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遠心力がはたらくときの浮力の向き

1 目的 

 慣性力がはたらくときの浮力の向きを間違える生徒が非常に多い。例えば、電車の中で浮かんでいる風船は、電車が加速する向きと逆向きに動くと考えてしまう。そこで、等速円運動を続ける系を利用し、遠心力が常に外側に向かってはたらき続ける場合、その中で浮かんでいる物体がどのように動くかを観察することによって、慣性力がはたらくときの浮力の向きを理解する。

2 準備

[器具] 電動回転台、直流安定化電源装置、ビーカー、スーパーボール、おもり(石)、両面テープ、ひも、エポキシ樹脂系・化学反応式接着剤
[薬品] アルギン酸ナトリウム水溶液(重量パーセント濃度2%)

3 方法

(1)

スーパーボールに小さな穴をあけ、ひもをさし込み、接着剤で固定する(写真1)。ひもの他端をおもりに結び付ける(写真2)。なお、ひもの向きが張力の向きを示すので、ひもはできるだけ目立つものがよい(今回は蛍光色のものを用いた)。

写真1 写真2

(2)

ビーカーに粘性の高い液体(今回はアルギン酸ナトリウム水溶液を使用)を入れる。このビーカーに(1)のスーパーボールを入れ、水面近くに浮かぶようにひもの長さを調節する。最後に、電動回転台の中心から15cmのところにこのビーカーを両面テープで固定する(写真3)。
写真3

(3)

電動回転台に直流安定化電源装置を接続し、徐々に回転数を上げ、スーパーボールとひもの動きを観察する。

4 結果・考察

 ビーカーから見た系で考えると、下図のように、スーパーボールには重力が鉛直下向き、遠心力が水平外向き、張力が重力と遠心力の合力と同じ向きに、そして浮力が重力と遠心力の合力と逆向きにはたらいて、つり合っている。このとき、浮力は押しのけた液体の重さに対応する。慣性力がはたらく系では、通常の重力と慣性力の合力がみかけの重力となり、浮力はみかけの重力と逆向きにはたらく。スーパーボールはこの浮力を受け、内側へ移動する。
 このとき、水面は内側に向かって傾いている。このことからもこの系の鉛直方向が外向きに傾いていることが分かる。
   アルギン酸ナトリウム水溶液は粘性の高い液体で、回転数を変えている際に、スーパーボールが振り子の運動をすることなく、ゆっくりとつり合いの位置に移動させる役割をもつ。

5 留意点

(1) 回転数は徐々に上げるようにする。急激に変化させると、スーパーボールが安定するのに時間がかかるだけでなく、ビーカー内の液体がこぼれやすくなる。
(2) アルギン酸ナトリウム水溶液を作る際、濃度に注意する。濃度を上げすぎると固まってしまう。
(3) ビーカー内の液体は水を用いてもよいが、安定するのに時間がかかる。
(4) 電動回転台がない場合は、回転式のテレビ台等を利用して、手動で行ってもよい。

6 指導上の留意点

 この実験教材は,高等学校学習指導要領解説(理科編)における
物理  (1)様々な運動 ウ 円運動と単振動 (ア)円運動
という項目において利用できる。


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