1 目的
日頃の実験や実習で扱っている,植物や動物の器官の一部を走査型電子顕微鏡を使って観察し,電子顕微鏡の特徴や操作方法について学習する。
2 走査型電子顕微鏡とは
・実体顕微鏡などでは観察できない高倍率で試料を観察できる。倍率は50倍から100万倍である。
・光を必要とする光学顕微鏡に対して,電子顕微鏡は真空内で電子線を照射し,反射した電子線を解
析して試料最表面のデータを画面に映す。
3 試料について
(1)できるだけ,小さく凹凸の少ない試料の方が,ピントが合いやすく全体を観察できる。
(2)乾いた試料は,金属コーティングをすればすぐに観察できる。
(3)水分を含む試料(生葉など)は,脱水処理をしなければ変形してしまう。
※今回は乾燥試料として,レタスとニンジンの種子を観察した。
4 試料の金属コーティング
(1)乾燥試料は導電性をもたないため,観察試料としては不適当である。そのため,白金パラジウム合
金などの薄膜をかぶせる処理が必要となる。
(2)金属コーティングの方法には,イオンスパッタ装置と真空蒸着装置による方法と,試料に重金
属を染み込ませて導電性をもたせる方法がある。
※今回はイオンスパッタ装置を使い金属コーティングを行った。
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図1 試料台にニンジン(手前)と
レタス(奥)の種子を両面テープ
で固定する。 |
図2 イオンスパッタ装置にて,
金属コーティングを2分から
3分程度行う。 |
図3 金属コーティングにより白金
パラジウム合金の薄膜がかぶ
さった状態。(ニンジン種子) |
5 走査型電子顕微鏡内へ試料を固定し,試料室内を真空状態にする。
6 観察
・加速電圧について
電子銃から放たれた電子を試料に照射する際に,電子を加速するために加速電圧を与える。加速
電圧を高くすると,照射される電子は高いエネルギーをもつ。加速電圧は観察画像に影響し,同じ試料
を観察しても加速電圧により異なった見え方をする。加速電圧を低くすれば,試料表面の微細な構造
をより鮮明に観察することができる。また,加速電圧を高くすれば画像の鮮明度が高くなるので高倍率
観察に向いている。
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図4 試料表面を鮮明に観察する
ため,加速電圧を5.0kV,電子
ビームを電子ビームを25に設定。 |
図5 ダイヤルを操作し倍率とピント合わせをする。最初は低倍率で
ピントを合わせ,試料全体を観察する。その後,倍率を上げ表面
の微細な構造を観察する。 |
7 観察結果
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図6 ニンジン(セリ科) 50倍 |
図7 ニンジン(セリ科) 500倍 |
図8 ニンジン(セリ科) 1,500倍 |
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図9 レタス(キク科) 80倍 |
図10 レタス(キク科) 600倍 |
図11 レタス(キク科) 1,500倍 |
8 その他の観察記録
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図12 ヒメヒマワリ(キク科)の花粉
1,000倍 |
図13 ペチュニア(ナス科)の花粉
2,000倍 |
図14 マリーゴールド(キク科)の花粉
2,500倍 |
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図15 ハエの羽 200倍 |
図16 ハエの羽 1,200倍 |
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図17 ウサギの赤血球 1,000倍 |
図18 ウサギの赤血球 9,000倍 |
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