1 はじめに 造園設計技術者養成システムでは,庭園や公園などの生活環境空間のデザイン図面,設計図がパソコン(eE−CADシステム)で作成することができる。これを活用した技術習得や,ICT教育と関連付けた発展的な学習について実践を行った。 2 指導目標 製図の基礎技術(庭園及び公園の平面図,立面図,断面図,透視図)に加え,作庭に使われる植物や造園材料の特徴,施設の特性や施工方法を生かしたCADの図面作成能力を養うことを目標とした。また,自ら考案した作品について制作意図などをプレゼン発表することで,ICT活用能力を養うことも目標とした。 3 指導計画 指導目標に基づき,第3学年で履修する科目「造園計画(3単位)」,「造園デザイン(2単位)」において学習する内容として,本システムを用いた庭園図面作成を取り入れた。
4 造園CADの利用とICT活用能力の育成実践 (1)造園CADの基本操作方法の習得 CADソフトの操作方法を習得させるため,作庭手順概要を記したプリントに従い,実際に庭園図面を作成した。ここでは復習に備え,操作方法の学習を行った。なお,今回用いたCADソフトの操作手順概要は以下の通りである。 ア 作図手順の簡略 敷地・建物基礎→ユニット(塀,床,車庫等)→造園(植栽,添景物)→注釈と各レイヤ(画層)に分かれており,それぞれのレイヤで作図をしていく。基本的に入力作業は2次元で,3次元処理はパソコンで行い,デザイン面の急な変更に対応しやすくなっている。 「敷地・建物基礎」図1,「ユニット・フェンス」図2,「造園」図3の順で作成している。
イ 施設及び樹木データ入力 実際現場に使われている建材メーカー製品(カーポート,フェンス,床素材)が選択できる。また,多くの樹木・樹形データがある。さらには,近年の各庭園で使われている枕木やプランターなどの素材も設定が可能である。
ウ 空間把握の育成と仕上がり図面の精度向上 素材や材料は大きさや高さの指定や変更ができ,全体に対しての尺度が把握しやすい。 また,イメージパースを見れば現在の庭園のイメージが把握でき,デザインの向上につながる。
(2) 庭園図面の作成と発表,展示 学習意欲を高める方法の一つとして,造園関係のデザインコンクールへの応募を行った。その際,課題の構想から計画,平面図までを簡単な手書きで作成したイメージ図やそれに近い写真等を用意させ,作成する庭園のコンセプトをはっきりさせることが大切である。また,作成途中の材料や各施設の変更点は,随時手書きの平面図に書き込ませ,自分の考えを確認できるようにしている。これは,思いつきで図面を変更し,構想やコンセプトが変わらないようにするためで,効率的な時間の利用や作品の質の低下を防ぐ目的もある。 (3) 庭園デザイン発表会による作品紹介 写真1 発表会の様子 完成した庭園図面は,2・3年を対象に発表会を行っている。発表は,完成までのプロセスと,完成作品,そして制作意図や工夫した点などの感想,課題や反省をまとめたもので,各自思い思いの方法で発表した。(写真1)発表会に出席している生徒全員が施主もしくは審査員となり,発表の内容や方法・態度及び完成作品内容を評価し,研さんを積んだ。これにより,次の作品の制作や次年度への取組に反映が可能となる。 (4) 評価方法 観点別評価を行うため,各学期の考査以外に,実技試験(技能・表現)を行った。(写真2)また,提出プリントの内容や授業態度を評価材料(関心・意欲・態度)としている。生徒が完成度の高い,多種多様な庭園図面を作成するため,システム導入前と比べ評価は難しいが,基本的な作庭技術の誤りや作成状況(進度や操作技術),図面の仕上げ状態を定期的に確認することで可能となる 。また,庭園図面の発表会では,プレゼンテーション技術だけでなく,生徒の図面に込めた想いがうまく表現されているかについても評価の対象としている。 写真2 造園CAD実技試験 5 おわりに 時代に対応したシステムの導入と,これを活用した発展的授業により,生徒の造園に対する興味関心は格段に高まった。コンクールに応募した作品も多数入賞することができた。さらに,本システムを応用することで,地域の「とよた緑花まつり」に出展したミニ庭園を完成させた。(写真3)これは多くの関連企業からも注目され,成功を収めた。 本実践において,複合的な教育効果を確認することができた。今後も活動を継続していきたい。 写真3 豊田緑化まつり展示庭 |
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