揺らせていきました。E君の番になったところで、芋を揺らし、少し引っ張ると抜けてしまいました。E君が「ごめん、おれが抜いちゃった。」とあやまると、
「ここにお芋があるかな?」「ここを掘ってごらん」
D君は「いいよ。」と大きな芋を持って満足そうでした。E君は「久しぶりの芋掘りで、自分の方が真剣になっていることに気づいて…。楽しかったです。」と話し、一緒に来たBさんは「子どもたちって本当にかわいい。将来、幼児とかかわる仕事がしたい。」と感想を聞かせてくれました。子どもたちは高校生の思いやりのある行動に優しさを感じ、高校生は子どもたちの気持ちを考えて行動できるようになりました。
(4) その他の交流の様子
<水遊び>
冷たくて気持ちいい!
<フラワーアレンジメント>
こう切ってさせばいいんだよ
<パネルシアター上演>
「トントンお母さんですよ」
ジャンケンポン
お姉さんの負け!
<パネルシアター作り>
夏休み、汗を流しながら…
<南高校文化発表会 園児による歌発表>
ちょっぴり恥ずかしかったけど、大きな声で歌えました。かわいい歌声に拍手喝采!
<クッキー作り>
おいしいクッキー作ろうね!
歌、上手だったよ。

3 実践に触れて
(1) 豊田市立若林幼稚園長
 幼稚園は、人として生きていくための基礎を培う所です。そのためには、いろいろな人と触れ合い、 一人の人間として豊かな心、意欲的な態度を育てていくことが大切だと思います。そこで、今年度、豊田南高校生との交流事業を進めてまいりました。子どもたちは、高校生のお兄さん、お姉さんと 触れあう中で、人の優しさ、温かさに触れました。そして、心が豊かになったことと思います。 「人は信頼できる」と感じたのではないかと思います。人を信頼することは、心豊かに生きていく上で大切なことです。 今後も更に推進していきたいと思います。
(2) 豊田南高校2年生 男子
 私たち高校生は、普段全くと言っていい程、幼稚園児との交流はありません。正直、幼稚園児に対してあまりよい感情は持っていませんでした。ある日、若林幼稚園との交流が年に何回かあることを知り、あまり行きたくなかったのですが、行ってみて驚きました。みんな元気で素直な子ばかりで、幼稚園児に対する悪い感情は消えました。一緒に遊んで、とても楽しい時間を過ごすことができました。機会があれば、全校生徒で交流を深められたら素晴らしいと思います。
(3) 豊田南高校1年生 女子
 園児は活気があり、私たちに元気を与えてくれます。いも堀では、大きな芋を一緒に掘りだして感動。手作りのパネルシアターを喜んで見てくれた笑顔。園児の笑顔や元気な姿は自分の幼い頃を思い出させてくれました。私は中学生の頃にも、同じような交流を経験していたので、予備知識はあったのですが、今回は別の意味で、私たち高校生としての園児への思いを伝え、同時に園児たちからたくさんの反応を受けられたことを大変うれしく思いました。日頃味わうことのできない有意義な勉強の一つだと思いました。

4 交流の成果
(1) 幼稚園児
  • 交流前は不安がったり緊張したりする子どもが多くいましたが、繰り返し触れあうことで、高校生の優しさや力強さを感じ、高校生への信頼感を持つことができました。
  • 高校生の姿や行動を見て、あこがれやあんな風になりたいという気持ちを抱き、そうした思いが、将来を生きる力になっていくと思われました。
  • 友達同士ではなかなか思いを受け入れてもらえない園児も、高校生には自分の思いを受け入れてもらうことができ、友達とのかかわりを広げるのに役立ちました。
(2) 高校生
  • 幼児期の行動や考え方がわかり、幼稚園児の気持ちに沿った行動がとれるようになりました。
  • 交流の場面で、幼稚園児の目線に合わせてものを見たり一緒に遊んだりすることの大切さを知り、幼稚園児の気持ちを理解することで、幼児にあった言葉がけができるようになりました。
  • 幼稚園児が無邪気にかかわったり慕っていったりすることで、高校生も幼稚園児にかわいさを感じ、積極的にかかわる姿が増えてきました。
  • 交流の企画を自分たちで行うことにより、積極的な交流活動ができるようになりました。

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