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注射器とバネばかりを用いたボイルの法則


1.ねらい
   プラスチック製の注射器に一定量の空気を封じ込め、バネばかりで引くことにより大気圧との差から気体の圧力を求め、ボイルの法則を確認する。簡単な実験装置で済み、結果も良好で、演示用、生徒実験用の両方で使用できる。


2.準備
  50[ml]のプラスチック注射器(最大指標60[ml])
  ・注射器の口に短いゴム管をつけピンチコックで止める。
  ・ピストンの柄の部分に針金を通し、バネばかりに掛けられるようにする。
  8[kgw]程度のバネばかり
  ものさし
  ・シリンダーの内径を測る。
  フック
  ・バネばかりを掛ける10[kgw]程度以上の荷重に耐えられるもの。


3.方法
  フックにバネばかりを釣り下げる。注射器のピストンを縛った針金をバネばかりのかぎにかける。シリンダーを下に引っ張って、引く力(バネばかりの目盛り)と体積(注射器の目盛り)を測定する。
  シリンダーとピストンの間に摩擦力が働くので、一定体積を保つための引く力の最小値と最大値を平均して摩擦力の影響をキャンセルし、この力を引く力の大きさとする。


4.実験
 (1)大気圧の測定
   ア.注射器の中の空気量を最小にしてゴム管をピンチコックではさむ。最大容量まで引いてバネばかりの最大値Fomax、最小値Fominをそれぞれ4回程測定し、それぞれ平均値を求める。この値を更に平均したものをFoとする。
   イ.ものさしでシリンダーの内径(半径r)を測定する。大気圧Poは、Po =Fo /πrで求める。注射器内の空気の最小容量が0.3[cm]程度であるので、これを50[cm]に膨張させれば、大気圧の0.6[%]程度となり、無視してよい。

 (2)気体の圧力の測定
   ア.注射器に20[ml]の空気を封入してピンチコックで止める。シリンダーを引いて、30[ml]にし、この時のバネばかりの最大値Fmax、最小値Fmin を(1)のアと同様に4回程測定し平均し、更にその平均値Fを求める。
   イ.シリンダーを更に引いて、空気の体積を40[m1]、50[m1]、60[m1]にした時のそれぞれのFmax、Fmin 及びF を(2)のアと同様に求める。
   ウ.測定したFを圧力Pに換算する。つまり、P=F/πr
   エ.それぞれの体積の時の気体の圧力pはPoと測定圧力Pとの差である。つまりp=Po-Pを求める。
   オ.ボイルの法則(pv=一定)を検証するために、縦軸に1/pを、横軸に空気の体積vをとったグラフをかく。

5.結果
 (1)大気圧の測定
  Fomax=7.75[kgw] 、Fomin=5.90[kgw] したがって、Fo =(Fomax+Fomin)/2=(7.75+5.90)/2≒6.83[kgw]また、2 r=2.85[cm] ∴r≒ 1.43[cm] 故に、大気圧Po は、Po =Fo /πr ≒1.06[kgw/cm]

 (2)気体の圧力の測定

空気の体積 v[ml] 20 30 40 50 60
引く力   Fmax[kgw] 0 2.93 4.15 4.7 5.03
        Fmin[kgw] 0 l.23 2.45 3.4 3.88
引く力の平均F[kgw] 0 2.08 3.3 4.05 4.45
引く力の圧力P[kgw/cm2] 0 0.324 0.514 0.631 0.693
気体の圧力 p[kgw/cm2] 1.06 0.736 0.546 0.429 0.367
圧力の逆数 1/p 0.943 1.359 1.832 2.331 2.725

 (3)圧力の逆数と体積のグラフ

6.考察
 (1)グラフはきれいに原点を通る直線になり、ボイルの法則(pv=一定)を確認できる。
 (2)シリンダーを引く時の体温の影響は無視できる。
 (3)実験装置の構造が簡単であり、堅固なものであるため、演示用だけでなく、実験机の天板にフックを固定すれば生徒実験にも適している。
 (4)シリンダーとピストンの間に働く摩擦力の処理の方法、力から圧力の求め方、大気圧とシリンダー内の気体の圧力との関係、大気圧の大きさの実感など、データ処理を通してさまざまな学習ができる。

  (参考文献)
  矢野淳滋「普通教室でできる物理の基本実験U」物理教育、第42巻、第2号  (1994)、p247


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