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1 はじめに
運動量保存の法則を簡単に演示できる実験の一つとして、振り子付き台車の運動を示す。意外性のある動きが生徒の興味を引き、運動量の保存を直感的に理解することができる。
2 準備
・バルサ材(発砲スチロール板などでもよい)
・釣り用おもり(台車の質量と同じくらいのもの)
・キャスター4個
・釣り糸
・木工用ボンドなど
3 作り方
おもりは質量は台車全体と同じくらいのものを使う。
試作した装置は厚さ15mmのバルサ材を使った図のようなもので台車とおもりの質量は約300gくらいである。
完成した振子付き台車の様子
4 実験方法
(1) 振り子を傾けた後、
振り子と台車を
両方同時に放す。
→はじめの運動量0が
保存するので、
振り子と台車はほぼ
初めの位置を中心に、
台車とおもりは
お互いに反対方向
に振動する。
(2) 振り子を先に放し、
振り子が最下点に来た
瞬間に台車を放す。
→振り子が最下点に
来たときの運動量が
保存するので、
台車は振動しながら
おもりの初めの速度
の方向に進む。
(3) 先に2通りの実験を見せて、何が違うか考えさせると良い。
5 授業における活用例
単 元 「物理」における「運動量の保存」 〔導 入〕 運動量保存則を適用できる現象として、物体の衝突や分裂が取り上げられることが多いが、他にも運動量保存則が成り立つ事例があることを紹介する。その一例として振り子付き台車を提示し、振り子の動きに合わせて台車がどのように動くかを予想した後、実験に取り組む。 〔展 開〕 4で観察した現象について、おもりと台車の速度を求めることで考察を深める。
4(1)の場合について
@おもりが最下点を右向きに通過するとき、Aおもりが右端にくるときのおもりと台車の速度を求める。系の力学的エネルギーが保存することと、手を離した瞬間の運動量が0であり、それが保存することを用いて考える。
4(2)の場合について
(1)と同様に上記@、Aを求める。Aについては、おもりが右端に来た瞬間、おもりが台車に対して静止することに着目し、運動量保存則を用いて考える。〔まとめ〕 台車は複雑な動きを見せるが、おもりと台車の重心に着目すれば単純な運動であることに気付かせる。(1)の場合、系の重心は水平方向には静止しており、(2)の場合、重心は水平方向には等速で運動している。 6 参考文献
山下一郎、増渕哲夫、藤原博伸、田原輝夫(1998):楽しく深く実験しよう・・・ 定番実験のひと工夫(力学・波動) 全国理科教育大会論文集(20)、56−59
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