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授業実践事例


表計算ソフトウェアによるアンケート調査結果の分析

データの分析による問題解決能力の育成


1 はじめに

 教科情報では,情報社会における問題の解決に向けて,情報機器を適切に活用して身の回りにある具体的な問題を解決する実習を通し,問題を解決する方法に関する知識や技能を習得させることが求められている。
 問題解決能力の育成については,問題の発見と明確化,分析,解決策の検討,実践,結果の評価などの基本的な流れを理解させるだけでなく,生徒の身の回りにある具体的な課題を設定し,生徒に問題解決を体験させることが求められる。今回は,表計算ソフトウェアを使ったデータの分析に焦点をあてて授業を実践した。統計的な分析の基本を理解させるために,集計データや分析事例を事前に準備しておくなど,生徒の理解が効率的に深まるように工夫した。

2 単元の目標

 ・問題を解決するために必要なデータを収集,整理,分析する方法を身に付けさせる。

3 指導内容及び教材

(1) 指導内容

  1) 問題解決におけるアンケート調査の方法と役割
  2) 表計算ソフトウェアによる複数データの関係分析

(2) 使用教材

  1) 教科書(グラフの表現)
  2) 授業用プリント(Wordファイル
  3) アンケート集計データ(Excelファイル)(ウェブページには掲載しません)

▽1時限目 問題解決におけるアンケート調査とは

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(12分)
・統計を使った問題解決の基本について理解する。



・実際に行われている調査結果の例を見て理解を深める。
・授業用プリント(Word)を配付し,アンケート調査の概要やデータ分析に必要な統計の基本など,統計データを使った問題解決の手法について説明する。
・統計局の調査,全国高校生調査などを例示し,どのように統計が利用されているかも紹介する。
展開
(35分)
・本校で実施した全校生徒対象の生活実態調査アンケートの集計結果表を見て,気付いたことを分析する。

・集計結果が掲載されたExcelファイルを配付し,シート「経年変化」を開かせる(このSheetは年度ごとの集計結果を割合で示している)。

・提示されたグラフを見て,表よりもグラフを用いた方が視覚的に分析しやすくなることを理解する。

・表計算ソフトウェアを使ったグラフの作成方法を習得する。

・仮説「数学を苦手としている生徒の方が多い」を題材として,複数のデータから分析する方法について理解する。


・何人かに気付いたことを発表させ,該当部分のグラフを作成し提示する。気付いたことが正しかったか判断させる。
・グラフの種類と特徴についても教科書を用いて説明する。
・下図のような円グラフを見せ,数学を苦手としている生徒の方がやや少ないことに気付かせる。また,生徒の発言を導きながら,属性によって回答分布が異なる可能性に気付かせる。

・クロス集計の考え方について理解する。
・表計算ソフトウェアを使って,ピボットテーブル,ピボットグラフを作る方法を習得する。
・仮説を分析するためのピポットテーブル,ピポットグラフを作成する。
・グラフから判断できることを考える。






・ピポットグラフの結果から,「男子は数学を苦手としている生徒が少なく,女子は約半数が数学を苦手としている」ことを理解させる。
まとめ
(3分)
・本時の復習

▽2時限目 グラフの作成(仮説検証分析)

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(5分)
・前時の復習 ・前時に説明したグラフの作り方を復習させる。
展開
(40分)
・本日の学習活動を理解する。

課題)次の4つの仮説について,表計算ソフトウェアを活用してデータから検証する。
仮説ア)
・女子の方が,朝食を食べないことが多い。
仮説イ)
・理系の生徒の方が,進路を決めている人が多い。
仮説ウ)
・1年生の方が親に何か言われて,うるさいと感じている生徒が多い。
仮説エ)
・睡眠時間が多いほど,授業を真面目に受けている生徒が多い。
・正解も不正解も含まれる4つの仮説を提示する。
・何人かの生徒に意見を聞いて,生徒の予想を確認する。
・提示された仮説から一つ選び,それを検証するためのピボットテーブルを作成する。仮説が正しいかどうかをピポットグラフ等を活用して分析し,その理由を考える。





・作成したピポットグラフと分析結果,その理由を発表する。



・グラフの種類や分析結果について正解を確認する。

・クロス集計の基本と留意点についてまとめる。
・仮説の分析結果と理由をExcelファイルに入力させる。
・時間に余裕がある生徒には,自分で仮説を考えて検証してみるよう指示する。
・完成したらExcelファイルを共有サーバの提出場所に保存させる。

・適切なグラフを作成し,分析結果を正しく記述している生徒を指名して発表させる。



・クロス集計によって,全体平均では見えない属性による比較が可能になるが,因果関係まではつかめないことが多いことを説明する。
まとめ
(5分)
・データの整理,分析方法についてまとめる。
・問題解決の流れ,仮説検証の流れを紹介する。

4 評価規準

評価規準

  関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解
単元の
評価規準
・問題解決の方法に興味関心をもっている。 ・収集・整理した情報を適切に分析し,表現することができる。 ・問題解決の各段階での基本的手段や方法を身につけ,活用することができる。
・問題を解決するために必要な事柄を収集・整理するための手段について理解している。
学習活動に
即した
評価規準
① 意欲的にデータの分析に取り組もうとしている。
① クロス集計から得られた情報を,適切に分析し,理由とともに表現できる。 ① 統計データからピポットテーブルやピポットグラフを作成することができる。 ① 実社会で行われているアンケート調査の目的や方法を理解している。

指導と評価の計画

時間 学習内容及び活動
(指導上の留意点)
観点別評価内容 評価規準との関連 評価の方法
関心

意欲

態度
思考

判断

表現
技能 知識

理解
発表内容 提出物の内容 授業態度
1時間目 ・問題解決の基本を理解する。 ・アンケート調査の目的や方法を理解している。
・生活実態調査から問題点を探す。 ・積極的に問題点を発見しようとしている。
2時間目
・問題解決の基本的な手段を活用する。 ・ピポットテーブルやピポットグラフを作成することができる。
・情報を適切に分析し,表現する。 ・クロス集計から得られた情報を適切に分析し,理由とともに表現できる。

5 実践結果の考察

 生徒の参加意欲,取組状況ともに良好であった。本授業を実施した1か月前に国勢調査が行われたばかりであったこともあり,多くの生徒が導入での話に興味関心を抱いていた。実施した時期がよかったと言える。
 ほとんど全ての生徒が,仮説検証に適したピポットテーブルやピポットグラフを作成し,クロス集計の基本を理解することができた。検証結果についても,グラフから読み取れる適切な判断をすることができた。一方,分析する上で適切なグラフを選ぶことができなかった生徒が数人いた。時間が足りなかったことや,グラフの種類や特徴について十分に理解していなかったことが原因として考えられる。

以下,生徒の解答事例(グラフ+分析結果)

 図1 状況に応じた適切なグラフを選択
 

 図2 実人数ではわかりづらいため,割合で提示
 

6 おわりに

 これまでは,問題解決の手法としてアンケート調査を取り上げる場合,質問作成から調査の実施,データ分析までを生徒に考えさせて実施していたが,適切な情報収集や結果分析にまで至らない場合が多かった。しかし,今回の取組のように,事前に教員が行ったアンケート調査のデータを分析させることにより,問題をより効率的,適切に分析する方法を理解させることができると感じた。
 問題解決の流れを理解させるためには,問題の発見,明確化,情報収集と分析,解決策の検討,実践,結果の評価を一つの課題の中ですべて経験させたいところであるが,時間の制約などから難しい場合がある。そこで,今回のように部分的に焦点を絞った授業を展開することで,学習内容を効率的に身に付けさせることが可能となる。身近な問題を発見する授業,分析をする授業,解決策を検討する授業など,それぞれ独立した授業を展開した後,総まとめとして授業でアンケート調査を全て最初から自分で考えて展開することで深い理解が得られると考える。