学校紹介プレゼンテーションを通した情報活用能力の育成

−基礎的・基本的な知識・技術の実践的な活用とコミュニケーション能力の育成をめざして−

1 はじめに

 平成23年度現在、愛知県内の9つの高等学校に情報活用コースが設置されている。本校には平成18年度に情報活用コースが設置され、3年間で14単位の情報科目を履修するとともに大学や小学校との異校種間連携、資格取得や各種検定への挑戦等を通して情報活用能力の育成を図っている。本校情報活用コースの大きな特色の一つが小学校との異校種間連携である。情報活用コースの生徒が近隣の小学校を訪問して一対一で小学生にタイピング指導を行うというものであるが、単に生徒が小学生にタイピングを教えるということにとどまらず、授業の進行等も生徒が行っている。また、授業において使用する資料や教材等も全て生徒が作成している。
 今回は小学校との異校種間連携の中でも、授業の導入において行っている学校紹介のプレゼンテーションに焦点を当てて、その取り組みを紹介する。本校での実践事例は情報活用コースの生徒が小学生にプレゼンテーションを行うというものであるが、普通コースにおいても対象や場面を変えてさまざまな形で実践が可能であると考える。

2 授業の目標

3 プレゼンテーションの概要と役割分担

 プレゼンテーションソフトを利用してスライド資料を作成し、10分程度の学校紹介を行う。
 準備を行うに当たっては、クラス全体で取り組むために役割を細分化した。スライド資料は内容ごとに担当を分け、スライド資料作成に用いる写真やイラストも生徒自身に用意させることにした。  

内 容人数の目安
司会挨拶や学校紹介のプレゼンテーションを行う。3・4名
資料作成全般タイトルパージや目次、授業内容や手順のページを作成する。2・3名
行事修学旅行、文化発表会、体育大会等の行事を紹介するページを作成する。2・3名
部活動部活動の種類や活動の様子を紹介するページを作成する。2・3名
授業授業の様子や制作した作品を紹介するページを作成する。2・3名
写真撮影資料作成時に利用する写真を撮影する。5・6名
イラスト作成資料作成時に利用するイラストを作成する。5・6名

4 利用する情報機器及びソフトウェア

 使用する情報機器やソフトウェア等は生徒自身に選択させる。実際に利用したものは以下のとおりである。
情報機器等ソフトウェア
司会コンピュータ、プリンタ、プロジェクタ、レーザポインタプレゼンテーションソフト、ワープロソフト
資料作成コンピュータ、プリンタ、プロジェクタプレゼンテーションソフト
写真撮影コンピュータ、ディジタルカメラ画像管理ソフト、画像編集ソフト
イラスト制作コンピュータ、イメージスキャナ、ペンタブレット画像編集ソフト

 なお、本校では2・3年生が小学校との異校種間連携及び学校紹介プレゼンテーションを実施している。生徒は1・2年生次に以下のソフトウェアについて学習しており、基礎的・基本的な知識・技術を身に付けている。

5 授業の流れ及び指導実施上の留意点

 (1) 学校紹介プレゼンテーションの概要の説明
 プレゼンテーションの目的やプレゼンテーションを行う日時、場所、対象(聞き手)などを説明する。

 (2) 係及び作業内容の説明
 どのような係があり、それぞれの係がどのような作業を行うかを説明する。

 (3) 係決め
 生徒の希望を聞きながら係を決める。

 (4) 作業手順の説明
 全体としてどのような流れで作業を進めていくか、各係がどのような手順で作業を進めていくかを具体的に説明する。

 (5) 注意事項の確認
 作業を進めていく上で肖像権や著作権などの情報モラルについて考え、正しい判断と行動をとれるように注意喚起する。

 (6) 係間での打ち合わせ
 必要に応じて他の係と事前に打ち合わせを行わせる。

  ア 司会−資料作成      … プレゼンテーションの内容やスライド資料にまとめる内容、順序について確認を行う。
  イ 資料作成−写真作成    … スライド資料の内容や必要となる写真について確認を行う。
  ウ 資料作成−イラスト制作 … スライド資料の内容や必要となるイラストについて確認を行う。

 (7) 各係での作業
 係ごとに作業を行わせる。写真の撮影など、授業時間内だけでは準備できない場合には放課後も利用して準備を行わせる。

  ア 司会      … スライド資料の内容に合わせて原稿を作成する。
  イ 資料作成   … スライド資料を作成する。
  ウ 写真撮影   … スライド資料に必要な写真を過去の行事写真などから選択する。また、必要に応じて部活動の写真等を撮影する。
  エ イラスト作成 … スライド資料に必要なイラストを作成する。

 (8) 係間での連携作業

  ア 司会−資料作成      … プレゼンテーションの内容やスライド資料にまとめる内容、順序について確認を行う。
  イ 資料作成−写真作成    … スライド資料の内容や必要となる写真について確認を行う。
  ウ 資料作成−イラスト制作 … スライド資料の内容や必要となるイラストについて確認を行う。

 (9) リハーサル
 作成したスライド資料を用いてリハーサルを行う。リハーサル終了後、良かった点、悪かった点について意見を出させる。

 (10) 修正
 必要に応じて司会原稿やスライド資料の修正を行わせ、その後再度確認させる。

 (11) 本番

6 おわりに

 平成17年の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」において、21世紀は、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す、いわゆる「知識基盤社会」(Knowledge-based society)の時代であると述べられている。知識基盤社会においては、基礎的な知識と技能の習得やそれらを活用して課題を発見し解決するために必要な思考力・判断力・表現力その他の能力が必要である。しかも、身に付けた知識や技能は、陳腐化しないように常に更新する必要がある。これらのことを行うための基盤として情報活用能力がある。知識基盤社会において情報活用能力は「読み・書き・計算」と同様に欠かすことのどきない能力なのである。
 また、平成21年度改定の高等学校学習指導要領においては「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参画する態度」が引き続き情報教育の目標の観点に位置付けられている。
 今後も情報科の教員として、授業にとどまらずあらゆる場面を通じて生徒の情報活用能力の育成を図っていきたい。