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1 はじめに
 中部国際空港株式会社セントレアと連携して,グリーンカーテンの共同育成活動に取り組んだ。以前,同じ場所でゴーヤによるグリーンカーテンを育てた。しかし,果実は少しできたものの生育不良株や病害虫の発生がいくつか確認された。そこで,これまでの活動における問題解決に向けた植物の選定,根腐れによる生育不良株や病害虫の発生予防の改善策としての調査を目的に,グリーンカーテンの共同育成活動を行った。

2 目的

  (1)室内におけるグリーンカーテンの栽培が可能かどうか検証する。
  (2)空港に訪れるお客様へ緑と潤いを与えられる栽培を行っていく。
  (3)習得した育成ノウハウを今後地域に還元していく。


3 供資材料
 (1) パッションフルーツ
 本研究に使用した植物材料として,パッションフルーツと呼ばれているクダモノトケイソウ(時計草)を選択した。この植物は,熱帯性のつる性植物で,グリーンカーテンに適した特徴がいくつかある。

 (2)パッションフルーツの長所
  ・葉に光沢があり,ユニークな花と果実をつけるので観賞用としての価値も高い。
  ・日差しや乾燥に強く,残暑の厳しい秋まで栽培することができる。
  ・挿し木での繁殖が容易で苗代のコスト削減が期待できる。
  ・果実は,生食可能で甘酸っぱさが魅力。ビタミン豊富なトロピカルフルーツである。
  ・病気や害虫の被害が少ない。


4 グリーンカーテンの設置方法と経過
 (1)土づくり
  ア 培養土に赤玉土とくん炭を混ぜ,プランターの鉢底に竹炭を敷いて排水性を高めた。


鉢底に竹炭を敷く画像 培養土と赤玉土の画像
図1 鉢底に竹炭を敷き排水性を高める工夫 図2 培養土(左)と赤玉土(右)

くん炭の画像 くん炭、培養土、赤玉土を混ぜた用土の画像
図3 籾殻もみがらを蒸し焼きにてできた「くん炭」 図4 くん炭と培養土,赤玉土を混ぜ用土の完成
  
用土利用の画像 混ぜ用土に苗を定植する画像
図5 混ぜ合わせた用土をプランターへ 図6 プランターに3本の苗を定植

  イ 病気や害虫の発生を抑えるため,鉢底に根腐れ防止剤と粉砕瓦を使用した。
 
根腐れ防止剤を敷く画像 粉砕瓦の画像
図7 根腐れ防止剤を鉢底に敷く 図8 廃瓦を砕いた粉砕瓦

粉砕瓦を敷いた画像  粉砕瓦に苗を定植した画像
図9 粉砕瓦を敷き詰め水をいれる 図10 プランターに3本の苗を定植

 (2)グリーンカーテンの成長記録

定植後の画像(5月下旬) 誘引作業の画像(5月下旬)
図10 5月下旬(定植) 図11 5月下旬(定植,ネットに誘引)

開花した時計草の花の画像(5月下旬) 肥大し始めた果実の画像(6月中旬)
図12 5月下旬(開花した時計草の花) 図13 6月中旬(肥大し始めた果実)
    
蔓の画像(6月中旬) 摘心後の画像(6月中旬)
図14 6月中旬(蔓の長さ1mから2m) 図15 6月中旬(摘心して側枝の発生を促す)
側枝が伸び始めた画像(6月下旬) 側枝が伸びた画像(7月下旬)
図16 6月下旬(側枝が伸び始める) 図17 7月下旬(側枝も伸び緑カーテンらしくなる)
側枝が伸び厚みが増した画像(8月中旬) 2回目の摘心後の画像(8月中旬)
図18 8月中旬(さらに側枝が伸び厚みを増す) 図19 8月中旬(2回目の摘心,高さをそろえる)
9月中旬の画像
図20 9月中旬 図21 10月上旬(マウスポインタを合わせると3カ月
    前の画像に戻ります)
 
自然落下した果実の画像(10月中旬) 完熟した果実の画像
図22 10月中旬 自然落下した果実 図23 10月下旬 完熟した果実
完熟果実を切った画像 感謝状贈呈式の画像
図24 完熟果実の断面。糖度は14度。 図25 セントレアより感謝状をいただく。(12月)
 屋内から見たグリーンカーテンの画像(10月中旬)
           図26 10月中旬 ガラス面を覆いつくすまでに成長したグリーンカーテン
 
 屋外から見たグリーンカーテンの画像(10月中旬)
           図27 10月中旬 屋外から臨むグリーンカーテン
 
5 結果および考察
 (1)5月24日(木)に定植をしたが,生育は苗の大きさによる個体差があり,初期生育にばらつきがあった。セントレア側の水管理が徹底されており,9月まで枯れた株は一つもなかった。
 (2)7月の生育は旺盛で,摘心を4回ほど実施した。枝葉の成長を促すために,花の摘花を行った。そのため,花や果実を鑑賞できる工夫があるとよかった。
 (3)ガラスの表面にUVカットフィルムを貼った区画を設け,成長の比較をしたが,著しい成長の違いは見られなかった。
 (4)病害虫対策として,粉砕瓦を用土として試みたが,成長は貧弱であった。対照区の培養土では,匂いもなく病害虫の発生も少なく,成長は旺盛であった。
 (5)摘心後は,花つきも悪く,多くの果実をつけることはできなかった。
 (6)グリーンカーテンという目的があり,つるの摘心を行ったが,摘心をせずに伸長させる誘引方法などを考えると良かった。

6 今後について
 (1)グリーンカーテンだけでは,緑一色であり空港の通路としては寂しいので,もうひと工夫が必要である。
 (2)プランターの苗を冬越しさせ,比較実験していきたい。