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1 目的
 バターの歴史は古く,紀元前2000年のインドの経典に登場する食品である。現在でも多くの料理や菓子類に使用される,私たちの生活に欠かせない食品である。
 バターの製造を通して,クリームの特徴を知り,バターの製造技術を習得することを目的とする。

2 実験手順
 (1)クリームとバターとは
  クリームとは,生乳から乳脂肪以外の成分を取り除き,乳脂肪分を18%以上にしたものをいう。
  バターとは,生乳から製造したクリームを原料とし,乳脂肪分を80%以上にしたものをいう。

種 類  特  徴  製造
難度
純乳脂肪   乳脂肪18%以上
添加物は一切なしで,「クリーム」と表示できる
 難しい

↑  ↓

 易しい
 品質や気泡性を維持するため乳化剤・安定剤を添加
 乳脂肪+
植物性脂肪
 別名:コンパウンドクリーム
乳化剤・安定剤を添加
 植物性脂肪  乳脂肪を全て植物性油脂に置き換えたものに乳化剤・安定剤を添加
 種 類 特  徴 
 発酵バター  原料のクリームを乳酸発酵させて製造したもの。
 無発酵バター  日本で最も多く流通している種類のもの。
加塩バター
(有塩バター)
 1〜2%の食塩を添加して製造するもの。無発酵バター同様に最も多く流通している種類のもの。
 無塩バター  クリームのみを原料に製造するもの。
表1 クリームの分類 表2 バターの種類

  (2)バターの製造
  原料  クリーム(乳脂肪40%以上のもの)   100g
       塩                    0.4〜0.8g

  道具  500ml程度の透明容器  レードル(おたま)  はさみ(カッターナイフ)  まな板  
       ラップフィルム  ヘラ
図1 原料のクリーム 手順1 透明容器(ペットボトル,ガラス瓶等)にクリームを入れる。
手順2 バター粒子(乳脂肪の集まり)が,大豆大の大きさになるまで容器を振り続ける。この操作をチャーニングと呼ぶ。 図2 チャーニングの様子(動画)
手順3 透明容器に冷水を加え,バター粒子についているバターミルクを洗い流す。水が濁らなくなるまで繰り返し行う。 手順4 透明容器から,バター粒子を取り出す。
図3 バター粒子(左)とバターミルク(右)
手順5 バター粒子をひとまとめにして,練り合わせる。余分な水分を取り除き,バター内の水分を均質に分散させる。この操作をワーキングと呼ぶ。
手順6 決められた大きさに成形して,冷蔵庫で冷やす。 図4 製造したバター(左)と市販のバター(右)
 製造したバターと比較して,市販のバターは黄色味を帯びている。
3 まとめ(留意点)
・バターの製造では,バター粒子は気温が高いと溶けて液体となってしまうため,15℃以下の室温で製造する。また,チャーニングの操作では透明容器に長時間触れていると体温でバター粒子が溶けてしまうため,手早く行う。
・ワーキングが長すぎると,水分の少ないバターになってしまう。水分が少ないと,冷蔵庫から出した直後は固く,使用しにくいため注意する。
・製造したバターの色は,乳牛が食べた牧草に含まれるカロテン(橙色色素)がチャーニングにより発色したものである。季節によって牧草中の色素含有量が変化するため,白くなることもある。市販のバターはβカロテンを添加していつも同じ色になるように調整している。
・通常,水と油は混ざらないが,クリームやマヨネーズのように,水の中に油が分散している(水中油滴型(O/W型))ものや,バターやマーガリンのように,油の中に水が分散している(油中水滴型(W/O型))ものもある。このように水と油が混ざっている状態を乳化と呼び,乳化を助ける物質を乳化剤と呼ぶ。食品に使用される乳化剤には卵黄や大豆に含まれるレシチンが使用される。
・クリームに使用される安定剤は多くが増粘多糖類である。多糖類にはデンプンや寒天等,植物の種子や海藻から抽出した物質により,粘り気を付けることで泡立てて絞り出したときの形を保つ役目がある。 
 (参考文献)
 松本信二他10名,食品製造,実教出版株式会社(2009)