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(2)インターネット上のやりとり(通信)は完全な匿名ではないことを理解させ,情報発信者としての心構えを身に付けさせる。
(3)不正アクセスを防止するために,ポート番号による通信遮断が有効であることを理解させる。
(2)TCP/IPのデータ通信(手紙のやりとりに例えて)
(3)IPアドレスとポート番号
・プリント1(tcpip_and_inet_security1.docx)
【2限】
・プリント2(tcpip_and_inet_security2.docx)
・メッセージ送信ソフトウェア(message.send.xlsm)
・メッセージ受信ソフトウェア(message_recv.xlsm)
・プリント3(tcpip_and_inet_security3.docx)
自作の送受信ソフトウェアを用いて、コンピュータ同士でメッセージの送受信を行う体験的な実習を試みた。受信する生徒には,受信ソフトウェアを使って特定のポート番号を指定してメッセージの受信待ち状態にさせ(図1),送信する生徒には,送信ソフトウェアに送信したい宛先のIPアドレスとポート番号を指定してメッセージの送信を行わせた。(図2) 通信にはIPアドレスとポート番号の両方が必要なことを体験させることによって、TCP/IPの通信の仕組みを理解させることができた。
(2)体験的な授業実践を通して
メッセージの送受信を行う実習では,生徒同士で「○○さんのアドレスはいくつ?」,「△△君のポート番号は何番?」と聞き合う場面も見られ,コンピュータ同士がやりとりを行うためにはIPアドレスとポート番号が必要になることを体感的に理解できたと考える。また,生徒用コンピュータからメッセージを送信することができていた教員用コンピュータにポート遮断の設定を行うことで,通信ができなくなることも実際に送信して確認することにより,実感できたのではないかと考える。
さらに,IPアドレスのWHOIS検索では,より生徒の身近な組織(自分の学校や大学,携帯電話会社,プロバイダなど)のIPアドレスからドメイン名登録情報を検索させることで,「ここまで簡単に分かってしまうのか」という生徒の反応が得られ,インターネットが必ずしも匿名でないことをより実感させることができた。
授業実践事例
TCP/IPにおけるIPアドレス・ポート番号の役割とインターネットセキュリティ
~メッセージ送受信ソフトウェアを使った体験的な活動を通して~
1 はじめに
TCP/IPの通信で使われるIPアドレスやポート番号の役割について理解させ,インターネットを利用するときのセキュリティについての意識の向上を目指すため,自作したメッセージ送受信ソフトウェアを使用し,コンピュータ同士のデータのやりとりの仕組みを体験的に理解させる授業の実践を行った。
2 単元の目標
(1)TCP/IPにおけるIPアドレス,ポート番号の役割を,体験的な活動を通じて理解させる。(2)インターネット上のやりとり(通信)は完全な匿名ではないことを理解させ,情報発信者としての心構えを身に付けさせる。
(3)不正アクセスを防止するために,ポート番号による通信遮断が有効であることを理解させる。
3 指導内容
(1)インターネットとIPアドレス(2)TCP/IPのデータ通信(手紙のやりとりに例えて)
(3)IPアドレスとポート番号
・メッセージ送受信ソフトウェアによって,IPアドレスとポート番号を指定した通信のやりとりを体験させ,IPアドレスやポート番号を変えるとどのような結果が得られるかを確認させる。
・ポート番号による通信遮断により通信ができなくなることを確認させ,不正アクセスの防止に有効であることを理解させる。
(4)インターネットと匿名性・ポート番号による通信遮断により通信ができなくなることを確認させ,不正アクセスの防止に有効であることを理解させる。
・インターネットでは匿名性が低いことを、実習を通じて理解させる。
▽使用ファイル
【1限】・プリント1(tcpip_and_inet_security1.docx)
【2限】
・プリント2(tcpip_and_inet_security2.docx)
・メッセージ送信ソフトウェア(message.send.xlsm)
・メッセージ受信ソフトウェア(message_recv.xlsm)
※「メッセージ送信ソフトウェア」「メッセージ受信ソフトウェア」はExcelのマクロ機能で動作するため、動作環境に留意してください。
※「メッセージ受信ソフトウェア」は,受信待ちになると制御がユーザに戻ってこないため,受信待ち状態を解除する方法として,「メッセージ送信ソフトウェア」からEXITというメッセージを受信したら受信待ち状態を終了する仕様としました。よって,「メッセージ送信プログラム」は,「メッセージ受信プログラム」とは別のプロセスで起動(別々のEXCEL画面を二つ並べて使用)してください。
【3限】※「メッセージ受信ソフトウェア」は,受信待ちになると制御がユーザに戻ってこないため,受信待ち状態を解除する方法として,「メッセージ送信ソフトウェア」からEXITというメッセージを受信したら受信待ち状態を終了する仕様としました。よって,「メッセージ送信プログラム」は,「メッセージ受信プログラム」とは別のプロセスで起動(別々のEXCEL画面を二つ並べて使用)してください。
・プリント3(tcpip_and_inet_security3.docx)
4 指導の流れ
▽1時限目((1)インターネットとIPアドレス (2)TCP/IPのデータ通信)
学習内容・学習活動 | 指導上の留意点 | |
---|---|---|
導入 (5分) |
<講義>IPアドレスの役割 ・インターネットとIPアドレス |
・プリント1の配布。 ・インターネット上で無数にあるコンピュータの中で,特定のコンピュータとやりとりを行うには,IPアドレスが必要となることを説明する。 |
展開① (12分) |
<実習>ipconfigコマンドの確認 ・ipconfigコマンドを実行し,自分のコンピュータのIPアドレスを確認してプリントに記入する。 |
・周囲の生徒のコンピュータのIPアドレスと見くらべて,同じIPアドレスがないことを確認させる。 (教員用コンピュータのIPアドレスを生徒用コンピュータと同じIPアドレスに設定し,どのような状態となるかを見せる。) |
展開② (18分) |
<講義>IPアドレスとポート番号 ・手紙のやりとりで必要になる情報をプリントに記入する。 ・インターネット上でのやりとりで必要になる情報をプリントに記入する。 |
|
展開③ (10分) |
<講義>TCP/IPの仕組み ・TCP/IPの基本を理解する。 ・TCPとUDPのメリット・デメリットを理解する。 |
・TCP/IPのデータのやり取りの仕組みを図示して説明する。 ・TCPとUDPのメリット・デメリットを,具体例を示して説明する。 |
まとめ (5分) |
<講義>まとめ ・本時の振り返り。 |
・本時のまとめと次時の予告を伝える。 ・プリントを回収する。 |
▽2時限目((3)IPアドレスとポート番号)
学習内容・学習活動 | 指導上の留意点 | |
---|---|---|
導入 (5分) |
<講義>本時の流れの説明と実習準備 ・メッセージ送受信ソフトウェアを起動する。 |
・プリント2を配布する。 ・本日の実習内容を説明する。 ・メッセージ送受信ソフトウェアを生徒用パソコンに配布し、起動するように指示をする。 |
展開① (25分) |
<実習>メッセージの送受信 ・生徒同士メッセージソフトウェアを使ってメッセージのやりとりを行う。その際に画面に表示されるTCPヘッダ,IPヘッダの内容をプリントに記入する。 |
・全生徒が教員用コンピュータのIPアドレスと固定のポート番号を指定して,メッセージを送るよう指示する。 ・IPアドレスを生徒のコンピュータのアドレスに変えたり,ポート番号を変えたりするとどのような結果になるかを確認させる。 |
展開② (15分) |
<講義>TCP/IPの仕組みと不正アクセス ・TCP/IPの仕組みを理解する。 ・ポート番号の役割や利用方法を理解する。 |
・TCP/IPのデータのやり取りの仕組みを図示して再度確認する。 ・不正アクセスの方法や,防衛手段としてポート番号による通信遮断が有効であることを説明する。 |
まとめ (5分) |
<講義>まとめ ・本時の振り返り。 |
・本時のまとめと次時の予告を伝える。 ・プリントを回収する。 |
▽3時限目((4)インターネットと匿名性)
学習内容・学習活動 | 指導上の留意点 | |
---|---|---|
導入 (5分) |
<講義>前回の復習 ・TCP/IPの仕組み |
・プリント3の配布。 ・前回までの内容を復習。 |
展開① (10分) |
<講義>IPアドレスの特徴と管理体系 ・プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスの特徴や管理体系について理解する。 |
|
展開② (10分) |
<実習>IPアドレスの調査 ・JPNICのホームページへアクセスして,WHOIS検索にてIPアドレスからドメイン名登録情報を検索し,結果をプリントに記入する。 |
・インターネットに接続する際に必ず必要となるIPアドレスからドメイン名登録情報等の検索が可能なことを説明する。 |
展開③ (10分) |
<講義>インターネットと匿名性 ・インターネットの匿名性についての説明を聞く。 |
・インターネットの通信の仕組みを図示して、匿名性が低いことを説明する。 ・インターネットを利用して犯罪予告の書き込み等を行われた時に,プロバイダを通じて個人を特定し、逮捕に至った事件を紹介する。 |
展開④ (10分) |
<実習>匿名の書き込みに対する対処 ・インターネット上の掲示板の自分を中傷する書き込みに対してどのような対処が有効か話し合い,最も有効と思われる対処法を三つ挙げる。 |
・生徒同士で話し合わせ,結果を数名に発表させる。 |
まとめ (5分) |
<講義>まとめ ・本時の振り返りをする。 |
・本時のまとめと次時の予告を伝える。 ・プリントを回収する。 |
5 評価規準
評価規準
関心・意欲・態度 | 思考・判断・表現 | 技能 | 知識・理解 | |
---|---|---|---|---|
単元の 評価規準 |
・インターネットの仕組みを理解しようとしている。 | ・情報の発信者として責任をもった表現や判断を行うことができる。 | ・コンピュータのIPアドレスを調べることができる。 ・IPアドレス(JPドメイン)の登録情報等を調べることができる。 |
・TCP/IPの仕組みや,セキュリティについて基本的なことを理解している。 |
学習活動に 即した 評価規準 |
① 実習に積極的に参加して、学習内容を理解しようとしている。 |
① 不正な書き込みに対する適切な対処法を考え、表現することができる。 | ① 自分のコンピュータのIPアドレスを調べたり、通信のためにIPアドレスやポート番号を設定したりできる。 ② WHOIS検索を利用して,グローバルIPアドレスの登録情報を調べることができる。 |
① TCP/IPの仕組みを理解し,そのメリットとデメリットを理解している。 ② ポート番号による通信遮断を行うことにより不要な(不正な)通信を減らすことができることを理解している。 ③ プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスの違いや,グローバルIPアドレスが組織的に管理されていることを理解している。 ④ IPアドレスからその利用者をどのような方法で特定することが可能であるかを理解している。 |
指導と評価の計画
時間 | 学習内容及び活動 (指導上の留意点) |
観点別評価内容 | 評価規準との関連 | 評価の方法 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
関心 ・ 意欲 ・ 態度 |
思考 ・ 判断 ・ 表現 |
技能 | 知識 ・ 理解 |
発表内容 | 提出物の内容 | 授業態度 | |||
1時間目 | ◎ インターネットとIPアドレス | ||||||||
・学習プリントを使い,インターネットにおけるIPアドレスの役割を理解する。 | ・IPアドレスがインターネットに接続されたコンピュータを特定するための位置情報であることを理解している。 | ① | ○ | ||||||
・ipconfigコマンドを実行し,自分のコンピュータのIPアドレスを調べ,プリントに記入する。 | ・自分のコンピュータのIPアドレスを調べることができる。 | ① | ○ | ||||||
◎ TCP/IPのデータ通信 | |||||||||
・インターネット上でのやりとりで必要になる情報について理解する。 | ・IPアドレスがコンピュータを特定する情報,ポート番号がプログラムを特定する情報であることを理解している。 | ① | ○ | ||||||
・TCP/IPの仕組みとその特徴をプリントの穴埋めを行いながら理解する。 | ・TCPとUDPのメリットとデメリットを理解している。 | ① | ○ | ||||||
2時間目 |
◎ IPアドレスとポート番号 | ||||||||
・メッセージの送受信ソフトウェアを使い,お互いにメッセージのやりとりを行う。 | ・コンピュータ同士がデータのやりとりを行うために,IPアドレス,ポート番号を適切に指定することができる。 | ① | ① | ○ | ○ | ||||
・TCP/IPのしくみと不正アクセスについて理解する。 | ・不正アクセスを防止するために,ポート番号による通信遮断が有効であることを理解している。 | ② | ○ | ||||||
3時間目 |
◎ インターネットと匿名性 | ||||||||
・IPアドレスの仕組みを理解する。 | ・IPアドレスの仕組みや、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスの違いを理解している。 | ③ | ○ | ||||||
・ドメイン名登録情報を調べることができる。 | ・IPアドレスからドメイン名登録情報を調べることができる。 | ① | ② | ○ | ○ | ||||
・自分を中傷する書き込みに対する対処法を考える。 | ・不正な書き込みに対して,有効な対処法を考え、発表することができる。 | ① | ○ | ○ |
6 実践結果の考察
(1)メッセージ送受信ソフトウェアを使った実習について図1 受信ソフトウェア"
(2)体験的な授業実践を通して
図2 送信ソフトウェア"
さらに,IPアドレスのWHOIS検索では,より生徒の身近な組織(自分の学校や大学,携帯電話会社,プロバイダなど)のIPアドレスからドメイン名登録情報を検索させることで,「ここまで簡単に分かってしまうのか」という生徒の反応が得られ,インターネットが必ずしも匿名でないことをより実感させることができた。
7 おわりに
今回は,IPアドレスとポート番号の役割に焦点を絞って授業を行ったが,TCP/IPのしくみを詳しく説明しすぎると授業のポイントが絞れなくなり,生徒の理解が中途半端になってしまう恐れがあると感じ,TCP/IPのしくみについては簡単な説明にとどめた。今後は,IPアドレスのバージョンやLANとゲートウェイの話など,関連する内容に広げて授業を展開していきたい。
また、「見たり」「感じたり」することによる体験的な学習が生徒の理解に役立つことを踏まえ,インターネット上のやりとりに潜む怖さを理解させる実習などを工夫をしていきたい。