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1 はじめに
糸の材質・太さ・張力・糸に与える振動数を変化させ、横波の定常波を糸に作る。そこで、定常波ができる条件は、これらの要素にどのように支配されているかを実験で調べる。線密度をρ,糸の張力をT,糸に与える振動数をfとおく。各量を変化させる方法を次に示す。
(1) ρを変化させる方法
糸は木綿糸、絹糸、ナイロン糸など使用する。同じ糸でも太さの異なるものを使用することにより、ρを変えることができる。
(2) Tを変化させる方法
糸に与える張力は、滑車を通して分銅を用いるか、ばねばかりを用いて糸を張り、張力を測定する。
(3) fを変化させる方法
糸に与える振動数を任意に変えられるように、低周波発信器の出力を増幅器で増幅した交流を用いる。振動を与える部分は、この実験専用の電磁石を作ればよいのだが、ここでは、校内放送用のマグネチックスピーカーの振動部を利用する。(下図)
2 実 験1
振動数f、線密度ρを一定に保ちながら、張力Tを変えて定常波を作り、Tと節から節までの長さaとの関係を調べる。実験例(f=190Hz、ρ=0.00067kg/m)
a2とTとの関係をグラフに書くと、図のようになる。これより、aとTの関係は
a2 ∝ T つまり a ∝ √f
3 実 験2
振動数f、張力Tを一定に保ちながら、糸の太さを変え、線密度ρと節間距離aとの関係を調べる。実験例(f=105Hz,T=0.98N)
aとρとの関係をグラフにすると図のようになる。これより、aとρの関係は、
1/a2 ∝ ρ つまり a ∝ 1/√ρ
3 実 験3
張力Tおよび線密度ρを一定に保ちながらfを変えて定常波を作りfとaの関係を調べる。実験例(ρ=0.00067kg/m, T=7.25N)
aとfとの関係をグラフにすると図のようになる。これより、aとfとの関係は
1/a ∝ f つまり a ∝ 1/f
4 実験のまとめ
実験1〜3で得た結果をまとめる。
a ∝ √T a ∝ 1/√ρ a ∝ 1/f
をまとめると、
a = k/f×√(T/ρ) (kは比例定数)
実験1の最初の実験値(ρ=0.00067,f=190,T=0.49,a=0.07)を代入して
比例定数kを決めると k=0.494となる。
a=0.494/f√(T/ρ)
a=λ/2, v=fλ の関係より
v=f×2a =f×2×0.494/f×√(T/ρ)=0.988√(T/ρ)≒ √(T/ρ)
このように、弦を伝わる横波の速さは、線密度ρと張力Tを使い、上式のように表せることが実験で確認された。
5 参考文献
西田宣民;科学の実験1970年3月号(P25〜27)
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