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コンデンサーは電子回路に必要不可欠な電子部品であるが,高校生にとって理解しづらい学習内容の一つである。ここでは身近な材料を用いて平行平板コンデンサーを作製し,その特性を確かめることでコンデンサーへの理解を深める。なお,実験ではnFのオーダーで電気容量を測定できるデジタルマルチメーター(図1:数千円で購入可能)を用いる。
平行平板コンデンサーの極板間隔をd [m],向かい合う極板の面積(以降,対向面積という)をS [m2],誘電率をε [F/m]とすると,コンデンサーの電気容量C [F]は次式で表される。
コンデンサーの電気容量が対向面積S に比例し,極板間隔d に反比例することを,実験を通して確認する。
表1に示した器具と材料を用意する。
品 名 | 規 格 | 個数 |
アルミ板 | 200mm×300mm 厚さ1mm | 2 |
紙(更紙やコピー用紙等) | 200mm×300mmの大きさにカット 厚さ0.12mm程度 | 1 |
アルミ箔 | 20mm×40mm程度 | 2 |
セロファンテープ | アルミ箔をアルミ板に固定するために使用 | 2 |
リード線 | 両ミノムシ | 2 |
カタログ本 | 数kg程度(おもりとして使用) | 1 |
デジタルマルチメーター(図1) | nFオーダーの電気容量が測定できるもの | 1 |
プラスチック板(※) | 200mm×300mm 厚さ1mm | 1 |
図1 デジタルマルチメーター |
(1) 対向面積S と電気容量C の関係を調べる
ア アルミ板にアルミ箔を取り付ける。(図2)
イ アルミ板,紙,アルミ板の順に重ね,リード線を用いてコンデンサーに取り付けたアルミ箔の端子とデジタルマルチメーターの端子を接続する。(図3)
ウ 上におもり用の本など(カタログ本のように大きくて厚さのあるものがよい)を上に乗せ,アルミ板と紙がずれないよう注意を払いながら,両手で上から5秒ほど押さえつける。手を離し,電気容量の値が安定したら数値を読み取る。(図4)
エ おもり用の本を一旦外し,一番上のアルミ板を2cmずらして対向面積を減少させる。再びおもり用の本を上に乗せ,ウの要領でもう一度測定する。(図5・6)
オ 2cmずつずらしながら測定を繰り返す。図7のように,プラスチック板をアルミ板の隣に置くとアルミ板が安定する。
図2 アルミ箔を取り付ける | 図3 アルミ板と紙を重ねる | 図4 おもり用の本を載せる |
図5 2cmずつずらして測定 | 図6 アルミ板をずらすと対向面積が減少 | 図7 プラスチック板で安定させる |
(2) 極板間隔d と電気容量C の関係を調べる
ア (1)のア〜ウの手順を行う。
イ おもり用の本を一旦外し,アルミ板の間の紙を1枚増やして極板間隔を増加させる。再びおもり用の本を上に乗せ,もう一度測定する。(図8)
ウ 紙を1枚ずつ増やしながら測定を繰り返す。
(1) 対向面積S と電気容量C の関係 | 図9 対向面積と電気容量の関係 |
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実験結果を表2,図9に示す。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
表2 対向面積と電気容量の関係
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(2) 極板間隔d と電気容量C の関係 | 図10 極板間隔と電気容量の関係 |
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実験結果を表3,図10に示す。 | |||||||||||||||||||||||||
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(1) コンデンサーの素材として,アルミ板の代わりにアルミ箔を活用することも考えられる。アルミ板は高価だが,変形が少ないため再現性は高い。
(2) コンデンサーの上に乗せるおもりはとても重要である。上からしっかりと押さえないと,電気容量が半分以下となることもある。
(3) 測定する場所や測定時の湿度等により,電気容量の値は大きな影響を受ける。グラフを作成する場合は,全データを一度に測定する必要がある。
(4) コンデンサーを複数個作製することにより,コンデンサーの並列・直列接続時の電気容量を測定する展開も考えられる。表4に測定結果を示す。
並列時の 電気容量[nF] |
直列時の 電気容量[nF] |
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1個 | 12.25 | 1個 | 12.25 |
2個並列 | 25.45 | 2個直列 | 5.58 |
3個並列 | 39.93 | 3個直列 | 3.878 |
○伊藤新一郎:デジタルマルチメーターを用いた手作りコンデンサーの電気容量の測定
(北海道立教育研究所附属理科教育センター 研究紀要 第22号(2010)p30-31)
http://www.ricen.hokkaido-c.ed.jp/
○小田桐世長:高等学校理科における生徒の実感を伴った理解と思考力を高めるための教材の開発
−身近な素材を使って製作したコンデンサーの活用を通して−
(青森県総合学校教育センター 研究紀要[2011.3] G4−04)
http://www.edu-c.pref.aomori.jp/
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