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抵抗キットを使った電池の内部抵抗の実験

1 はじめに

 一般に使用されている乾電池は、内部抵抗の影響で、電流が大きいほど起電力と端子電圧の差が大きくなります。この内部抵抗を求めるための実験は、すべり型可変抵抗器を用いたものがさまざまな実験書に載っています。ただ、すべり型可変抵抗器は手軽に買える値段ではありません。そこで、固定抵抗を組み合わせて作った抵抗キット(写真2)を用いた方法を紹介します。
(図1 回路図)

2 内部抵抗の求め方

 図1が、電池の内部抵抗を測定する回路です。r は電池の内部抵抗、E は起電力、I が電池を流れる電流(電流計で測定)、V が電池の端子電圧(電圧計で測定)、R が抵抗キットを表します。このとき、

   V=E−rI

の式が成り立つので、Rの値を変えてV と I を数回測定することで r と E を求めることができます。


(写真1 上;金属被膜抵抗、下;巻線型抵抗)

3 抵抗キットの製作方法

 今回の抵抗キットで使う固定抵抗は、巻線型抵抗を用いました。巻線型抵抗は、金属被膜抵抗より数倍太く(写真1)、金属被膜抵抗は1/4 W か1/2 W であるのに対し、巻線型抵抗は10倍以上の 5 W まで使えます。今回は数百 mA が必要なので、巻線型抵抗を使いました。なお、セメント抵抗というものもあり、これも 5 W まで使えるのでこちらを用いてもよいでしょう。

 キットは、アクリル板にいくつかの巻線型抵抗を接着して作ります。今回は、6個の抵抗( 1,2,3,5,10,50(単位はオーム))を用いました。

ア 板の中央に直径 4 mm くらいの穴を開け、4 cm 程離れたところに放射状に直径 1 mm ぐらいの穴を抵抗の数だけ開けます。

イ 図2のように、抵抗の両端の導線をアクリル板の穴に通して、接着剤で接着します。

ウ 中心にまとまった導線は半分くらいの長さに切って、ハンダを付けて先端を丸くしておきます(以後ターミナルと呼びます)。

エ 放射状に並んだ他端の方は、近くに直径 1 mm ぐらいの穴を開け、導線を曲げてこの穴に通して端子として使えるようにします(図3)。

オ 高さ 2 cm 位の足を付けると、安定します(写真2は木材を切って接着してあります)。

    
(図2) (図3)


 
(写真2)


4 実験での操作方法と得られる結果

ア 真ん中のターミナルにスイッチからの線をつなぎ、放射状にある端子に電流計からの線をつないで(写真3)、この端子をかえて抵抗を変えていきます。

イ 電流計は、抵抗が 2 〜 50 オームのときには 500 mA 、 抵抗が 1 オームのときは 5 A の端子につないでください。ただ、端子をつなぎ変えると実験データの誤差が大きくなるので、 1 オームを単独で用いない方が無難です。

ウ ターミナルを使わず端子と端子の間にすると、4 オームや 6 〜 8 オームの抵抗も作れます(写真4)。

    
(写真3) (写真4)

エ 実際に実験を行い、縦軸に端子電圧 V 、横軸に電流 I をとって得られたデータをグラフ化したものが図4です。

オ データはほぼ直線状に並びますので、近似直線を引きます。この直線の傾きの絶対値が電池の内部抵抗 r 、縦軸との交点が起電力 E となります。図4の場合、r = 0.70 、E = 1.41 となります。

カ 表計算ソフトを用いてグラフを作成すると、近似直線も求められ便利です。



 
(図4 実験例)


※ 実験用のプリント(A4で2枚)をPDFファイルでつけておきましたので参考にしてください。

実験プリントへ

5 授業における活用例

単 元 「物理」における「電気回路」
〔導 入〕  実験を行う前に、電池の内部抵抗について学習する。接続する抵抗の抵抗値を変えて端子電圧を測定すると起電力や内部抵抗が求められることを確認し、実験の原理を学ぶ。
〔展 開〕  実験プリントに従って測定し、端子電圧と電流のグラフを作成して内部抵抗を求める。複数の電池を用いて測定することで理解が深まる。誤差の理由や電池ごとの違いについて考察する。
〔まとめ〕  1.5 Vと書かれた乾電池でも、実際には接続した抵抗や、電池性能の低下により端子電圧は変化することを確認する。


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