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授業実践事例

問題を解決する方法に関する基本的な知識や技能の習得(問題の明確化)

~スマホ依存の予防をテーマとして~

1 はじめに

 教科情報では,身の回りにある具体的な問題を解決する例題や実習によって,情報機器や情報通信ネットワークの適切な活用を通して問題を解決する方法に関する基本的な知識や技能を習得させることが求められている。 そこで,生徒にとって身近なテーマを設定し,問題解決能力を育成する授業実践を,アクティブラーニング型授業で行った。身近なテーマを設定したことにより,生徒は興味関心をもって主体的に取り組み,体験を通して思考力を高めることができると考えた。

2 単元の目標

(1) 単元
 社会と情報 情報社会における問題の解決

(2) 単元の目標
 情報機器や情報通信ネットワークを効果的に活用して問題を解決する方法に関する基礎的な知識と技能を習得させ,問題解決能力を育成する。

(3) 単元の指導上の留意点
 問題解決能力を育成するために,具体的な事例を示して,問題の明確化,分析,解決策の検討,実践,結果の評価などの基本的な流れを理解させることが必要である。

(4) 本時の目標
 生徒が日常的に使用している情報機器を題材として,問題を発見するための考え方と問題を明確化する手法を考えさせ,理解させる。

(5) 本時の指導実施上の留意点
 問題の発見と明確化に焦点を当てて授業を展開する。

3 指導内容及び教材

 ア 指導内容

  (1) 問題解決の手順,問題の発見と明確化(本時)
  (2) 情報の収集
  (3) 情報の整理
  (4) 情報の分析,解決策の決定
  (5) 解決策の実施と結果の評価

 イ 教材

  ・ 教科書
  ・ ワークシート(Wordファイル

▽1時限目(問題解決の手順,問題の発見と明確化)

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(10分)
●問題解決の基本的な流れ
・問題解決の基本的な手順について理解する。



・本時は,問題の発見と明確化について,具体的な事例を基に学ぶことを理解する。

・教科書を読ませて,問題解決の基本的な手順をワークシートに記入するように指示する。

・日々の生活における問題は,与えられるものではなく,自ら発見するものであることを伝える。
・問題の明確化とは,現状を明らかにすることと,理想の状態を明確にすることを伝える。
展開①
(25分)
●「スマホをつい使いすぎてしまう」に対して理想の状態を考えよう
・この時間のテーマ「スマホを使いすぎてしまう」の概要について理解する。


・「スマホをつい使いすぎてしまう」について,問題点を考える。


・ネット依存症についての説明を聞き,スマートフォンの使い過ぎが問題であることを理解する。



・「スマホをつい使いすぎてしまう」について,理想の状態を考える。ワークシートに自分の考えを記入する。

・理想の状態について,考えを発表し,クラス全体で共有する。


・黒板に書きだした意見について,問題を明確化できるように,クラス全体で多面的に分析する。






・総務省「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査」の結果より,理想とする状況を考える。


・今回の理想とする状況を,「スマホの使用時間を1日あたり2時間以内とする」という設定にすることを理解する。


・スマートフォンや携帯電話の使用状況を生徒に聞き,解決すべき問題として身近なテーマであることに気付かせる。

・一部の生徒を指名して,発表された意見を黒板に記入する。

・生徒から出された意見を踏まえながら,スマートフォンの使い過ぎと関連があるネット依存症についての資料を配布して,説明する。




・一部の生徒を指名して,生徒から出された意見を黒板に記入する。

・出された意見を黒板に記入する。
・生徒から出された意見について互いに批判や否定をしないようにさせる。
・さまざまな立場や状況を踏まえ,多面的で具体的な意見が出てくるように,なるべく多くの生徒から発言が出てくるように声をかける。

・調査結果の概要を紹介する。
・理想の状況を考えるにも,論理的に説明できることが必要なことを説明する。

・調査結果より,ネット依存の傾向が低い人のスマートフォンの1日あたり平均利用時間が2時間以内であることを説明する。
・ただし,この理想とする状況の設定が全ての人にとって正しいとは限らないことを補足して説明する。
展開②
(10分)
●理想の状態「スマホの使用時間を1日あたり2時間以内」に対して,現状を把握・分析しよう
・理想の状態「スマホの使用時間を1日あたり2時間以内」に向けて,まずは現状を把握するために収集すべき情報を考える。

・現状を把握するために収集すべき情報についての考えを発表し,クラス全体で共有する。

・収集すべき情報から問題の本質(その問題を引き起こしている主な原因)を理解する。





・一部の生徒を指名して,発表された意見を黒板に記入する。

・現状を把握するために,個人ごとに,スマートフォンの使用時間やアプリ別の使用時間,場所ごとの使用時間などのデータが必要なことを説明する。
まとめ
(5分)
・この後の問題解決の手順を理解する。


・感想をプリントに記入する。

・この後の問題解決に向けての流れを説明する。

・問題の発見において,今回は教員側からテーマを提示したが,何を問題と感じるかは人それぞれであることを補足しておく。


4 評価規準

評価規準

  関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解
単元の
評価規準
・問題解決の手順について興味関心をもっている。 ・具体的な問題を解決するために,適切な考え方ができる。 ・なし ・なし
学習活動に
即した
評価規準
① 問題の明確化に向けて,自分の意見や考えを積極的に表現しようとしている。
① 問題の明確化において,適切な根拠を示して,自分の考えを表現することができる。 ・なし ・なし

指導と評価の計画

時間 学習内容及び活動
(指導上の留意点)
観点別評価内容 評価規準との関連 評価の方法
関心

意欲

態度
思考

判断

表現
技能 知識

理解
発表内容 提出物の内容 授業態度
1時間目 ◎ 問題解決の手順,問題の発見と明確化
・問題の明確化をする ・自分の考えを表現しようとしている。
・自分の考えを根拠を示して表現できる。
・現状を把握するために必要な情報を具体的に考えることができている。


5 実践結果の考察

 問題解決という生徒にとって難しい単元のため,多くの生徒が興味をなくしてしまうと予想していたが,生徒が日常的に使う情報機器をテーマとしたため,生徒の意欲,取組状況ともに良好であった。
 また,授業後に書かせた生徒の感想では,「スマホの使いすぎに注意したい」というように今回のテーマについて考えようとしている内容が多く,問題解決の手順を学ぶ題材として適切だったと考えられる。さらに,少数ではあったが「論理的に問題をつきつめていくのが面白かった」といった回答もあり,物事を論理的に考察することを楽しいと感じている生徒もいた。
 しかし,その一方で,「理想の状態がいまいちピンとこなかった」「理想と解決策の区別が難しかった」「明確化するために何が必要かを考えるのは自分ではできなさそう」などの感想もあった。限られた時間数の中で,なるべく多くの事例を取り上げ,考えさせたかったため,今回のテーマについてはこの1時間のみとしたことが影響した可能性が高い。一つのテーマについて,問題の発見から,問題の分析,解決方法の検討,評価,改善案の検討まで取り組ませるなど,更に指導方法を改善することが必要だと感じた。

6 おわりに

 今回,生徒が自分で考え主体的に学ぶことを重視して,生徒にとって身近なテーマを取り上げて授業を実施した。しかし,生徒全員にそのテーマを「問題」として認識させ,問題を明確化する方法を考えさせるように授業を計画することが非常に難しかった。今後も,生徒の実態や興味関心を踏まえ,生徒の問題解決能力を高めることができるように教材研究をしてきたい。