画像の手作業によるディジタル化

1 はじめに

 音や画像がコンピュータで扱えるようにするために,どのようにしてディジタル化され,どのように表現されているか。ここでは,画像のディジタル化を例にその仕組みやディジタルデータの特徴について,生徒が体験的に理解できる実習として,本サイトの生徒実習課題例に公開されている「画像の手作業によるディジタル化」を取り上げ,実践を行った。

2 目標

 AD変換作業である標本化,量子化,符号化を手作業で行うことにより,コンピュータの内部で,画像が数値や文字と同じように「0」と「1」のビット列で表現されていること,AD変換の仕組み,そしてディジタルデータの特徴を体験的に理解させる。

3 指導内容

 ・標本化,量子化,符号化の仕組みを説明し,作業プリントに記入させる。
 ・生徒に用意させた写真に半透明のグラフ用紙を重ね,1mm四方のマス目を鉛筆で塗りつぶさせる。
  濃さは4段階(白,薄い灰色,濃い灰色,黒)とする。
 ・マス目の色を数値であらわして作業プリントに記入する。
  色は,白:0,薄い灰色:1,濃い灰色:2,黒:3とする。
 ・数値化したデータをデータ入力用ファイルに入力し,表示・印刷させる。
 ・印刷した画像を元の写真と比べることによりディジタルデータの特徴について考えさせ,作業プリントに記入させる。

 ≪使用ファイル≫
 ・作業プリント1(sagyou_print1.doc)
 ・作業プリント2(sagyou_print2.xls)
 ・データ入力用ファイル(sagyou_sheet.xls)

4 指導の流れ

1時限目(教室)
  学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(15分)
・画像のディジタル化
  (標本化,量子化)
・画像のディジタル化の仕組みを説明
・作業プリント,グラフ用紙の配付
・実習方法の説明
  実習方法説明時には,グラフ用紙のマス目に写真の4隅の角を合わせて印をつけさせる。また,単に写真を写すのではなく,グラフ用紙のマス目を塗るよう強調する。
展開
(30分)
・各自が用意した写真にグラフ用紙を重ねてマス目を4色(白・薄い灰色・濃い灰色・黒)で塗る。
・塗ったマス目の濃淡を数値0~3で表してプリントに記入する。
・机間指導し,補足説明を行う。
 曲線をそのまま写すのではなく,マス目を塗るよう注意する。
 写真の濃淡を4段階に分けるよう注意する。
まとめ
(5分)
・グラフ用紙,作業プリントの回収 ・グラフ用紙,作業プリントの回収
・次時の予告

2時限目(コンピュータ室)
  学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
・作業プリントを隣の席の生徒と交換 ・作業プリント,グラフ用紙の配布 ・実習方法の説明
展開
(35分)
・数値をデータ入力用ファイルに入力
・入力データの確認
・画像に変換し,表示
・画像を印刷し,隣の席の生徒と交換
・印刷した画像とプリントを提出
・データ入力用ファイルの使用方法を説明
・印刷方法を説明
・画像のディジタル化の仕組み
・ディジタルデータの特徴
・ディジタルデータの特徴について発問を行いながら説明し,プリントに記入させる。
まとめ
(5分)
・コンピュータの終了・確認 ・本時のまとめと次時の予告

5 評価規準

評価規準

  関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解
単元の評価規準 ・コンピュータにおける情報の表し方に関心をもっている。 ・AD変換において,実際のアナログデータにより近づけるためにはどのような工夫が必要かを考え,提案することができる。 ・手作業で標本化・量子化・符号化を行い,AD変換を行うことができる。 ・手作業によるディジタル化の実習を通して,AD変換の仕組みについて理解できる。
・標本化する画素数や階調数と画質の関係,およびデータ量の大きさとの関係を理解できる。
・ディジタルデータの特徴を理解できる。
学習活動に即した評価規準 ① 手作業によるAD変換に関心をもって意欲的に取り組んでいる。 ① 画像をより元の写真に近づけるには,画素数,階調数をどうすればよいか考えている。 ① 標本化について理解し,より細かい画像表現を工夫することができる。
② 量子化について理解し,階調数を変化させることによりディジタルデータの特徴である段階的な表現を行うことができる。
① AD変換に必要な標本化,量子化,符号化の手順を理解している。
② ディジタル化された画像はコピーしても劣化することなく正確に表示できることを理解している。
③ 画質をより高いものにするために画素数や階調数を増やすと,データ量も増えてくることを理解している。

指導と評価の計画

時間 学習内容及び活動
(指導上の留意点)
観点別評価内容 評価規準との関連 評価の方法
関心

意欲

態度
思考

判断

表現
技能 知識

理解
発表内容 提出物の内容 授業態度
1時間目 ◎ 画像のAD変換
・画像のディジタル化
 プリントの穴埋めを行いながら,AD変換の仕組み(標本化,量子化,符号化)について理解する。
・標本化,量子化,符号化の手順を理解している。          
・手作業による写真のディジタル化
 各自が用意した写真にグラフ用紙を重ねてグラフ用紙のマス目を塗り,マス目の濃淡を数値で表現する。
・意欲的に実習に取り組むことができる。
・マス目を正しく塗ることができる。
     
2時間目
◎ ディジタル化したデータをパソコンで表示
・ディジタル化した画像をパソコンで表示
 数値で表現された画像データを,隣の席の生徒と交換し,パソコンで実習ファイルに入力して画像データを表示・印刷し,自分の顔写真と比べる。
・グラフ用紙に書いた画像とほぼ同じ画像が作成できる。
・画像データを自分の顔写真と比べることにより,ディジタルデータの特性(再現性)について考えることができる。
       
・ディジタルデータの特徴について考察
 ディジタルデータの特徴について発問に答えながらプリントへ記入する。
・ディジタルデータの特徴について理解している。
・画質とデータ量の関係について理解している。
       

6 実践結果の考察

 本授業は当初2時限で実施する計画であったが,初回の授業では実習内容の説明不足によって実習作業に時間がかかってしまい,時間内に終えることができなかった。グラフ用紙がずれないよう写真の角に印を付けること,曲線をそのまま写すのではなくマス目を塗っていくことを徹底して説明することにより,以降の他クラスの授業ではスムーズに実習作業を進めることができた。いきなり写真をディジタル化するのではなく,前段階として簡単な文字をディジタル化してみるなどの工夫も考えられる。
 また,生徒に用意させた写真という身近な素材を使うことにより,生徒の動機付けとなったが,1mm四方のマス目を塗りつぶすという作業が細かすぎて,見づらく色分けが難しいという意見もあり,もう少し大きな画素で表現できる素材が用意できるとよかった。
 しかし,実習授業中の生徒の意欲的な取組や,提出物の内容から,AD変換の仕組みについての理解はこの実習によって深まったと考える。今後は,今回の反省点を踏まえ,解像度の違いを意識させるよう実習内容を更に発展させる工夫をしていきたい。

7 おわりに

 本実習の実践において,生徒は大変意欲的に取り組み,画像のディジタル化の仕組みについて体験的な理解ができたものと考える。コンピュータの仕組みをより体験的に理解する手段として,パソコンを使った実習だけでなく,手作業による実習も有効であり,今後とも授業の中へ積極的に取り入れていきたい。