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1 目的
 植物ホルモンの一つであるジベレリンはイネの馬鹿苗病から発見された。このような植物成長促進物質は他のさまざまなものにも存在する可能性が高い。しかし,一般的に有益菌の分離は費用的にも・技術的にも困難なものと考えられてきた。そこで,今回は専門的な実験機器を使用せず,家庭でもできる資材で有益菌を分離することを目的とし,菌の簡易分離実験を行った。

2 実験手順
 (1) 培地準備
 培地としてPDA(Potato Dextrose Agar)培地1リットルを作成する。 事前準備として手順1,2の作業をしておく。


手順1の画像 手順2の画像
手順1 あらかじめビーカーを煮沸滅菌しておく。 手順2 保管容器を70%エタノールで消毒しておく。

手順3の画像 手順4の画像
手順3 ジャガイモの皮をむいて200g用意する。 手順4 ジャガイモを1cm角に角切りする。

手順5の画像 手順6の画像
手順5 ジャガイモを鍋に入れ水道水1リットルを加え沸騰させる。沸騰後20分弱火で煮込む。 手順6 別の鍋に2重のカーゼを被せ,煮汁をす。

手順7の画像 手順8の画像
手順7 ブドウ糖を20g加え溶解させる。
手順8 1にて煮沸滅菌したビーカーに煮汁を移し,粉寒天を15g溶解させる(ふた付きビンでもよい)。

手順9の画像 手順10の画像
手順9 ラップでビーカーにふたをし(少し隙間を開ける),電子レンジで煮沸する(突沸に注意)。
  煮沸したらすぐに手順10の作業をする。
手順10 2にて消毒した保管容器内でシャーレ,もしくはふたのできるビンに煮汁を注入する 。
(熱いのでやけどに注意)。

手順11の画像
手順11 冷めたらビニールテープで密閉し,ダニや雑菌が侵入しないようにする。
 常温で5日間何も生えなければ無菌培地が完成する。

(2)有益菌の候補探索
 成長がよい植物の土もしくは根の一部から菌を分離する。


手順1の画像 手順2の画像
手順1 根もしくは土の塊を選抜する。
手順2 菌を培地の中心に置き,菌糸の発生の様子を観察する。

手順3の画像 手順4の画像
手順3 いくつかの菌が,混在している様子を観察する。
手順4 菌叢きんそうの先端を剥離し,新たな培地に移し,他の菌糸や雑菌から分離していく。この作業を3〜5回ほど繰り返すと菌が分離できる。

手順5の画像
手順5 いくつか菌が分離できたら対峙たいじ実験をして菌の特性を観察する。
(3)分離した菌の植物臨床実験
  候補となる菌を分離した後,その特性を植物成長の差で比較検証する。


手順1の画像 手順2の画像
手順1 有益菌の候補を分離した。
手順2 菌糸や胞子をスプーンでき取る。

手順3の画像 手順4の画像
手順3 水に混入し懸濁させる。 手順4 植物の土に懸濁液を散布する。
(4)植物臨床実験の結果
 実験植物は,ニンジンとハツカダイコンを使用した。


ニンジンの結果画像 ハツカ大根の画像
図1 ニンジンの結果

@培養土のみ
A培養土に分離した菌を接種
B滅菌消毒した培養土のみ
C滅菌消毒した培養土に分離した菌を接種

(*滅菌消毒した培養土:分離した菌単独の特性を判断するため特殊装置を使用した)

図2 ハツカダイコンの結果

@培養土のみ
A培養土に分離した菌を接種
B滅菌消毒した培養土のみ
C滅菌消毒した培養土に分離した菌を接種

(*滅菌消毒した培養土:分離した菌単独の特性を判断するため特殊装置を使用した)

3 結果とまとめ
 今回分離した菌について植物臨床実験を試みた結果,菌を接種した土壌(図1及び図2のB)と無接種の土壌(図1及び図2のC)を比較して根の長さも成長量も1.2倍〜1.3倍の成長の差が見られた。
 ただし,今回分離した菌は良い結果の実例だが,実際は多くの失敗が伴う。何度か実践して有益菌を分離していく必要がある。