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光を吸収する発光ダイオード


 

1 理 論

 p型半導体とn型半導体の接合部で、自由電子とホールが再結合するときのエネルギーを光の形で出すようにしたLEDは、電流のエネルギーを光のエネルギーに変える変換器といえる。変換器には、原理的にエネルギーをどちらの方向へも変換できるものが多く、LEDもその1つである。LEDに光を当てるとp型,n型半導体の接合部で光のエネルギーが電子を価電子帯から伝導帯にたたき上げて、自由電子とホールに分離し、ホールはp型、自由電子はn型を通って外へ流れ出すことで電流が発生する。
 この特色を利用して、原子分野のボーアの理論における原子の発光、吸収をLEDで行う。プリズムを用いて光を分解すれば、一番強く吸収するのが、自分の発光する色と同じであることもわかる。

 

 

2 準備・方法

 (1) LEDとデジタルテスター(内部抵抗≒10MΩ)をつなぎ、「DCV」にあわせる。 
 (2) 直射日光を当てた場合の「電圧」を確認する。
 (3) 直射日光をプリズムで分解し、スペクトルを当てた場合の「電圧」を確認する。

  注:日差しの強さ、光の当てる角度等により数値はずれるので、数値を「測定」するのではなく、数値の違いを「確認」する。

 

 

 ※表中のグラフの横軸は「電圧」を表し、グラフは電圧の大きさのおおよその「違い」を表す。

 

 

 ボーアモデルによれば、原子が特定の光を発光したり、吸収したりするのは原子の中にいくつかのエネルギー準位があって、電子がこれらのエネルギー準位間を移動するたびにΔE=hνの光が出入りするためと説明されている。ナトリウム灯のように物質がガス状のときは光は個々の原子から出入りするだけなので、上述の通りとなる。
 これが半導体のように、固体で多くの原子が並ぶ場合には、それらの原子の持つエネルギー準位がお互いに影響し合って、エネルギー準位がたくさん接近して集まった状態(バンド)になる。しかし、こうなっても本質は同じであり、光を吸収すると電子が低いエネルギーバンドから高いエネルギーバンドに移り、またこれが低いエネルギーバンドに落ちると発光する。単独原子と違うことはエネルギーに幅があるので、吸収・発光する光の波長に幅ができることである。実際にLEDではZn、O、Nなどを不純物として加え、これらのエネルギー準位を利用している。

 

(参考文献)壇上慎二:「啓林 高理編 No326」,啓林館,1998
      石川幸一:「いきいき物理わくわく実験」(P.216),新生出版,1988
      滝川洋二:「科学朝日 Mar.1996」(P.133),朝日新聞社,1996


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