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蜃気楼(しんきろう)を見てみよう

1 目的 

 蜃気楼(しんきろう)とは,空気の密度の違いにより,光が屈折し,物体が本来の位置より浮かんで見える現象である。そこで,水槽の中に,連続的に濃度が異なる砂糖水を作ることによって,蜃気楼が生じる条件を作る。水槽を通して見える景色を観察するとともに,レーザー光線を用いて実際に光が曲がっていることも確認する。

2 準備

[器具] 水槽,ビーカー,かきまぜ棒,砂糖(グラニュー糖),ガスコンロ,チューブ,コーヒー,ガスレーザー発生装置

3 方法

(1)

2Lの水に4kgのグラニュー糖を入れ,かき混ぜながら沸騰させる。初めは,砂糖が溶け切らず濁った状態になるが(写真1),沸騰させ続けると,砂糖が完全に溶けて,透明になる(写真2)。

写真1 写真2

(2)

コーヒーを混ぜた水(レーザー光線が見えるようにするため)を水槽に入れた後,冷ました砂糖水をチューブを使って水槽の下部に静かに入れる(写真3)。最後にゆっくりかき混ぜて,徐々にコーヒーの色が砂糖液の層に混ざりだしたころにかき混ぜるのをやめる。
写真3

(3)

レーザー光線を当て,光が曲がっていることを確認し,水槽を通して見える景色を観察する。

4 結果・考察

(1) 実際の光は曲がって観察者に届くが,観察者は光が直進して届いていると見てしまうので,物体の実際の位置よりも上にあるように見えてしまう。(動画1,図1)


動画1 図1
(2) 見る位置をずらすと,物体の上部と下部から出る光の曲がり方の違いにより,物体がつぶされて見えたり,引き伸ばされて見えることがある。
(動画2,図2)
動画2 図2
(3) 実際にレーザーで光の進み方を確認すると(写真4),密度の高い下の層に進むにつれて曲がっているのが確認できる。
写真4

5 留意点

(1) 砂糖は完全に溶けて透明になるまで沸騰を続けること。もし,溶け残りがあると,冷却するときにそれを核として再結晶してしまう。(結晶が残っていなければ冷却しても砂糖は再結晶せず粘性の高い液体のままになる)
(2) 初めに砂糖水と着色した水の二層にしておいて,ゆっくりとかき混ぜるようにした方が,色の濃淡で混ざり具合が分かりやすく,密度が徐々に変化する連続層を作りやすい。
(3) レーザー光線を用いるときには,生徒が光線が当たる側からのぞき込んでいないかよく確認する。
(4) 蜃気楼(しんきろう)の観察だけを行いたい場合はコーヒー等で着色する必要はなく,その方がはっきりと見えて,かつ見る位置をずらしたときの変化も分かりやすい。

6 指導上の留意点

この実験教材は,高等学校学習指導要領解説(理科編)における
物理T  (2)波 イ 音と光 (ウ)光の伝わり方
という項目において利用できる。



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