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新幹線は320km/hを超えると車輪とレールが空回りを始める。そのため、より高速に走るためには、浮上した状態で推進力を得なければならず、リニアモーターが有効となる。浮上方法として空気圧の利用も実用化されてはいるが、高速状態での安定した浮上には、磁力を利用した方法が主流となっている。 | |
ここでは、課題研究としても取り組むことができる、接地式リニアモーターカーの製作を紹介する。 |
推進用コイルに電流を流すことにより、車輌とガイドウェイとの間で、引力または斥力(せきりょく)が生じ、車輌が前進する。車輌またはガイドウェイのコイルの電流の向きを変換させる事により推進が継続される。(図1) |
(図1) |
3 車輌とガイドウェイの製作
(1) | 車輌 |
車輌を軽量化するために、硬質の発泡スチロール(デコレーションパネル)を用いる。車輪は、模型用のタイヤを使用する。案内用に軽い模型用プラスチックタイヤを使用するとよい。(写真1)
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(写真1) | (写真2) |
(2) | ガイドウェイ |
いろいろな大きさと種類のボルトにエナメル線を巻き、3V程度の乾電池を用いて巻き数やボルトの種類を変え、より強い電磁石をつくる。ボルトとナットは磁気を帯びやすくするために、加熱し焼鈍(しょうどん-やきなまし)をしておく。ここで使用したボルトは長さ4.7cmの鉄製のもの。使用したエナメル線は直径0.4mm、1つのコイルに使用する長さは10mとする。
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(写真3) | (写真4) |
(3) |
電磁石に流す電流の向きの切り換え方法
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ア 手動の切り替えスイッチ(MS-251など)を用いる方法 | |
図2のように端子を接続する。スイッチを押すとスイッチ内の太線(点線)が点線(太線)に変わり、入力電圧が逆転され出力される。(写真5) |
(写真5) | (図2) |
イ リレースイッチ(RM2S-Uなど)を用いる方法 | |
アの手動でのスイッチを押す働きを、リレースイッチ内部の電磁石が行う方法である。一定の大きさ以上の電圧がかかると内部電磁石の作用によりスイッチが切り替わり、入力電圧が出力側で逆転する。(写真6) |
(写真6) |
さらに、リレースイッチの切り替えの信号として次の2つの方法が考えられる。 |
(ア)低周波発信器を用いる方法 | ||
リレースイッチの切り替えの信号として低周波発信器を用いる。低周波発信器の信号は発光ダイオードにより整流、トランジスタにより増幅させる。発信器の周波数を調節することで推進が実現する。(図3) | ||
(イ)クリップモーターをスイッチとして用いる方法 | ||
低周波発信器が準備できない場合は(ア)の点線部の回路をクリップモーターを用いた図4の回路で代替できる。コイルに電流が流れると磁界から力を受け動き始める。ある程度傾くと、コイルの一方の軸のエナメル線の表面の半面が削られていないため電流は止まる。コイルは磁界から力を受けなくなるため、元に戻り再び電流が流れ、振り子運動を始める。この振り子運動によりリレースイッチに一定の周期で信号を送ることができる。 (写真7) |
(図3) |
(写真7) | (図4) |
5 おわりに
ここで紹介した電流の向きの変換方法では、常に安定した走行とはならない。前進と後退を繰り返しながら運動する。安定した推進を実現させるためには、センサーなどを組み入れたシステムが必要であろう。 |
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参考文献
『リニア新時代』白澤照雄 阿部和義著 ビジネス社 | |
『リニアモーターカー』窪園豪平著 一橋書店 |
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『スーパートレイン』萩原宏康 小豆沢照男 斎間亨著 電機大出版局 | |
『図解 電気回路のしくみ』稲見辰夫著 日本実業出版社 |
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