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円形定常波によるボーアの原子模型の説明・実験

1 はじめに

ボーアの原子模型の説明にド・ブロイの理論(電子波)を取り入れ、定常状態(量子条件)と振動条件、および水素原子のスペクトルを説明することができる。しかし、電子の波動性を経験から帰納することは難しく、モデル実験装置もない。そこで、比較的簡単に作ることができ、しかもボーアの原子模型を電子波の考え方で説明できる円形定常波の発生装置を試作し、実験してみた。

2 ボーアの原子模型とド・ブロイの理論

ボーアの原子模型は電子が決められた円軌道上に存在するかぎり、光を放射したり、吸収したりしないで安定であるという定常状態と、電子が別の軌道に移るときはじめて光の放射や吸収を行うという振動条件を仮定している。これらの仮定により水素原子の線スペクトルを説明することができ、水素原子の構造も明らかになった。

ところで、ド・ブロイの理論によれば、粒子である電子にも波動性があり(電子波)電子が円軌道上にそってつくる電子波が安定に存在するためには円周の長さの整数分の1が波長に等しくなければならない。すなわち、上図のように半径rの軌道上にある電子にともなう波長をλとすれば、

2πr/λ=n (n=1,2,…)

この式を満足するときのみ電子は安定に存在することができるとした。

3 円形定常波発生装置の製作

シャイブ式ウエーブマシンは、中心線のねじれを金属捧などを用いて拡大したもので、構造上直線状の定常波しか得ることができない。そこで、ねじれを金属棒で拡大することは同じだが、定常波が円周上に分布するるように改良したのが円形定常波発生装置である。図1にその概略図を示す。

次に円形定常波発生装置の製作方法を示す。

(1) 材料

定常波を示す鉄棒: 直径4o, 長さ35.Ocm, 質量32.1g, 210本

ナット: 4o, 0.75p, 質量1.2g, 210個

鋼鉄線: 直径1.0o, 長さ120p, 2本

ベニヤ板:厚さ約6mm (90x82)(60x60)

(2) 組立

(イ) 図1のように金切りのこぎりで鋼鉄線の入る凹状の溝とナットを取り付けるねじを切る。

(口) 金属棒の凹部に鋼鉄線を通し、これらを等間隔(1.5p)にハンダ付けし、最後に円形にして閉じる。

(ハ) ベニヤ板を直径38.0pと60pに切り、円形スダレを載せる高さ25pの台を作る。

(二) 図2のように円形スダレを支える金具を作る。

(ホ) 図3のように円形スダレを支持台に載せ、各金属棒を鉛直にし黒く塗装する。最後に金属棒頭部に円形白紙をはり付ける。

4 実験と結果

(1)円形定常波による量子条件の説明円周上の相対する金属棒を持って、中心方向に同時に持続的な振動を与えると

2πr/λ=n (n=1,2…)
  …@を満足する1波長ずつ異なる円形定常波を得ることができる。原子内の電子が安定に存在するためには@式を満足しなければならないことを意味している。

 図6はn=4に電子が励起されている場合の円形定常波(電子波)を示す。その他の軌道とエネルギー準位に対応する円形定常波を図4〜7に示す。

(2)円形定常波による振動条件の説明

円周上のある金属棒の下の端に不規則な振動を与えた場合、図7に示したように節点の不明瞭な波を生ずる。このとき光を放出、または吸収して@式を満たす安定な軌道に移らなければならない。

2軌道ともに安定になった円形定常波を図8に示す。

(3) 円形定常波の応用

金属棒の頭部を1個の原子に対応させると、n個の原子を円形に連ねた格子、つまり周期条件のもとで原子が振動している一次元結晶のモデル実験、あるいは閉じた円形管内に生じた音波の定常波のモデル実験もできる。

5 おわりに

シャイブ式ウエーブマシンは、中心線のねじれ振動を金属棒などを用いて拡大したものである。これは構造上直線状の定常波しか得ることができず、ド・ブロイ波についての説明はできない。

ここに試作した円形定常波発生装置は、鋼鉄線のねじれ振動を金属棒で拡大することは同じだが、各種の円形定常波を簡単に得ることができる点で異なっている。

今後は軌道の数を増やしたり、金属棒に振動を与える装置を作るなど改善の余地はある。


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