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授業実践事例

音のディジタル化

~ディジタル化された音を音声編集ソフトで可視化してみよう~

1 はじめに

 音のディジタル化の仕組みは,情報の基礎理論に関わる基本的な学習内容である。しかし,音のディジタル化の過程を視覚的に確認することができないため,理解しづらいと感じる生徒が多い。
 そこで,音声編集ソフトを用いて音の波形を可視化するとともに,ディジタル化された音声信号のサンプリング周波数や量子化の段階値を変えて,波形やデータ量,音質を比較させる。そして,どのような変化があるかを確かめることで,理解を深める。
 

2 単元の目標

 ・アナログとディジタルの違いと特徴について理解させる。また,アナログデータをディジタル化する仕組みを理解させる。

3 指導内容及び教材

 ア 指導内容

  (1)ディジタル情報の特徴
  (2)静止画の扱い
  (3)数値や文字の表し方
  (4)音のディジタル化(本時)
  (5)色のディジタル表現
  (6)画像のディジタル化
  (7)圧縮の仕組み
  (8)さまざまな計算

 イ 教材

  ・ 教科書「社会と情報」
  ・ 副教材「社会と情報 学習ノート」
  ・ ワークシート(Word形式)
  ・ 音声編集・音声録音ソフトウェア「Sound Engine Free」

▽1時限目

学習内容・学習活動 指導上の留意点
導入
(5分)
<講義>本時の学習内容の確認
・本時の学習内容を理解する。

・「音」とは何かを生徒に質問して考えさせ,授業への興味関心を高める。
展開
(40分)
<講義>音の仕組みと性質の理解
・音は空気中を伝わる波として私たちの耳に届いていることを理解する。

・可聴範囲があることを理解する。

・音の仕組みと性質について理解したことを学習ノートに記入する。
・高低のある2種類の音を聞きながら,その音の波形をスクリーンで見て,音の高低や大きさで波形が異なることを理解する。
図1 高い音の例(フルート)

図2 低い音の例(チェロ)

<講義>音のディジタル化の基本的な原理と方法
・音のディジタル化の基本的な原理や方法について説明を聞いて理解する。理解したことを学習ノートにまとめる。

<実習>サンプリング周波数や量子化ビット数の変化による音の違い
・サンプリング周波数や量子化ビット数を変えた音楽データを聞き,音質やデータ量との関係を考える。
図3 サンプリング周波数や量子化ビット数を変えたデータの例

・音のディジタルデータのサンプリング周波数や段階値,データ量の関係について,ワークシートに自分の考えを書く。
●回答例「音のディジタル化の特性として,サンプリング周波数を高めたり,量子化ビット数を増やしたりすると,元の音の波形(アナログデータ)に近づくため,より正確なディジタルデータになるが,同時に,データの容量も増えることになる」

・音のディジタルデータの特性について正解を確認する。

・音は波のように空気の振動が伝わる現象であること,周波数について説明する。
・可聴範囲について説明し,モスキート音を紹介する。


・音の振動を可視化するソフトウェア「Sound Engine Free」を使い,音の高低や大きさにより波の形が異なることをスクリーンに映し出し,説明する。
















・音のディジタル化の過程を説明する。



・クラシック音楽を15秒間にカットし,サンプリング周波数44,100Hz,22,050Hz,8,000Hzの音を聴かせ,音やデータ量の違いを比較させる。また,量子化の段階値を16ビットと8ビットに変えて音を聴かせ,音やデータ量の違いを比較させる。













・ワークシートに正解を書いている生徒を指名し,発表させる。
まとめ
(5分)
<講義>本時のまとめ
・音のディジタル化の特性について,まとめの説明を聞く。必要に応じて,ワークシートに書き込む。

・販売されているCD,ラジオ,電話などを例に,サンプリング周波数や量子化の段階値がディジタル化されたデータに与える影響を解説する。

4 評価規準

評価規準

  関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解
単元の
評価規準
・ディジタル化について関心をもっている。
・積極的に実習に取り組んでいる。
・なし ・なし ・ディジタル化について理解している。
学習活動に
即した
評価規準
①音声データのディジタル化について関心をもち,実習を通して理解しようとしている。
・なし ・なし ①音声データのディジタル化の仕組みについて理解している。
②サンプリング周波数や量子化ビット数と,音質やデータ容量の関係を理解している。

指導と評価の計画

時間 学習内容及び活動
(指導上の留意点)
観点別評価内容 評価規準との関連 評価の方法
関心

意欲

態度
思考

判断

表現
技能 知識

理解
発表内容 提出物の内容 授業態度
1時間目 ◎ 音のディジタル化について
音のディジタル化 ・音のディジタル化の仕組みについて理解している。
音のディジタル化への興味関心 ・音のディジタル化に関心をもち,実習に積極的に取り組んだ。
ディジタル化された音の特性 ・ディジタル化された音の特性について理解している。

5 生徒の感想

 ・音を変えるとデータ量が変わることにびっくりした。
 ・サンプリング周波数の違いを調べる方法がすごく分かりやすかった。
 ・図で見たり,音を聞いたりすることができたため,分かりやすかった。
 ・音を正確に再現しようとすると,データ量が多くなることが分かった。

6 考察

 今回の授業では,実際に音を聞かせることや,ソフトウェアを使って波形を見せることで,音の聞こえる仕組みや音のディジタル化の方法や特性について生徒の理解を深めることはできた。ただ,サンプリング周波数の違う音を聞かせるとき,44100Hz→22050Hz→8000Hzの順で音を聞かせたが,44100Hzと22050Hzの音の違いが分かりにくいという感想が多く見られた。まず,44100Hzと8000Hzの音を比較させて,サンプリング周波数の違いが音質に影響を与えることを実感させるとともに,44100Hzと22050Hzの音を比較させて,音質にほとんど影響なくデータ量を減らすことも可能なことを実感させるようにするなど,聞かせる目的を明確にして指導すればよかった。
 また,今回,聴力に課題がある生徒がいた。サンプリング周波数や量子化の段階値を変えた音の違いは聞き取りにくかったようである。生徒の身体的な特徴を考慮し,対応を準備しておくことが必要である。